「私も新婚旅行に一緒に行きたい」彼を溺愛する幼馴染がお願いしてきた。彼は喜ぶが二人は喧嘩になり別れを選択する。

第13話

「寂しい思いをさせてイリス悪かったね」

ハリーは痛々しい感じのする表情で、イリスに申し訳ない気持ちが沸いて非礼を詫びる言葉を正直に口にした。テーブルを囲みイリス、ハリー、エレナの三者面談において各々の立場は非常に微妙である。

座る位置は隣同士にハリーとエレナで、イリスはその正面から向き合う形になる。普通は夫婦のイリスとハリーが隣り合わせて座るべきでは？とイリスは疑問に感じたのだが口には出さなかった。

「それはハリーなんの謝罪ですか？」

重苦しい雰囲気が漂っている。イリスはその言葉を問いただす必要があると考えて口を切った。

「イリスを一人部屋に残して、僕がエレナと遊びに行ってしまったことだよ」
「少しは反省したみたいだけどそれだけ？」

ハリーはゆっくりと、自分の胸に浮んだ考えを追うように語ったところで、顔をしかめたイリスは深い精神的反応をあらわに見せて苦々しい口ぶりで返した。

多少は罪悪感を抱いているようですが、イリスが望んでいる返答ではなかった。理由はそれだけじゃないでしょう？最も重要な部分はエレナを新婚旅行に連れてきたことなのだ。

そこを分かっていないとイリスも満足できるはずもなく、謝罪を受け入れられないのです。

「イリスの気持ちは分かってるよ」
「本当に？」

君の気持ちはよく理解していると言う、ハリーの熱意のこもった口調でしゃべる声に、呆れつつも内心ひそかに喜ぶ。

いまごろやっと気がついたのかと、頭のおかしいにも程があるというものだが、イリスはほんのわずかな微笑を浮かべた。


「僕との結婚生活にイリスは不安を感じて悩んでるんだろう？」
「ん……？」

この男は急に何を言い出すんだ？ハリーの口から飛び出した思いがけない見解に、しばらく無言で目を合わせ続けて何事か考えていましたが、ハリーは親切そうな微笑で何度も頷いている。

「そうですね。私はこれからのハリーとの結婚生活にとても不安があります」

不意に思いつめた顔をして、それに乗っかる形でイリスは話を進めることにする。結婚して二人で新たな人生を歩み始めることに、自身の心の問題でハリーとの共同生活に悩む日々を伝えたのだった。

「どんな時でもイリスのことを守るってプロポーズの時に約束したよね？」
「ですが……」
「僕が支えるから心配することは何にもないよ。イリスが一番大事なんだ！」
「…………」

自信ありげな態度で、強い口調になってハリーは語り続けた。だが深刻な表情を崩さないイリスに、両手をついて前方に身を乗り出して熱心に説得する。

よくしゃべる男だなぁと思い、イリスは唖然として固く口を閉ざしていた。