婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

佐藤 美奈

文字の大きさ
48 / 56

第48話

しおりを挟む
「アリス大事な話があるんだ」
「テリーどうしたの?」
「……上の子に全部知られたよ」

長女に告白された翌日の夕方ごろ、テリーは怖いくらい真剣な顔でアリスと向き合っていた。アリスは珍しく真面目な感じのテリーにも動揺することなく平然とした声で聞いた。テリーは誠実な表情でしばらくアリスを見つめて心の中だけでため息をついて話し始めた。

「何が?」
「僕たちの子供がみんなあの男の子供だって……」
「当然よね。あいつに顔そっくりだからね」
「うん」

アリスは何かあったの?という感じで聞き返すとテリーから答えが返ってきた。子供の顔は父親のテリーと全く似てないので分かるよね?っていう風にアリスは言った。テリーは小さくうなずいて何か考えるように目を閉じる。

「まあ、子供たちが大きくなったらどうせみんな分かるしいいんじゃない?」
「そうだね」

テリーは長女に知られてしまった事を打ち明けるとアリスは何か問題でも?みたいな顔で都合の悪い事情は何もないという感じで言う。子供が成長すれば疑問を抱くようになるのは間違いない。

なにしろ金髪で品のある美しい顔のテリーとほんの少しも似た部分がない。それなら母親のアリスに似ているかと言えば似ていない。アリスは色が白く純粋そうな大きな瞳とよく通った鼻筋で、人形のように可愛らしい顔をしている。

非常に残念で悲しいことに子供たちの顔は、両親の輝かしい容姿を誰一人として受け継いでいない。目も鼻も口も顔の輪郭も髪の色もアリスの不倫相手の超ブ男に、そっくりそのままに忠実に再現している顔なのだ。

「おほほほ、テリーと血の繋がった子供は一人もいないけど、みんな私が産んだ子供だから問題ないと思う」
「うん、そうだよね。愛しているアリスの子供だから何も問題ないよね」
「そうでしょ?うふふふふふ」

アリスは悪びれずに軽やかに笑ってから口を開く。厚かましい態度で全然平気だと言う。テリーは少し顔を上げてアリスと視線を合わせて、何か自分なりに納得したようで顔がぱっと明るい笑顔に変わった。テリーは妻のアリスを好きなので、子供全員が不倫相手にそっくりな不器量な顔でも問題ないと答えた。

テリーのアリスに対する深い愛情がかろうじて、その痛みに耐えさせてくれた。アリスはテリーの明るい笑顔に救われたような気がした。アリスはちょっとだけ悪いと思ったので自分の良心をごまかすように笑っていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約者と養い親に不要といわれたので、幼馴染の側近と国を出ます

衿乃 光希
恋愛
卒業パーティーの最中、婚約者から突然婚約破棄を告げられたシェリーヌ。 婚約者の心を留めておけないような娘はいらないと、養父からも不要と言われる。 シェリーヌは16年過ごした国を出る。 生まれた時からの側近アランと一緒に・・・。 第18回恋愛小説大賞エントリーしましたので、第2部を執筆中です。 第2部祖国から手紙が届き、養父の体調がすぐれないことを知らされる。迷いながらも一時戻ってきたシェリーヌ。見舞った翌日、養父は天に召された。葬儀後、貴族の死去が相次いでいるという不穏な噂を耳にする。恋愛小説大賞は51位で終了しました。皆さま、投票ありがとうございました。

【完結】精神的に弱い幼馴染を優先する婚約者を捨てたら、彼の兄と結婚することになりました

当麻リコ
恋愛
侯爵令嬢アメリアの婚約者であるミュスカーは、幼馴染みであるリリィばかりを優先する。 リリィは繊細だから僕が支えてあげないといけないのだと、誇らしそうに。 結婚を間近に控え、アメリアは不安だった。 指輪選びや衣装決めにはじまり、結婚に関する大事な話し合いの全てにおいて、ミュスカーはリリィの呼び出しに応じて行ってしまう。 そんな彼を見続けて、とうとうアメリアは彼との結婚生活を諦めた。 けれど正式に婚約の解消を求めてミュスカーの父親に相談すると、少し時間をくれと言って保留にされてしまう。 仕方なく保留を承知した一ヵ月後、国外視察で家を空けていたミュスカーの兄、アーロンが帰ってきてアメリアにこう告げた。 「必ず幸せにすると約束する。どうか俺と結婚して欲しい」 ずっと好きで、けれど他に好きな女性がいるからと諦めていたアーロンからの告白に、アメリアは戸惑いながらも頷くことしか出来なかった。

【完結】貴方の後悔など、聞きたくありません。

なか
恋愛
学園に特待生として入学したリディアであったが、平民である彼女は貴族家の者には目障りだった。 追い出すようなイジメを受けていた彼女を救ってくれたのはグレアルフという伯爵家の青年。 優しく、明るいグレアルフは屈託のない笑顔でリディアと接する。 誰にも明かさずに会う内に恋仲となった二人であったが、 リディアは知ってしまう、グレアルフの本性を……。 全てを知り、死を考えた彼女であったが、 とある出会いにより自分の価値を知った時、再び立ち上がる事を選択する。 後悔の言葉など全て無視する決意と共に、生きていく。

我慢しないことにした結果

宝月 蓮
恋愛
メアリー、ワイアット、クレアは幼馴染。いつも三人で過ごすことが多い。しかしクレアがわがままを言うせいで、いつもメアリーは我慢を強いられていた。更に、メアリーはワイアットに好意を寄せていたが色々なことが重なりワイアットはわがままなクレアと婚約することになってしまう。失意の中、欲望に忠実なクレアの更なるわがままで追い詰められていくメアリー。そんなメアリーを救ったのは、兄達の友人であるアレクサンダー。アレクサンダーはメアリーに、もう我慢しなくて良い、思いの全てを吐き出してごらんと優しく包み込んでくれた。メアリーはそんなアレクサンダーに惹かれていく。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。

婚約破棄、ありがとうございます

奈井
恋愛
小さい頃に婚約して10年がたち私たちはお互い16歳。来年、結婚する為の準備が着々と進む中、婚約破棄を言い渡されました。でも、私は安堵しております。嘘を突き通すのは辛いから。傷物になってしまったので、誰も寄って来ない事をこれ幸いに一生1人で、幼い恋心と一緒に過ごしてまいります。

幼なじみと再会したあなたは、私を忘れてしまった。

クロユキ
恋愛
街の学校に通うルナは同じ同級生のルシアンと交際をしていた。同じクラスでもあり席も隣だったのもあってルシアンから交際を申し込まれた。 そんなある日クラスに転校生が入って来た。 幼い頃一緒に遊んだルシアンを知っている女子だった…その日からルナとルシアンの距離が離れ始めた。 誤字脱字がありますが、読んでもらえたら嬉しいです。 更新不定期です。 よろしくお願いします。

本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます

結城芙由奈@コミカライズ3巻7/30発売
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います <子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。> 両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。 ※ 本編完結済。他視点での話、継続中。 ※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています ※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...