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第10話
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「あいつ意外とケチだからさ」
「そんなことより今日は家に来れるか?」
「じゃあこれ買ってくれたらいいよ」
「しょうがねえな」
店の中だというのに、じゃれ合いながら貴族の令嬢とは思えない品位に欠ける会話をするアリスと男。店員の顔も大きくゆがんで頬のあたりの筋肉まで引きつる。
男に合わせているのか?それともこれがアリスの本来の姿なのか?その時はテリーには分からなかった。とにかく頭の中の整理が追いつかない。アリスが平気な顔で自分の悪口を言ってるのもショックだった。
無遠慮に耳元に入り込んでくる二人の話を聞いて、さらに惨めな気持ちになる。恋愛の駆け引き上手なアリスと男に、テリーは手のひらで踊らされているようで悲しみのどん底に立ちすくむのです。
「ありがとう」
「おう」
アリスにおねだりされた物を男は渋々という感じの顔でお買い上げして、逆にアリスは満足感を得て頬が緩んでいるのが、遠くにいるテリーの目にも分かるほどだった。
二人は用事が済んだらしく、テリーのほうに向かって歩いてきたので、素早く物影に走りこんで身をひそめた。何とも情けないが、テリーにできたことはただアリスから逃げ隠れることだけだった。
アリスは男の腕に自分の腕を絡ませて甘えていた。二人は強い絆で結ばれた恋人同士だと一目見ただけで分かるように、互いに身を預けながら歩いて店を出ていく。この後アリスは男の部屋に行くのだろう。
「アリスどうしてなんだ……?なんであんな目に見えて粗野で教養が無い男と……本当に絵に描いたような下品な男じゃないか……あの男のどこが好きなんだよ……」
非常に仲睦まじげに寄り添い合って歩く二人の後ろ姿を、口をポカンと開け息をのんで棒立ちになって眺める。しばらくテリーはその場にしゃがみ込んで静かに泣いていた。
ようやく我を取り戻したテリーは、二人のことがどうしようもなく気になり店の外に飛び出す。だがとっくに二人の姿は見えない。
今となっては遅いが、もう少し早く行動していれば二人の後を追いかけられたかもしれないと思い、テリーは言いようのない悔し涙が湧いて仕方がなかった。
「僕達も愛を深めるためにペアアクセサリーを買いに行こうか?」
「ほんと?」
「でもフローラには内緒だよ」
「うん」
この前アリスと会った時に、交わした会話の断片を思い出した。アリスは嬉しそうに愛嬌のいい声で微笑み、その時に彼女から愛情が伝わってきたのをテリーは感じる。
婚約しているフローラと別れて、アリスと結婚しようと本気で考えていた。それなのに、テリーは自分がアリスに振られたような事実を受け止められなくて、精神が完膚なきまでに崩壊した。
「そんなことより今日は家に来れるか?」
「じゃあこれ買ってくれたらいいよ」
「しょうがねえな」
店の中だというのに、じゃれ合いながら貴族の令嬢とは思えない品位に欠ける会話をするアリスと男。店員の顔も大きくゆがんで頬のあたりの筋肉まで引きつる。
男に合わせているのか?それともこれがアリスの本来の姿なのか?その時はテリーには分からなかった。とにかく頭の中の整理が追いつかない。アリスが平気な顔で自分の悪口を言ってるのもショックだった。
無遠慮に耳元に入り込んでくる二人の話を聞いて、さらに惨めな気持ちになる。恋愛の駆け引き上手なアリスと男に、テリーは手のひらで踊らされているようで悲しみのどん底に立ちすくむのです。
「ありがとう」
「おう」
アリスにおねだりされた物を男は渋々という感じの顔でお買い上げして、逆にアリスは満足感を得て頬が緩んでいるのが、遠くにいるテリーの目にも分かるほどだった。
二人は用事が済んだらしく、テリーのほうに向かって歩いてきたので、素早く物影に走りこんで身をひそめた。何とも情けないが、テリーにできたことはただアリスから逃げ隠れることだけだった。
アリスは男の腕に自分の腕を絡ませて甘えていた。二人は強い絆で結ばれた恋人同士だと一目見ただけで分かるように、互いに身を預けながら歩いて店を出ていく。この後アリスは男の部屋に行くのだろう。
「アリスどうしてなんだ……?なんであんな目に見えて粗野で教養が無い男と……本当に絵に描いたような下品な男じゃないか……あの男のどこが好きなんだよ……」
非常に仲睦まじげに寄り添い合って歩く二人の後ろ姿を、口をポカンと開け息をのんで棒立ちになって眺める。しばらくテリーはその場にしゃがみ込んで静かに泣いていた。
ようやく我を取り戻したテリーは、二人のことがどうしようもなく気になり店の外に飛び出す。だがとっくに二人の姿は見えない。
今となっては遅いが、もう少し早く行動していれば二人の後を追いかけられたかもしれないと思い、テリーは言いようのない悔し涙が湧いて仕方がなかった。
「僕達も愛を深めるためにペアアクセサリーを買いに行こうか?」
「ほんと?」
「でもフローラには内緒だよ」
「うん」
この前アリスと会った時に、交わした会話の断片を思い出した。アリスは嬉しそうに愛嬌のいい声で微笑み、その時に彼女から愛情が伝わってきたのをテリーは感じる。
婚約しているフローラと別れて、アリスと結婚しようと本気で考えていた。それなのに、テリーは自分がアリスに振られたような事実を受け止められなくて、精神が完膚なきまでに崩壊した。
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