婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

第33話

「アリスと会いたい……」

医者からようやく退院の許可が下りて、十日ぶりに自宅へ戻ったテリーは窓の外をぼんやりと眺めて、駆け落ちした妻の名を頼りなくつぶやいた。やはりまだ心に大きな問題があると思われる。

落ち込んでいる父の支えになってあげたい。そう思うまだ幼い三人の子供たち全員は、いちばん奥のテリーの部屋へ行った。

「私たちがパパを元気にしてあげよう！」

幸いなことに、母アリスの家出をあまり気にしていない様子である。母の存在は大きいので普通なら大泣きしていることだろう。

だがアリスは子供の面倒をメイドに任せきりで、たまに遊ぶくらいで余り気にかけなかった。メイドからの愛情に育まれ、王宮の中ですくすく成長した子供たちは思いやりがある性格であった。

「アリス早く戻ってきてくれ……」

希望を失ったうつろな目に、げっそりとした顔で泣き言を口にする。テリーの中でアリスは自分の全てと言えるほど掛けがえのない存在でした。

しかし実際にはアリスの気持ちをよく分かっていないのだ。何故ならばテリーはアリスが四人目の子供を妊娠してることにすら気づいていないのである。

「パパ退院おめでとう！！」

けなげな心でテリーの部屋のドアを開けた長女は、弟と妹の頭をなでて気遣いながら不安そうに声をかけた。無事に退院したものの部屋にずっと引きこもっている父が心配で仕方なかった。

子供たちはテリーが自分たちの父であると思っている。明らかにテリーに似ていない顔だが、まだ小さい子供たちは判断基準などありはしない。

家にいる男が自分たちの父であると自然に思うことは当たり前で、母のアリスも世話をしてくれるメイドも皆がテリーのことを、あなたたちの父だと言うので疑いはないのだ。

「……ああ、心配かけて悪かったね。もう大丈夫だよ」

あまりにも無邪気そうな笑顔を見せながら近づいてくる子供たちに、テリーは冷たい態度を取れるような性格ではありません。

全員がアリスと駆け落ちした浮気相手の子供ですが、無類のお人好しで道徳的な感情が強いテリーは、包容力のある微笑みで子供を迎える。

「パパ！」
「もっと元気になって一緒に遊んで！」

父から一段と穏やかな声を聞いた子供たちは、気持ちが楽になって嬉しさではしゃいで飛び回り、ベッドに横たわっていたテリーに飛びつくような勢いで甘えるのだった。