婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

第51話

「アリスごめん……僕が間違っていた」

アリスの悲しい響きがテリーの心に伝わった。テリーはどこか思い詰めたような顔で、慰めるようにアリスの左手をそっと握った。

アリスだって可愛い子供を産みたかったと正直な告白をした。そんな事はわかりきっている結論じゃないか。容姿が優れていることは幸せな人生を掴み取れるチャンスの回数が増える特別優待券で神様からのサービスなのだ。親だって自分の子供をブサイクに産んで生き地獄の人生にしたくない。

でも娘のマリーは運の悪いことに、アリスの不倫相手のブサイクな男の低品質な劣等遺伝子を受け継いでしまった。マリーは人生を投げ出してしまうかもしれない。今も心の中ではずっと悩んでいるだろう。切なく寂しそうな顔をしているマリーを見ながら、テリーは自分の命と引き替えでもマリーを助けたいと思っていた。

「テリー、私のほうこそ怒ってごめんなさい。私も不安だったの」
「なにが？」
「子供達の将来が……心配」

アリスはちょっと反省した様子でテリーに向かって優しく微笑んだ。これほど美醜に敏感な人間の支配する世の中で、ブサイクがどれほど生きにくい立場に追いこまれているのか。アリスはブサイクな子供たちが無邪気にはしゃいでる姿をみると、やるせない気持ちになって将来の心配をしていた。

人間にとって顔以外は価値がほとんどない顔が全てという事を意外と理解してない人は多い。ブサイクな人は自分の人生がつまらないと思うことが高い確率で何度もある。ブサイクは劣等感で何も楽しめないのだ。貧乏で美しい顔の人間とお金持ちのブサイクなら、間違いなく貧乏で美しい顔のほうが人間として価値がある。

「子供たちが結婚できるかも……本当に不安」
「大丈夫だよ」
「無責任なこと言わないで！」

アリスの不安は尽きない。テリーの言葉に無責任だと噛みつくように怒鳴りつけた。自分の子供がブサイクな場合は、お前は勉強を頑張れと親に言われる事も多いだろう。これで全てにおいて答えが出てる。ブサイクは顔が劣っているから他のことで頑張るしかないと親は分かっているのだ。

金品や財産を多く持っている大富豪でもブサイクだと絶対に悲しい。どれだけ努力をしても整形してもブサイクな遺伝子は変わらない。辛くて悲しいけどブサイクは美しい顔には勝てない。どうあがいてもブサイクは美しい顔を越えられない。その真実を誰よりもアリスは強く理解している女性でした。

「――アリス、それなら僕の子供を作らないか？」
「それだけは絶対に駄目！」

今は家族で食事中だがテリーは不意に言い出す。アリスと話をしながら頭の中でずっと考えていた。アリスは不機嫌な声で頭ごなしに否定する。テリーは驚きの目で晴天の霹靂へきれきという表情をしてアリスに返された言葉が信じられなかった。