婚約者を親友に寝取られた王太子殿下〜洗脳された婚約者は浮気相手の子供を妊娠したので一緒に育てようと言ってきたので捨てました

佐藤 美奈

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第11話

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オリバー殿下は呆れ果てた表情でため息を漏らして言う。

「僕はアイラには腕を噛まれて殺されそうになったんだが?」
「先日、私達も娘と話をいたしました。ですが今は反省しているようですから…」
「アイラは普通なら処刑になっているようなことをした」
「それは王太子殿下のおっしゃる通りです」
「それなのにまだ生かしていることに感謝してもらいたい」
「…深く感謝しております」
「お父様はアイラを即刻処刑すると申された」
「なんですと!」
「それを僕がアイラはジョージに洗脳されていた被害者だからと処刑をやめるように必死に要求したんだ」
「それについても王太子殿下には感謝の言葉もございません」
「お父様はアイラの親族を全員断絶してもいいとも言っていたな」
「それだけはご勘弁を!」
「アイラとはたまに話をしているがまだジョージの精神支配が解けていない」
「そんなまさか……信じられない!」
「それならアイラにジョージに異議を唱えるようなことを言ってやればすぐに本性を現す」

アイラの両親はまだジョージの洗脳が解けていないことに驚いていた。

だがオリバー殿下の本題はアイラの妊娠についてだ。

「知っていると思うがアイラはジョージの子供を妊娠していると言っているんだ」
「王太子殿下のおっしゃることは全てごもっともです。ですがまだあの男の子供と決まったわけでは……」
「そうですよね!」

ここまで黙っていたアイラの母親が初めて口を開く。

その言葉には、娘のお腹の子供がオリバー殿下の子供であるかもしれない期待が込められていた。

だが次の瞬間その望みが完全に絶たれる。

「恥ずかしいけど…言わせてもらうが僕はまだ未経験の童貞なんだ!」
「と言うことは……?」
「アイラと体の関係は一切まだない!」
「そんなまさか…ありえない……」

アイラの両親は動揺を隠せない。

オリバー殿下がまだ女性と経験がない童貞というのもだが、ずっと以前に娘とは体の関係があると思い込んでいた。

「なんだ? 僕が童貞だとおかしいのか?」
「滅相もございません!」
「正直に申してみろ!」
「王太子殿下は純粋で清らかな体だったのですね……」
「私も夫と同じ思いです。娘は王太子殿下にとても大切にされていたのですね…」
「まあいいだろう…アイラは泣きながら僕に言っていた。ジョージの子供を一緒に育てようと…親としてどう思う?」

アイラの両親は感慨深く顔を見合わせて父親がおもむろに発言した。

「娘は狂っているとしか思えませんな……」

オリバー殿下は改めて婚約の解消を告げると、アイラの両親は肩を落としながらも承諾して土下座し憔悴しきって退出する。

その後アイラは両親の度重なる説得にも応じず子供を産みたいと主張したが、結局アイラは薬で眠らされ強制的に妊娠中絶されることになる。

目覚めてからのアイラは発狂して手がつけられない状態になり、最後には溺愛されていた両親からも見捨てられてしまう。

いくら月日が流れてもジョージに支配されたアイラの洗脳は解けることはなく、その後はアイラと面会する人は誰もいなかった。

アイラが三十路みそじになった時、牢屋の中で孤独にあの世に旅立つ――

最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
この物語を、皆さまと共有できたことが何よりの幸せです。
またどこかの物語でお会いできますように。
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