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第28話

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「息子よ、イリス嬢が困っておるから少し落ち着くのだ」

ハリーはエレナの罪が帳消しになった喜びで、イリスの手を取って浮かれ騒いでいる。やや疲れ気味のイリスの顔を見かねて国王が口出しをした。

イリスはほっと小さく安心のため息をついた。国王が注意を促してくれなかったら、ハリーはいつまでも我を忘れたまま子供みたいに無邪気にはしゃいでいただろう。

「イリスごめん、つい嬉しくて我慢できなかった」
「別に気にしていません」

ハリーは父の声で気がついてイリスをじっと見る。何となく迷惑そうな顔をしているのを確認して、肩身が狭い思いをしながら素直に謝るとイリスは素っ気ない態度でそう言った。

「エレナ嬢は確かに無罪になった。それと引き換えに二人は平民に落とすことで決着をつけた」
「は?」

国王は改めてエレナの無罪を宣言する。だが、次に発した一言でハリーは思わず調子はずれな声を出した。自分とエレナが平民になる?そう聞こえたハリーは奈落の底へつき落とされたような気持ちだった。

「家が潰れるよりはましだとエレナ嬢の親も納得していた。むしろイリス嬢に感謝していたくらいだ」
「そ、そんな……信じられない……」

エレナの両親はすぐさま同意した。最初に呼び出されて話を聞いた時は、自分たちは間違いなく助からないという気分になっていた。

何しろ公爵令嬢と王子の新婚旅行に娘のエレナが一緒について行って、そのことが離婚の主な原因を作り出したと言われたのです。

「新婚旅行について行った?エレナどうしてそんなことをしたんだ。失礼にも程がある」
「ハネムーン先について行くなんてあり得ない。あの子は何を考えているのかしら……?」

泣き出しそうに切実な声で、両親は娘の非常識な行動に驚いて悲しみにくれる。先祖代々受け継がれてきた子爵家も終わりだろうと、現当主であるエレナの父は力が抜けて床に崩れていく。

爵位を剥奪された上で全財産を没収されることになる。それだけでなく処刑もあり得ると膝が細かく震えた。よくて命が尽きるまで幽閉される終身刑だろう。

当主は真っ青な顔色で廃人寸前まで追い込まれて、悲惨な姿に変わり果てている。隣にいる夫人もほとんど気絶するような感じで倒れてしまった。

「あの、少しよろしいですか?」

エレナの両親のひどい状態を見ると、イリスは胸が痛ましく感じて非常に心苦しい。複雑な気持ちで頭を悩ませて、いつもの美しい唇を歪めて渋い顔している。

その時、頭の中を整理したイリスが冴えた表情で澄んだ声を響かせたのである。イリスは何も悪くないエレナの両親が何だか可哀想に思えて、考えが変わって同情的な姿勢を見せるのだった。
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