婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

第47話

「私の本当のパパは昨日来て泣きながら謝っていた変な顔のおじさんでしょ？」

テリーが黙っていると長女は目を見つめて言葉を続けた。長女は昨日にアリスの不倫相手の男とその妻が直接訪問し、謝罪していたのをこっそり部屋を抜け出し隠れて見ていた。

日ごろから身のまわりの世話をしてくれるメイドたちからは、これから客が来てパパとママは大事な話しをすると聞かされた。客が帰るまでは部屋にいなさいと言われていたが、心に引っかかるところがあった頭の良い長女は、事前に準備して話し合いの部屋に息をひそめて待ち構えていたのだ。

「……ごめん……」

テリーは長女の行動力に驚きに打たれつつ、何かをふと思い出して沈んだ顔色で謝罪の言葉を口にした。

「どうしてパパが謝るの？」

長女は不思議そうな顔をして首をかしげながら聞いた。

「全部見てたんだよね？」
「うん」
「だったらパパが怒って本当のパパの顔を全力で蹴ってしまった事も……」
「でもあの変な顔のおじさんが悪いんでしょ？」

年齢の割にしっかりしている長女は、話し合いを聞いて事情をよく理解しており土下座して謝罪していた男が悪い事をしたので、いつも誰にでも優しいテリーが珍しく荒々しい言動をして、男に対して暴行を加えてもしょうがないという認識だった。

「ママも本当は悪いんだよね？」

やはり長女は驚くほどの速度で知識を頭の中に吸収している。あの場では最初から最後までテリーは、見ているだけで胸の高鳴りを覚えるほど愛しているアリスのことを擁護ようごする立場を取っていた。その事に長女は奇妙な違和感が心の中で膨れあがる。

長期にわたってテリーを裏切っていたママもあの変な顔の男と同罪じゃないの？というのだ。自分の顔があの変な男にそっくりなので、あの男の子供だとわかっている。それも弟も妹も全員がそうだ……だって一人もパパと似てないもの。

「ママは悪くないんだ。あの男に悪い魔法をかけられてママはずっと騙されていたんだよ」

不倫相手の子供を4人も喜んで産んでいるアリスに言い訳はできない。子供の面倒も全てメイドに任せて愛情を注ぐこともないアリスは、誰に聞いても最低な母だと即答するだろう。

長女の言う通りなのだが、テリーはアリスを庇ってしまった。アリスは人としても母としても失格な救いようのない人間です。子供のほうも冷たい母の事は好きではないと話し合っていた。ですが問題だらけの性格のアリスをテリーは愛しているので、何がなんでも守り抜くことを誓っている。

「パパがママを愛してることはわかっているから、もう何も言わないけど、私はパパが好きだからあの変なおじさん何か正直どうでもいいの」
「え……？でもあれが本当のパパなんだよ？」
「あんな変な顔のパパは嫌い。いなくてもいい！」

非常に聡明な長女は、テリーがアリスを寵愛しているのも毎日見てわかっているので、ママを厚く保護する気持ちは理解できると話す。

さらに長女は幼いながら、自分でも知らないうちにテリーに熱烈な恋をしていた。男との遊びに夢中になり冷たい態度の母に比べて、父は穏やかな笑顔を向けていつも自分たちに優しく話しかけて愛してくれる。長女は美しい顔のテリーが好きになって、本当の父であるアリスの不倫相手の男はどうでもいいと口にした。