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第14話

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「ハリーは無神経の分からず屋よ!」
「イリスのほうこそ何も分かってないじゃないか!」

イリスとハリーは意見が衝突したりして、声を張りあげ口喧嘩を始めてしまった。エレナは二人のありえない姿をただ黙って見守っている。

どうしましょう?という風な困り果てた善人そのものの顔をしていますが、内心では悪魔的な薄ら笑いをしていた。

小さな可愛らしい顔のエレナの性格は、確かにちょっと歪んでいるかも?と自分でも自覚していますがそれほど悪いとは思っていなかった。

「あんまり意識してなかったけど、ハリーってこんなに察しの悪い男だったの?」

手に負えない夫婦関係のもつれをじっと見つめながら、エレナはぶつぶつと口を動かして小さくつぶやく。その声は、双方の大声であっという間にかき消されてしまったのである。

軽い興奮状態の二人は、いつまでも堂々巡りの議論が止まらない。エレナはいつでも仲裁役に徹する姿勢はありますが、いつ二人の揉めごとに巻き込まれるのか不安で、まさに薄氷を踏む思いでした。

この喧嘩の原因は新婚旅行についてきた自分だと、エレナも分かっているので火の粉が飛んでくる恐怖で、冷静に考えている心のゆとりがなかった。

「まずイリスはエレナと一緒に明日は温泉巡りしてくればいい」
「なに言ってるの?ふざけないで!」
「イリスも温泉に入るのを楽しみにしていたじゃないか?」

ハリーは明らかに道理に合わないことを主張しているが、神経が高ぶりすぎているイリスは普段のような落ち着きを失って、おとなしく引き下がる気分にはなれない。

この街は温泉観光地として有名で知られている。確かにイリスが美肌効果の高い天然温泉に入るのを楽しみにしていたことは事実だが、二人で仲良くエレナと温泉に浸かる必要は全くありません。

「ハリーも十分反省しております。イリス様どうか許していただけませんか?」

エレナはハリーと違って、要領よく物事を処理する抜け目のない野心家であったので、自分の言葉がお節介であることは承知している。

なんて物分かりの悪い男なんだ?という気持ちであった。正直なところエレナは口を挟みたくなかったが、このまま黙ってハリーに任せていても解決するのは難しいだろう。

ハリーを助けるために、やむを得ずエレナはイリスに激しく叱責されるのを覚悟して、腫れ物に触るように気を遣いながら意見を述べるということにした。

「私たち夫婦の問題なんです!それに元はと言えばあなたがきっかけでしょ!」

余計な口出しをされたと感じたイリスは、もの凄い勢いで怒鳴りつけてしまう。その声には辛らつな皮肉がこもっていた。
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