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第7話
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セバスからの手紙には、義家族の嘲笑の声が聞こえてきそうなほど、生々しい言葉が綴られていた。
「あの女がいなくなって、毎日が祝宴よ! なあ、ドレイク、お前もそう思うだろう? せいせいしたとな!」
「本当よ! これで思う存分、この公爵邸の財産も使いたい放題! フローラのケチケチ根性にはうんざりしてたもの!」
「フローラの部屋の家具、全部捨ててやったわ! だって、見るだけであの女の不幸そうな顔が浮かんで、気分が悪くなるんですもの!」
「ドレイク様、フローラさんのことなど、もう過去の埃ですわ。これからは、私と、そしてこの素晴らしいご家族と、新しい歴史を紡いでいきましょう」
「ああ…フローラのことか。うん、まあ、彼女には彼女の人生があるだろう。僕にはもう、関係ないことさ」
義父のアガレス、義母のナタリア、義妹のセシリア、幼馴染で愛人のミレイユ、そして夫のドレイク自身の言葉。甘い毒のように公爵邸に蔓延する悪意。フローラの心をじわじわと蝕み深い苦しみを与えた。
夜、一人ベッドの中でフローラは唇を噛みしめた。涙はもう出なかった。代わりに、心の奥底から燃えるような何かがこみ上げてくるのを感じていた。
(ドレイク…関係ないですって? よくもそんな! ドレイクの罠にはめられた……ええ、そうよ。でも、このまま泣き寝入りする私ではないわ。あなたたちが私から奪ったもの、そして私にしたことの全て、きっちりと清算させていただく。あなたたちが、せいせいしたと言うのなら、私もせいせいするわ。過去の甘かった自分に……。そして、あなたたちのような寄生虫を、公爵家から一掃するために、私は悪魔にだってなってやる!)
ショックと怒りが、奇妙な冷静さへと変わっていく。フローラは、ゆっくりと深呼吸をした。
「見ていなさい、ドレイク。そして、あなたの愚かな家族と、その愛人さん。あなたたちが築き上げた偽りの楽園は、この私、フローラ・フォン・フランヴェルが、木っ端微塵に打ち砕いてあげるわ!」
彼女の頭の中では、彼らが最も大切にしているもの――虚栄心、強欲、そして安逸な生活――を根こそぎ奪い取り、社会的な抹殺すら視野に入れた壮絶な応報の計画だった。
別邸での孤独な日々の中、セバスからもたらされる公爵邸の惨状は、フローラの心をさらに黒檀のように硬く冷たくさせていた。
あの美しかった我が家は、今や品性のかけらもない略奪者たちの巣窟と成り果て、夫だったはずの男は、見知らぬ女と戯れながらその様をせせら笑っている。フローラは絶望と怒りが、マグマのように心の奥底で煮えたぎっていた。
(もう、一人で抱えきれない……)
フローラは、重い腰を上げ、一つの決意を固めた。全ての元凶――そう、あのドレイクという男を誠実な青年として彼女に紹介し、結果的にこの地獄への道案内をしてしまった張本人、叔母のクローディアに会わねばならない。
数日後、質素な馬車に揺られ、フローラはクローディアが暮らす侯爵家の屋敷の前に立っていた。大理石の柱が並ぶ壮麗なファサードは、今のフローラの荒んだ心とは対照的で気圧されそうになる。
(叔母様は…どんな顔で私に会うのかしら?)
