母が病気で亡くなり父と継母と義姉に虐げられる。幼馴染の王子に溺愛され結婚相手に選ばれたら家族の態度が変わった。

佐藤 美奈

文字の大きさ
7 / 17

第7話

しおりを挟む
「ナルセス王子は種無しなんでしょう?」
「それは……」
「本当のようですね。ふん、まぁいいわ。それと私が許可するまでアイシャとは身体を重ね合わせるようなことはしないでくださいね」
「分かった……」

ルージュはナルセスに対して、無礼でいかがわしい質問をして男性の尊厳や誇りを遠慮なく踏みにじる事を言っていたらしい。

最初から道徳を持ち合わせてないか既に手放したルージュの下品な発言に、アイシャは尋常でない怒りの感情を抱きながら調査書をひととおり見る。

でもおかしい?ナルセスが怒りと屈辱で堪忍袋の緒が切れて、ルージュを強く非難しても仕方がないことなのに、信じられないほど腰が引けている対応。

「ナルセスが種無し?それよりもルージュは何でそのことを知ってるの?なにか弱みにつけ込まれているの?」

ルージュは妻のアイシャでさえ知る由もないことを語り、弱みを握り思うがままにナルセスを動かそうとしている。アイシャは無意識にそうつぶやく。推測にすぎないがそう思うのが普通だった。

もはや起こることのあり得ない出来事に、アイシャは混乱すばかりで冷静に受け止めるにはまだ心が処理をできずに、とても悔しいという嫉妬心からなのか涙を流しながら唇を噛んでいた。


「ただいまアイシャ」
「お帰りなさいナルセス今日も早いのね」
「しばらくはこんな感じかな。アイシャと一緒にいられる時間が増えるから僕は嬉しいよ」

次の日も職務を片付けたナルセスが早めに帰宅した。曇りのない爽やかな笑顔を浮かべて挨拶をすると、アイシャも満面の笑顔で出迎える。ナルセスはこれからは早く帰れるようになったと言う。

「突然どうしたの?」

歩いているといきなり背後から抱きしめられる。アイシャは動揺していたが、ナルセスは何も言わずに強く抱きしめ続けると、アイシャの体に力が入っていたのが徐々に力が抜けていく。

鼓動が落ちついてアイシャはようやく安心したような顔になる。だが、ナルセスはアイシャの体を正面に向けてお構い無しにキスをする。久しぶりの唇はとても柔らかくて少しの間吸いついて深いキスに変わっていく。

一体いつ以来のキスだろうか?唇から身体全体に高揚した気分が広がる。時間にして数分間夫婦の結束を深めるように口付けを交わした。

「何かあったの?」
「アイシャすまない」
「情熱的で驚いたけど……ナルセス大丈夫?」
「アイシャに元気をもらったから心配ないよ」

ナルセスは虚ろな表情のまま、目に涙を浮かべていた。心配そうな面持ちでアイシャは思わず問いただしますが、ナルセスの哀れを感じる顔を見るとそれ以上は追及できませんでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約解消を宣言したい忠犬令息の攻防戦

夕鈴
恋愛
薔薇が咲き誇る美しい庭園で椅子に座って悲しそうな顔で地面に向かって何度も同じ言葉を呟く少年がいた。 「僕は、姫様に相応しくないので、婚約を解消しましょう」 膝の上で固く握った拳は震えている。 少年の拳の上に真っ赤な花びらが落ちてきた。 少年が顔を上げると、美しい真っ赤な薔薇が目に映る。 少年は婚約者を連想させる真っ赤な薔薇を見ていられず、目を閉じた。 目を閉じた少年を見つめる存在には気付かなかった。 鈍感な少年と少年に振り回される恋するお姫様の物語です。

