幼馴染の勇者パーティーから「無能で役立たず」と言われて追放された女性は特別な能力を持っている世界最強。

佐藤 美奈

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第29話 幼馴染の勇者パーティー視点8

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色々な店を経営する裕福な商人の家に泊まり始めて数日後、勇者パーティーは冒険者の仕事もせずに、その日も朝からギャンブル場に足を運んでいた。助けたお礼にもらったお金があるのでふところは温かくなっている。

まあ当然と言えば当然のことですが、ギャンブルで大負けして体中から力が抜けたような思いで、廃人同様の悲惨な顔で視線を落としてとぼとぼ歩いていた。お礼として受け取った結構な金額が泡のごとく消えていきました。

「また負けてしまった……」
「全財産を使い切ったね……」
「ちくしょう!」
「私たちは病気だよね?」
「そうだね」

ギャンブルをすると何も残らない。お金があるうちに、ギャンブルをしないで何か買おうといつも思っているのですが、やはり少しでもお金があるとギャンブル場に行ってしまう。

頭ではギャンブルは駄目だと理解しているのですが、ギャンブルという強い誘惑に惹かれている彼らは脳がギャンブルの快感を覚えているので止められないのです。

「僕たちはいつまでギャンブルを続けるんだろう……」
「たぶん死ぬまでかな?」
「本当に私たちって情けないね……」
「あれだけの金があれば、たらふく美味いものが食えたのにな」
「ほんとそうだよね」

実際の所、アルスはギャンブルを卒業したい気持ちはある。いや、アルスだけじゃなく全員がそう思っている。でも毎度そう思う時は、ギャンブルに負けてしまってお金がない時なのだ。お金が無くなってからギャンブルしなければ良かったと、激しく後悔する気持ちが胸に押し寄せてくる。

「私欲しい物があったのに……」
「僕だって新しい装備を新調したかったよ」

これが勇者パーティーという何とも情けない。ギャンブルに溺れてしまって、重症度が病的でまともな人間に戻る希望を失っているただのギャンブル中毒者集団です。

だが、こんな大バカ者たちにもを差し伸べてくれる男がいる。偶然的な出来事で、強盗目的で襲われている男を助けた。その人物は世界でも有数の大富豪でした。本来なら自分たちが襲撃しようと男を狙っていたのに、よからぬ事には運が強い奴らである。

勇者パーティーはギャンブルで負けてすっからかんで、現在世話になっている大豪邸に帰ってきた。男と知り合うまでは水だけで過ごさなければいけなかったのに、お金が無くても美味しいご飯が食べられて彼らは本当に幸せ者であった。

「夕食会をするって聞いたね」
「そう言えば、朝そんな事言ってたような……」

この日は何故だか少し騒がしかった。そう言えばと勇者パーティーの何人かが思い出す。この家の使用人から今日は招待客を呼んで夕食会を行うと言っていたような気がした。彼らの頭はギャンブルの事でいっぱいなので、すっかり記憶から抜け落ちていた。

夕食会は和やかに始まりました。勇者パーティーたちは少なくとも申し分ないので、招待された多くの著名人と談笑し爽やかな笑顔を返していた。

「元気がないようですけど、どうしましたか?」

その時、寂しそうに暗い影を落としている女性が目に入った。性欲旺盛おうせいなアルスは鼻の下を伸ばしていたが、話しかける時は真面目な顔に作り直して声をかけた。
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