16 / 30
第16話
しおりを挟む
Sランクパーティーの彼らは、レベッカの言う通り100倍の能力が本当に付与されているのか?試してみたいと言い出して、メンバー各自が得意とする魔法やスキルを繰り広げている。
レベッカから身体能力の強化と同時に、魔法の効果アップなど色々な能力を付与したと伝えられると彼らはさらに驚いていた。
「凄い!私がこんなに速く動けるなんて……」
アメリアはシーフの上位の職種のアサシンであった。視力の良さと動きの素早さではメンバーで一番である。そんな彼女は今、自分の素早さに驚いていた。瞬間移動能力を持っていると言われても、誰も疑わないほどの超人的なスピードで移動している。
「魔法の威力もスゲエ……いつもと桁違いだ……」
リアムは魔法戦士で特に攻撃魔法には定評があり、彼が普段通りに火魔法を放つと、すさまじい破壊力をひめた魔法に腰を抜かして大口を開けて驚き震えていた。
「心臓の痛みが消えてる……!?」
思わず驚きにあふれた声をもらしたのは、回復職の最上位のセイントであるマリンだった。彼女がそのような声を出すのは当然の事でした。何故かと言うとマリンは生まれつき心臓の持病を抱えていて、小さい頃は発作も頻繁にあり苦しんでいた。
大人になってからは薬を飲めば病気が和らいで普通に生活できましたが、それでもどこか胸の中に息苦しさが残っているような感じで、その病気は回復職のマリンにも治せないほどの極めて根深いものであった。
特に意識せずにマリンは自分の胸に手を当てて回復魔法を唱えてみた。すると完全に心臓の痛みがなくなったのだ。彼女は鳥肌が立つくらい嬉しく自然に湧き出てくる歓喜の涙が止まらなくて、しばらく身体を震わせて泣きつづける。
「ま、まさか斬れるとは思わなかった……レベッカの付与でこれほど俺の剣技がパワーアップしているのか……!?」
レオンの職種はグラディエーターという上位職で、高い接近戦能力を備えている。彼は剣闘士として試合に出場したこともあり、無敵を誇った王者を倒して近接攻撃のマスターの勲章を授与されたほどの一刀流の達人の剣士。
少し移動していつも訓練用として使用している見事な大木の前に立って、レオンは愛刀の柄を握って黒い大剣を振り下ろした。次の瞬間、大木が真っ二つに裂けてしまった。
とんでもない幹の太さの立派な大木には、これまでほんの少し傷をつけるだけがやっとであった。レオンは半ば放心状態のまま、自分が作った大きな切り株の上に座って、うつろな目でぼーっと斬った大木をしばらく見つめていた。
「――レベッカ凄いよ!」
「能力が100倍なのかはわからないけど、間違いなくいつもの数十倍は強くなってると思う」
「レベッカみたいな次元が違う付与術師がうちに入ってくれるなんて本当にありがたい。ジョージには悪いけどレベッカがうちの正式なメンバーだ!!」
自分の力を試し終えたメンバーが集まって、それぞれ活発に同様の言葉を口にした。レベッカの付与術師としての腕を手放しで大絶賛している。声は今までにない弾んだ調子がこもって、明るく爽やかな笑顔を見せた。
「でも……レベッカの幼馴染の子たちは君がいなくなって困ってるんじゃないかな?」
ふと脳裏を掠めたレオンが心配そうな顔をして、いかにも気の毒そうな口ぶりで言うのだった。
レベッカから身体能力の強化と同時に、魔法の効果アップなど色々な能力を付与したと伝えられると彼らはさらに驚いていた。
「凄い!私がこんなに速く動けるなんて……」
アメリアはシーフの上位の職種のアサシンであった。視力の良さと動きの素早さではメンバーで一番である。そんな彼女は今、自分の素早さに驚いていた。瞬間移動能力を持っていると言われても、誰も疑わないほどの超人的なスピードで移動している。
「魔法の威力もスゲエ……いつもと桁違いだ……」
リアムは魔法戦士で特に攻撃魔法には定評があり、彼が普段通りに火魔法を放つと、すさまじい破壊力をひめた魔法に腰を抜かして大口を開けて驚き震えていた。
「心臓の痛みが消えてる……!?」
思わず驚きにあふれた声をもらしたのは、回復職の最上位のセイントであるマリンだった。彼女がそのような声を出すのは当然の事でした。何故かと言うとマリンは生まれつき心臓の持病を抱えていて、小さい頃は発作も頻繁にあり苦しんでいた。
大人になってからは薬を飲めば病気が和らいで普通に生活できましたが、それでもどこか胸の中に息苦しさが残っているような感じで、その病気は回復職のマリンにも治せないほどの極めて根深いものであった。
特に意識せずにマリンは自分の胸に手を当てて回復魔法を唱えてみた。すると完全に心臓の痛みがなくなったのだ。彼女は鳥肌が立つくらい嬉しく自然に湧き出てくる歓喜の涙が止まらなくて、しばらく身体を震わせて泣きつづける。
「ま、まさか斬れるとは思わなかった……レベッカの付与でこれほど俺の剣技がパワーアップしているのか……!?」
レオンの職種はグラディエーターという上位職で、高い接近戦能力を備えている。彼は剣闘士として試合に出場したこともあり、無敵を誇った王者を倒して近接攻撃のマスターの勲章を授与されたほどの一刀流の達人の剣士。
少し移動していつも訓練用として使用している見事な大木の前に立って、レオンは愛刀の柄を握って黒い大剣を振り下ろした。次の瞬間、大木が真っ二つに裂けてしまった。