侯爵令嬢はざまぁ展開より溺愛ルートを選びたい

花月
恋愛
内気なソフィア=ドレスデン侯爵令嬢の婚約者は美貌のナイジェル=エヴァンス公爵閣下だったが、王宮の中庭で美しいセリーヌ嬢を抱きしめているところに遭遇してしまう。 ナイジェル様から婚約破棄を告げられた瞬間、大聖堂の鐘の音と共に身体に異変が――。 あら?目の前にいるのはわたし…?「お前は誰だ!?」叫んだわたしの姿の中身は一体…? ま、まさかのナイジェル様?何故こんな展開になってしまったの?? そして婚約破棄はどうなるの??? ほんの数時間の魔法――一夜だけの入れ替わりに色々詰め込んだ、ちぐはぐラブコメ。

冷淡姫の恋心

玉響なつめ
恋愛
冷淡姫、そうあだ名される貴族令嬢のイリアネと、平民の生まれだがその実力から貴族家の養子になったアリオスは縁あって婚約した。 そんな二人にアリオスと同じように才能を見込まれて貴族家の養子になったというマリアンナの存在が加わり、一見仲良く過ごす彼らだが次第に貴族たちの慣習や矜持に翻弄される。 我慢すれば済む、それは本当に? 貴族らしくある、そればかりに目を向けていない? 不器用な二人と、そんな二人を振り回す周囲の人々が織りなすなんでもない日常。 ※カクヨム・小説家になろう・Talesにも載せています

【完結】憧れの人の元へ望まれて嫁いだはずなのに「君じゃない」と言われました

Rohdea
恋愛
特別、目立つ存在でもないうえに、結婚適齢期が少し過ぎてしまっていた、 伯爵令嬢のマーゴット。 そんな彼女の元に、憧れの公爵令息ナイジェルの家から求婚の手紙が…… 戸惑いはあったものの、ナイジェルが強く自分を望んでくれている様子だった為、 その話を受けて嫁ぐ決意をしたマーゴット。 しかし、いざ彼の元に嫁いでみると…… 「君じゃない」 とある勘違いと誤解により、 彼が本当に望んでいたのは自分ではなかったことを知った────……

【完結】冷遇・婚約破棄の上、物扱いで軍人に下賜されたと思ったら、幼馴染に溺愛される生活になりました。

天音ねる(旧:えんとっぷ)
恋愛
【恋愛151位!(5/20確認時点)】 アルフレッド王子と婚約してからの間ずっと、冷遇に耐えてきたというのに。 愛人が複数いることも、罵倒されることも、アルフレッド王子がすべき政務をやらされていることも。 何年間も耐えてきたのに__ 「お前のような器量の悪い女が王家に嫁ぐなんて国家の恥も良いところだ。婚約破棄し、この娘と結婚することとする」 アルフレッド王子は新しい愛人の女の腰を寄せ、婚約破棄を告げる。 愛人はアルフレッド王子にしなだれかかって、得意げな顔をしている。 誤字訂正ありがとうございました。4話の助詞を修正しました。

双子の姉に聴覚を奪われました。

浅見
恋愛
『あなたが馬鹿なお人よしで本当によかった!』 双子の王女エリシアは、姉ディアナに騙されて聴覚を失い、塔に幽閉されてしまう。 さらに皇太子との婚約も破棄され、あらたな婚約者には姉が選ばれた――はずなのに。 三年後、エリシアを迎えに現れたのは、他ならぬ皇太子その人だった。

【完結】溺愛される意味が分かりません!?

もわゆぬ
恋愛
正義感強め、口調も強め、見た目はクールな侯爵令嬢 ルルーシュア=メライーブス 王太子の婚約者でありながら、何故か何年も王太子には会えていない。 学園に通い、それが終われば王妃教育という淡々とした毎日。 趣味はといえば可愛らしい淑女を観察する事位だ。 有るきっかけと共に王太子が再び私の前に現れ、彼は私を「愛しいルルーシュア」と言う。 正直、意味が分からない。 さっぱり系令嬢と腹黒王太子は無事に結ばれる事が出来るのか? ☆カダール王国シリーズ 短編☆

片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜

橘しづき
恋愛
 姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。    私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。    だが当日、姉は結婚式に来なかった。  パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。 「私が……蒼一さんと結婚します」    姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。

処理中です...