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第12話
「二人は馬車に乗りました」
ナルセスとルージュの歩いて行く方向には馬車が数台停まっていたという。その馬車に二人は乗り、彼らの付き人達も別の馬車に乗り込んで発進した。
「ちょっと馬車に乗るなんて聞いてないんだけど?」
「私もです。てっきりいつもの密会場所で落ち合うとばかり……」
尾行者を警戒しての行動なのだろうか?突然の馬車移動は想定外だった。アイシャはこの前の通り二人がいつも利用している隠れ家の近くで待機していた。
ナルセスとルージュが馬車に乗り発進したのを確認して、数人の尾行者は途中で見失わないように後を追いかける。
40分ほど走り馬車は屋敷に入っていく。馬車を追っていた尾行者も存在に気がつかれないように気配を消して様子をうかがっていた。
すぐに空きスペースに馬車が止まり、ナルセスとルージュが降りて屋敷の中に消えて行く。二人の付き人達は命令されたのか外で待機していたそう。その後、屋敷に入ってわずか数十分ほどで二人は出てきたらしい。
「どういうこと?そんな短い時間で二人は愛し合っていたの?」
「残念ながらそのようです」
「信じられない……」
無意識にアイシャはそう問いかけると返答に呆れ果て、感じたことのない疲労感が体にのしかかってきた。かなり喉の乾きを覚えて冷たい飲み物で喉を潤わせる。
短い間だったがナルセスは屋敷の中でルージュと関係を持った。報告を聞いているアイシャの顔は悲しげに曇り、永遠にも似たように長く感じてつらいもので、重苦しい雰囲気が部屋の中に充満していた。
「私もその場所に行くわ!」
「アイシャ様どうか落ち着いてください!」
腹の虫がおさまらないアイシャは屋敷に突撃したい気持ちを抑えられなくて立ち上がったが、側近に体を掴まれて止められてしまう。既に二人は別の場所に移動して全てが終わった後だったのだ。
それからの事はあまり覚えていない。アイシャは精神的なショックを受けて心の抵抗力を一時的に失っていた。気がつくと扉の前に立っていて家に帰ってきたことが分かった。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「顔色が悪いけど大丈夫?」
その日、アイシャはかなり憔悴しきった顔でナルセスを出迎えた。いつも太陽みたいに明るい笑顔を絶やさない妻の顔が暗いことに気がついて、心配してすぐに尋ねた。
「それよりナルセスこれから話があるの」
「わかった」
もう決断をしていたアイシャは真面目な口調で言う。ナルセスも何かいつもと違う雰囲気を感じ取ったのか同意するように頷く。話しが長くなると思ったアイシャは、ゆったりとしたソファーに座る。
ナルセスとルージュの歩いて行く方向には馬車が数台停まっていたという。その馬車に二人は乗り、彼らの付き人達も別の馬車に乗り込んで発進した。
「ちょっと馬車に乗るなんて聞いてないんだけど?」
「私もです。てっきりいつもの密会場所で落ち合うとばかり……」
尾行者を警戒しての行動なのだろうか?突然の馬車移動は想定外だった。アイシャはこの前の通り二人がいつも利用している隠れ家の近くで待機していた。
ナルセスとルージュが馬車に乗り発進したのを確認して、数人の尾行者は途中で見失わないように後を追いかける。
40分ほど走り馬車は屋敷に入っていく。馬車を追っていた尾行者も存在に気がつかれないように気配を消して様子をうかがっていた。
すぐに空きスペースに馬車が止まり、ナルセスとルージュが降りて屋敷の中に消えて行く。二人の付き人達は命令されたのか外で待機していたそう。その後、屋敷に入ってわずか数十分ほどで二人は出てきたらしい。
「どういうこと?そんな短い時間で二人は愛し合っていたの?」
「残念ながらそのようです」
「信じられない……」
無意識にアイシャはそう問いかけると返答に呆れ果て、感じたことのない疲労感が体にのしかかってきた。かなり喉の乾きを覚えて冷たい飲み物で喉を潤わせる。
短い間だったがナルセスは屋敷の中でルージュと関係を持った。報告を聞いているアイシャの顔は悲しげに曇り、永遠にも似たように長く感じてつらいもので、重苦しい雰囲気が部屋の中に充満していた。
「私もその場所に行くわ!」
「アイシャ様どうか落ち着いてください!」
腹の虫がおさまらないアイシャは屋敷に突撃したい気持ちを抑えられなくて立ち上がったが、側近に体を掴まれて止められてしまう。既に二人は別の場所に移動して全てが終わった後だったのだ。
それからの事はあまり覚えていない。アイシャは精神的なショックを受けて心の抵抗力を一時的に失っていた。気がつくと扉の前に立っていて家に帰ってきたことが分かった。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「顔色が悪いけど大丈夫?」
その日、アイシャはかなり憔悴しきった顔でナルセスを出迎えた。いつも太陽みたいに明るい笑顔を絶やさない妻の顔が暗いことに気がついて、心配してすぐに尋ねた。
「それよりナルセスこれから話があるの」
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