一抹の不安と湧き上がる怒りを抑えながら、フローラは重い扉を叩いた。
応接室に通されたフローラを待っていたのは、以前と変わらぬ優雅な佇まいのクローディアだった。しかし、フローラのやつれた姿と、寂しさと哀しみが滲む瞳を見た瞬間、クローディアの顔から表情が消えた。
「フローラ! まあ、なんてこと…あなた、何があったの? まるで…そう、嵐にでも遭った小鳥のようだわ」
クローディアは、心配そうにフローラに駆け寄ろうとした。
フローラは、その手を制するように静かに首を振った。そして、震える唇で、あの日からの出来事を言葉を選びながら克明に語り始めた。ドレイク一家の横暴、使用人への非道な扱い、公爵家の財産の私物化、そして夫ドレイクの裏切りと愛人のミレイユの存在。
話が進むにつれ、クローディアの顔色は青から土気色へと変わり、その整った眉は苦悶に歪んでいく。フローラが、公爵邸が今や見るも無残な悪趣味な成金の巣窟と化した様を語り終える頃には、クローディアはソファに崩れ落ちるように座り込み扇で口元を覆っていた。
「……なんですって…? あの、ドレイクが? そ、そんな…馬鹿な……!」
クローディアの声は、絞り出すようで信じられないという響きと、途方もない衝撃に打ち震えていた。
「あの女がいなくなって、毎日が祝宴よ! なあ、ドレイク、お前もそう思うだろう? せいせいしたとな!」
「本当よ! これで思う存分、この公爵邸の財産も使いたい放題! フローラのケチケチ根性にはうんざりしてたもの!」
「フローラの部屋の家具、全部捨ててやったわ! だって、見るだけであの女の不幸そうな顔が浮かんで、気分が悪くなるんですもの!」
「ドレイク様、フローラさんのことなど、もう過去の埃ですわ。これからは、私と、そしてこの素晴らしいご家族と、新しい歴史を紡いでいきましょう」
「ああ…フローラのことか。うん、まあ、彼女には彼女の人生があるだろう。僕にはもう、関係ないことさ」
義父のアガレス、義母のナタリア、義妹のセシリア、幼馴染で愛人のミレイユ、そして夫のドレイク自身の言葉。甘い毒のように公爵邸に蔓延する悪意。フローラの心をじわじわと蝕み深い苦しみを与えた。
夜、一人ベッドの中でフローラは唇を噛みしめた。涙はもう出なかった。代わりに、心の奥底から燃えるような何かがこみ上げてくるのを感じていた。
(ドレイク…関係ないですって? よくもそんな! ドレイクの罠にはめられた……ええ、そうよ。でも、このまま泣き寝入りする私ではないわ。あなたたちが私から奪ったもの、そして私にしたことの全て、きっちりと清算させていただく。あなたたちが、せいせいしたと言うのなら、私もせいせいするわ。過去の甘かった自分に……。そして、あなたたちのような寄生虫を、公爵家から一掃するために、私は悪魔にだってなってやる!)
ショックと怒りが、奇妙な冷静さへと変わっていく。フローラは、ゆっくりと深呼吸をした。
「見ていなさい、ドレイク。そして、あなたの愚かな家族と、その愛人さん。あなたたちが築き上げた偽りの楽園は、この私、フローラ・フォン・フランヴェルが、木っ端微塵に打ち砕いてあげるわ!」
彼女の頭の中では、彼らが最も大切にしているもの――虚栄心、強欲、そして安逸な生活――を根こそぎ奪い取り、社会的な抹殺すら視野に入れた壮絶な応報の計画だった。
別邸での孤独な日々の中、セバスからもたらされる公爵邸の惨状は、フローラの心をさらに黒檀のように硬く冷たくさせていた。
あの美しかった我が家は、今や品性のかけらもない略奪者たちの巣窟と成り果て、夫だったはずの男は、見知らぬ女と戯れながらその様をせせら笑っている。フローラは絶望と怒りが、マグマのように心の奥底で煮えたぎっていた。
(もう、一人で抱えきれない……)
フローラは、重い腰を上げ、一つの決意を固めた。全ての元凶――そう、あのドレイクという男を誠実な青年として彼女に紹介し、結果的にこの地獄への道案内をしてしまった張本人、叔母のクローディアに会わねばならない。
数日後、質素な馬車に揺られ、フローラはクローディアが暮らす侯爵家の屋敷の前に立っていた。大理石の柱が並ぶ壮麗なファサードは、今のフローラの荒んだ心とは対照的で気圧されそうになる。
(叔母様は…どんな顔で私に会うのかしら?)
一抹の不安と湧き上がる怒りを抑えながら、フローラは重い扉を叩いた。
応接室に通されたフローラを待っていたのは、以前と変わらぬ優雅な佇まいのクローディアだった。しかし、フローラのやつれた姿と、寂しさと哀しみが滲む瞳を見た瞬間、クローディアの顔から表情が消えた。
「フローラ! まあ、なんてこと…あなた、何があったの? まるで…そう、嵐にでも遭った小鳥のようだわ」
クローディアは、心配そうにフローラに駆け寄ろうとした。
フローラは、その手を制するように静かに首を振った。そして、震える唇で、あの日からの出来事を言葉を選びながら克明に語り始めた。ドレイク一家の横暴、使用人への非道な扱い、公爵家の財産の私物化、そして夫ドレイクの裏切りと愛人のミレイユの存在。
話が進むにつれ、クローディアの顔色は青から土気色へと変わり、その整った眉は苦悶に歪んでいく。フローラが、公爵邸が今や見るも無残な悪趣味な成金の巣窟と化した様を語り終える頃には、クローディアはソファに崩れ落ちるように座り込み扇で口元を覆っていた。
「……なんですって…? あの、ドレイクが? そ、そんな…馬鹿な……!」
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