婚約したのに好きな人ができたと告白された「君の妹で僕の子を妊娠してる」彼に衝撃の罰が下される。

第53話

「子供たちよ」
「なんで？」
「まだ分からないの？」
「僕には全然わからないよ」

アリスはテリーとの子作りを拒否する理由を口にした。子供たちがかわいそうだと言うのだ。一体どういうことなのだろうか？

テリーは美しい顔が間抜け面に変わってポカンとしている。まだアリスの言っていることが理解できていないらしい。アリスは呆れたような顔をして頭の悪いテリーにもう少し詳しく説明しようとする。

「まずあの男の種で誕生した子供たちだからみんな超ブサイクなのは分かってるわよね？」
「うん」
「逆に私とテリーの子供はたぶん超絶美形になると思う」
「まあそうだよね」

テリーはアリスの言うことにうんうんとうなずいて聞いていた。アリスの不倫相手の商人の男は正直に言って醜いルックスをしている。子供たちには申し訳ないけど全員が田舎くさい顔です。

それに比べてテリーの種で生まれた子供は誰もが認める端正なルックスになると言う。テリーもアリスも生まれつき洗練された美しい容姿をしているのだ。二人の子供なら可愛い顔の赤ん坊が高い確率で誕生するだろう。

「だからあいつの遺伝子から生まれたブサイクな子供たちが私とテリーの美しい子供に一方的に強い劣等感を抱くことになるわけよ」

アリスの思いはほとんど確信に近いものといってよかった。子供たちの中で一人だけバランスの正しい上品な美顔がいたら、ブサイクな子供たちは気後れして萎縮いしゅくする可能性もある。

そのくらいなら問題ないかもしれないけど、ブサイクな子供たちが成長して自分の顔に不満を抱きもどかしさに心が憤って美しい顔の子供をいじめるようになるかもしれない。アリスはそのことを一番心配して恐れていた。

「え……？そんな事ないと思うけど？」
「なるに決まってるでしょ！」
「ちょっとアリスそんなに怒らないでくれよ」

アリスの意見にテリーは否定するようなことを口にするが、アリスは噛みついてくるような勢いで真っ向から反論する。テリーはただ驚き戸惑うしかなくアリスに対して興奮を抑えてくれと言う。

「あいつの顔でブサイクで悩んでるマリーのこと忘れたの？」
「あ！」

テリーはアリスの言葉で思い出してはっとして目を見開いた。長女のマリーはアリスの不倫相手の子供なので残念な顔をしている。テリーはそのことをマリーに相談されていた。マリーが自分の顔で毎日悩み続けていることは紛れもなく事実だったからである。

その時マリーはテーブルに顔を伏せて泣き出した。忘れてはいけないのは今は家族で食事をしている最中だということ。普通なら笑い声と喜びにあふれたひと時なのに明らかに不穏な空気に包まれていた。