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第5話
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後日、その日アリス令嬢は馬車に乗っていました。
今日は学園が休みで親友とお茶をする約束をしていて向かう途中。
カフェのテラス席でアリス公爵令嬢、グレース伯爵令嬢、シャーロット子爵令嬢、マチルダ男爵令嬢と明るい調子で世間話をしていました。
何かの話が思いがけなく色々の方へ移って、みんなが同じ程度に喋り笑顔でうなずき合っています。
目が嬉しくてたまらないというように親友達が華やかに談笑を交わしている。全員にんまりとして顔をほころばせていました。
その時です。
「待ちやがれーーーーーー!!! 止まれーーーーーーー!!!!!」
怒りもあらわに強力に大きな声が聞こえました。4人は外でお茶していたので大変よく耳に音が届く。
口調から誰かを追いかけているのは理解できます。
「え!?」
「なにかしら?」
「どうしたのでしょう?」
「びっくりいたしましたわ」
天使のように美しく愛らしい顔立ちの4人の令嬢は声を上げました。気落ちしたときに突然肩を叩かれたように驚きます。
何しろ楽しくお喋りしてたら予告もなしに雷のような激しい怒り声が聞こえたのですから。美人令嬢の見合わす顔も土気色です。
「キャーーーーーーーーーーー!!!」
「いやーーーーーーーー!!」
「うそーーーーーありえない!」
「なにあれ!?」
次に4人の令嬢は悲鳴を上げました。絶望的に高らかな叫び声で小鳥が鳴く声にも聞こえ空気が張り裂けるようにも聞こえる。
悲鳴を上げた理由は裸で追いかけられている男性が目の中に入ったからです。その男性をこちらは服を着た男性が追いかけています。
「昼間からお下品ですね」
「殿方は何を考えているのかしら?」
「まあ、お恥ずかしいですわ。頭がおかしいのね」
「どうせ浮気相手の彼氏さんに追いかけられているのでしょう」
次の瞬間には令嬢達も周囲の環境に慣れ落ち着いて普通に会話をしています。
追いかけられていた体に何も身につけていない男性は足を取られて滑って地面に転がりました。
「逃げるな!」
「すまん許してくれ!」
「許すわけないだろう!」
「君の彼女とは遊びだったんだ! もう別れるから……」
「ふざけんじゃねえ!」
裸の男性は土下座して謝っている。会話の自然な流れからゆっくりと知っていくと、どうやら浮気相手のボーイフレンドに追いかけられていたようです。
二人は令嬢達のかなり近くで意見を戦わせているので会話はよく聞こえました。
数分後、土下座していた男性が立ち上がって二人は歩き出す。
そして令嬢達の前を通りかかった時に生まれたままの姿の男性が何かに気づいたように頭の中で火花がはじける。
「アリスじゃないか!」
「近づかないでください! 見ないで! この変態!」
「アリス僕だ!」
「私にはあなたのような品位に欠ける知り合いはいません!」
「アリス! 僕の顔をよく見てくれ! 僕だよ!」
アリス令嬢は目の前で自分の名前を呼ぶみっともなく恥ずかしい男性の顔をじっと見つめる。
「ロベルトなの!?」
なんと裸で追いかけられていたのは婚約者のロベルト殿下だったのです。
そして追いかけていた男性はアリス令嬢の妹エマ令嬢の恋人で婚約者のノア伯爵令息でした。
アリス令嬢は心が突き飛ばされたような気持ちになり意識を失いそうになりました。
今日は学園が休みで親友とお茶をする約束をしていて向かう途中。
カフェのテラス席でアリス公爵令嬢、グレース伯爵令嬢、シャーロット子爵令嬢、マチルダ男爵令嬢と明るい調子で世間話をしていました。
何かの話が思いがけなく色々の方へ移って、みんなが同じ程度に喋り笑顔でうなずき合っています。
目が嬉しくてたまらないというように親友達が華やかに談笑を交わしている。全員にんまりとして顔をほころばせていました。
その時です。
「待ちやがれーーーーーー!!! 止まれーーーーーーー!!!!!」
怒りもあらわに強力に大きな声が聞こえました。4人は外でお茶していたので大変よく耳に音が届く。
口調から誰かを追いかけているのは理解できます。
「え!?」
「なにかしら?」
「どうしたのでしょう?」
「びっくりいたしましたわ」
天使のように美しく愛らしい顔立ちの4人の令嬢は声を上げました。気落ちしたときに突然肩を叩かれたように驚きます。
何しろ楽しくお喋りしてたら予告もなしに雷のような激しい怒り声が聞こえたのですから。美人令嬢の見合わす顔も土気色です。
「キャーーーーーーーーーーー!!!」
「いやーーーーーーーー!!」
「うそーーーーーありえない!」
「なにあれ!?」
次に4人の令嬢は悲鳴を上げました。絶望的に高らかな叫び声で小鳥が鳴く声にも聞こえ空気が張り裂けるようにも聞こえる。
悲鳴を上げた理由は裸で追いかけられている男性が目の中に入ったからです。その男性をこちらは服を着た男性が追いかけています。
「昼間からお下品ですね」
「殿方は何を考えているのかしら?」
「まあ、お恥ずかしいですわ。頭がおかしいのね」
「どうせ浮気相手の彼氏さんに追いかけられているのでしょう」
次の瞬間には令嬢達も周囲の環境に慣れ落ち着いて普通に会話をしています。
追いかけられていた体に何も身につけていない男性は足を取られて滑って地面に転がりました。
「逃げるな!」
「すまん許してくれ!」
「許すわけないだろう!」
「君の彼女とは遊びだったんだ! もう別れるから……」
「ふざけんじゃねえ!」
裸の男性は土下座して謝っている。会話の自然な流れからゆっくりと知っていくと、どうやら浮気相手のボーイフレンドに追いかけられていたようです。
二人は令嬢達のかなり近くで意見を戦わせているので会話はよく聞こえました。
数分後、土下座していた男性が立ち上がって二人は歩き出す。
そして令嬢達の前を通りかかった時に生まれたままの姿の男性が何かに気づいたように頭の中で火花がはじける。
「アリスじゃないか!」
「近づかないでください! 見ないで! この変態!」
「アリス僕だ!」
「私にはあなたのような品位に欠ける知り合いはいません!」
「アリス! 僕の顔をよく見てくれ! 僕だよ!」
アリス令嬢は目の前で自分の名前を呼ぶみっともなく恥ずかしい男性の顔をじっと見つめる。
「ロベルトなの!?」
なんと裸で追いかけられていたのは婚約者のロベルト殿下だったのです。
そして追いかけていた男性はアリス令嬢の妹エマ令嬢の恋人で婚約者のノア伯爵令息でした。
アリス令嬢は心が突き飛ばされたような気持ちになり意識を失いそうになりました。
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