とんでもない幹の太さの立派な大木には、これまでほんの少し傷をつけるだけがやっとであった。レオンは半ば放心状態のまま、自分が作った大きな切り株の上に座って、うつろな目でぼーっと斬った大木をしばらく見つめていた。
「――レベッカ凄いよ!」
「能力が100倍なのかはわからないけど、間違いなくいつもの数十倍は強くなってると思う」
「レベッカみたいな次元が違う付与術師がうちに入ってくれるなんて本当にありがたい。ジョージには悪いけどレベッカがうちの正式なメンバーだ!!」
自分の力を試し終えたメンバーが集まって、それぞれ活発に同様の言葉を口にした。レベッカの付与術師としての腕を手放しで大絶賛している。声は今までにない弾んだ調子がこもって、明るく爽やかな笑顔を見せた。
「でも……レベッカの幼馴染の子たちは君がいなくなって困ってるんじゃないかな?」
ふと脳裏を掠めたレオンが心配そうな顔をして、いかにも気の毒そうな口ぶりで言うのだった。
17
あなたにおすすめの小説
【完結】婚約者と仕事を失いましたが、すべて隣国でバージョンアップするようです。
鋼雅 暁
ファンタジー
聖女として働いていたアリサ。ある日突然、王子から婚約破棄を告げられる。
さらに、偽聖女と決めつけられる始末。
しかし、これ幸いと王都を出たアリサは辺境の地でのんびり暮らすことに。しかしアリサは自覚のない「魔力の塊」であったらしく、それに気付かずアリサを放り出した王国は傾き、アリサの魔力に気付いた隣国は皇太子を派遣し……捨てる国あれば拾う国あり!?
他サイトにも重複掲載中です。
追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて
だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。
敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。
決して追放に備えていた訳では無いのよ?
クゥクーの娘
章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。
愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。
しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。
フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。
そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。
何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。
本編全24話、予約投稿済み。
『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
妹のことが好き過ぎて婚約破棄をしたいそうですが、後悔しても知りませんよ?
カミツドリ
ファンタジー
侯爵令嬢のフリージアは婚約者である第四王子殿下のボルドーに、彼女の妹のことが好きになったという理由で婚約破棄をされてしまう。
フリージアは逆らうことが出来ずに受け入れる以外に、選択肢はなかった。ただし最後に、「後悔しないでくださいね?」という言葉だけを残して去って行く……。
(完結)初恋の勇者が選んだのは聖女の……でした
青空一夏
ファンタジー
私はアイラ、ジャスミン子爵家の長女だ。私には可愛らしい妹リリーがおり、リリーは両親やお兄様から溺愛されていた。私はこの国の基準では不器量で女性らしくなく恥ずべき存在だと思われていた。
この国の女性美の基準は小柄で華奢で編み物と刺繍が得意であること。風が吹けば飛ぶような儚げな風情の容姿が好まれ家庭的であることが大事だった。
私は読書と剣術、魔法が大好き。刺繍やレース編みなんて大嫌いだった。
そんな私は恋なんてしないと思っていたけれど一目惚れ。その男の子も私に気があると思っていた私は大人になってから自分の手柄を彼に譲る……そして彼は勇者になるのだが……
勇者と聖女と魔物が出てくるファンタジー。ざまぁ要素あり。姉妹格差。ゆるふわ設定ご都合主義。中世ヨーロッパ風異世界。
ラブファンタジーのつもり……です。最後はヒロインが幸せになり、ヒロインを裏切った者は不幸になるという安心設定。因果応報の世界。
金喰い虫ですって!? 婚約破棄&追放された用済み聖女は、実は妖精の愛し子でした ~田舎に帰って妖精さんたちと幸せに暮らします~
アトハ
ファンタジー
「貴様はもう用済みだ。『聖女』などという迷信に踊らされて大損だった。どこへでも行くが良い」
突然の宣告で、国外追放。国のため、必死で毎日祈りを捧げたのに、その仕打ちはあんまりでではありませんか!
魔法技術が進んだ今、妖精への祈りという不確かな力を行使する聖女は国にとっての『金喰い虫』とのことですが。
「これから大災厄が来るのにね~」
「ばかな国だね~。自ら聖女様を手放そうなんて~」
妖精の声が聞こえる私は、知っています。
この国には、間もなく前代未聞の災厄が訪れるということを。
もう国のことなんて知りません。
追放したのはそっちです!
故郷に戻ってゆっくりさせてもらいますからね!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる