婚約者の王太子殿下は浮気性「私の妹や親友を口説くのはやめて!」もう妊娠させたの?泣いて土下座しても許しませんよ

佐藤 美奈

文字の大きさ
6 / 8

第6話

しおりを挟む
「ロベルト説明してくれる!」

呆れるのを通り越して頭の中の温度が瞬時に上昇したアリス令嬢はやるせない悲しみを訴える。

「違うんだアリス。何でもないんだよ」
「じゃあなんでそんな姿をしてるの?」

アリス令嬢はもう理解している。何故ならつい先ほど二人の後味の悪い口論が耳の底に残っているのです。

そんな訳でロベルト殿下が救いようのないくらいの愚かで哀れみを越えたお話にならないポンコツな男性だと知ってしまいました。

それでもアリス令嬢は答えが返ってくる見込みのない問いを投げかける。

紳士の風上にもおけない情けない人間だと言うことは既に分かっています。

ですが、かつて愛した恋人が素直に自らの罪を認めて心の内を包み隠さず明かしてくれることを信じて尋ねました。

「アリス今まで言ってなかったけど僕は感動に心が湧くと嬉しくなって裸で走り回る癖があるんだ」
「え……?」

最後まで苦しげな弁解をして目の前にいるかわいい顔をひどく沈ませて放心状態にするほどの返答でした。

この人いきなり何を言い出すの? と頭が混乱しアリス令嬢は深い失望を感じる。

ロベルト殿下は我ながらうまい言い訳が口をついて出たとでも思っているのでしょうか? ドヤ顔で誇らしげな雰囲気を漂わせます。

「お前はそんな状態でまだ言い訳するつもりか!」
「ひ、ひぃっ!」
「殴られないと分からないのか!」
「ご、ごめんなさい……許して……」

ノア令息が怒りと苛立ちを含んだ声で威嚇するように言い放つ。

その瞬間ロベルト殿下は怯えた声を出して謝りその場にへたり込む。しょんぼりと頭をうなだれて子犬のように震えました。

荒っぽい言葉遣いで感情をむき出しにしていますが、妹のエマ令嬢の恋人で婚約者のノア令息は普段は温厚でアリス令嬢も何度か話したことがある。

いつも笑顔でゆったりとした優しい性格という印象でその微笑みが記憶に定着しているほどです。

それが今は鬼のような形相で血走った燃えるような瞳でロベルト殿下を睨みつけていました。

憔悴した美少年は愛する恋人にすがりつくような哀れの滲み出た視線を送り続けて助けを求めています。

しかしアリス令嬢は突き放したような表情で本気で見捨てるつもりの冷たく厳しい目をロベルト殿下に向けているのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘からこうして婚約破棄は成された

桜梅花 空木
恋愛
自分だったらこうするなぁと。

幼馴染み同士で婚約した私達は、何があっても結婚すると思っていた。

喜楽直人
恋愛
領地が隣の田舎貴族同士で爵位も釣り合うからと親が決めた婚約者レオン。 学園を卒業したら幼馴染みでもある彼と結婚するのだとローラは素直に受け入れていた。 しかし、ふたりで王都の学園に通うようになったある日、『王都に居られるのは学生の間だけだ。その間だけでも、お互い自由に、世界を広げておくべきだと思う』と距離を置かれてしまう。 挙句、学園内のパーティの席で、彼の隣にはローラではない令嬢が立ち、エスコートをする始末。 パーティの度に次々とエスコートする令嬢を替え、浮名を流すようになっていく婚約者に、ローラはひとり胸を痛める。 そうしてついに恐れていた事態が起きた。 レオンは、いつも同じ令嬢を連れて歩くようになったのだ。

人生の全てを捨てた王太子妃

八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。 傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。 だけど本当は・・・ 受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。 ※※※幸せな話とは言い難いです※※※ タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。 ※本編六話+番外編六話の全十二話。 ※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。

天然と言えば何でも許されると思っていませんか

今川幸乃
恋愛
ソフィアの婚約者、アルバートはクラスの天然女子セラフィナのことばかり気にしている。 アルバートはいつも転んだセラフィナを助けたり宿題を忘れたら見せてあげたりとセラフィナのために行動していた。 ソフィアがそれとなくやめて欲しいと言っても、「困っているクラスメイトを助けるのは当然だ」と言って聞かず、挙句「そんなことを言うなんてがっかりだ」などと言い出す。 あまり言い過ぎると自分が悪女のようになってしまうと思ったソフィアはずっともやもやを抱えていたが、同じくクラスメイトのマクシミリアンという男子が相談に乗ってくれる。 そんな時、ソフィアはたまたまセラフィナの天然が擬態であることを発見してしまい、マクシミリアンとともにそれを指摘するが……

貴方の事なんて大嫌い!

柊 月
恋愛
ティリアーナには想い人がいる。 しかし彼が彼女に向けた言葉は残酷だった。 これは不器用で素直じゃない2人の物語。

婚約破棄は先手を取ってあげますわ

浜柔
恋愛
パーティ会場に愛人を連れて来るなんて、婚約者のわたくしは婚約破棄するしかありませんわ。 ※6話で完結として、その後はエクストラストーリーとなります。  更新は飛び飛びになります。

貧乏令嬢はお断りらしいので、豪商の愛人とよろしくやってください

今川幸乃
恋愛
貧乏令嬢のリッタ・アストリーにはバート・オレットという婚約者がいた。 しかしある日突然、バートは「こんな貧乏な家は我慢できない!」と一方的に婚約破棄を宣言する。 その裏には彼の領内の豪商シーモア商会と、そこの娘レベッカの姿があった。 どうやら彼はすでにレベッカと出来ていたと悟ったリッタは婚約破棄を受け入れる。 そしてバートはレベッカの言うがままに、彼女が「絶対儲かる」という先物投資に家財をつぎ込むが…… 一方のリッタはひょんなことから幼いころの知り合いであったクリフトンと再会する。 当時はただの子供だと思っていたクリフトンは実は大貴族の跡取りだった。

悪意には悪意で

12時のトキノカネ
恋愛
私の不幸はあの女の所為?今まで穏やかだった日常。それを壊す自称ヒロイン女。そしてそのいかれた女に悪役令嬢に指定されたミリ。ありがちな悪役令嬢ものです。 私を悪意を持って貶めようとするならば、私もあなたに同じ悪意を向けましょう。 ぶち切れ気味の公爵令嬢の一幕です。

処理中です...