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第16話
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「お前達は子供はいつできるんだ?」
「僕が種無しだから子供ができないんだよ!」
「そうだったのか……ナルセスすまなかった」
ある日、ナルセスと親友のハリソンは酒を飲んでたときに、しつこく子供ができない理由を聞かれたそう。自信を失っていたナルセスは思わず自分が種無しだと答えたのです。
今考えればこの頃からアイシャとナルセスは、少しずつすれ違いだしたのかもしれません。勝手に見えない壁を張って積極的に交流しようとせずにお互い煙たく思っていた。
確かに緊張感が欠けていたナルセスが、ルージュにつけ込まれてしまった落ち度はありますが、そんな事が回りまわって今回のような問題が起きたのでしょう。
「アイシャ様お帰りなさいませ」
「ただいま。ナルセスはいる?」
「ナルセス様なら寝室にいらっしゃいます」
実家でルージュとの話し合いを終えて帰って来た。出迎えてくれたメイドにナルセスの居場所を尋ねると、寝室にいると聞いてアイシャはひたすら足早に歩く。
「ナルセス?真っ暗な部屋でどうしたの?」
アイシャは部屋の照明をつけた。ほとんど抜け殻状態だったナルセスの隣に座り、顔を見ると泣いていたようで目を腫らしていた。
ルージュと会ってきたことを話しました。ナルセスは伏せていた顔を上げて泣きながら、深く反省し何度もアイシャに詫びてくる。
「本当にアイシャには申し訳ないことをした。全部僕のせいで君を苦しめてしまって……」
「それは別にいいの。それよりナルセスは本当に私と別れたくないの?」
「もちろんだよ。アイシャと一生共に過ごして寿命を迎えたい。節操のない情けない夫だと自覚して罪の重さも理解している。ほんとに都合の良い事を言うけどアイシャとこれから先も一緒にいたい」
ナルセスは熱い涙がとめどなく流れ泣くばかりでした。アイシャに対してナルセスは後悔がどこまでも尽きないという雰囲気だった。心からの気持ちだと感じました。
慈愛に満ちた顔のアイシャは、彼が同情を受けるのに充分値したと正しい精神と寛大な思いで判断する。
正直に言うとナルセスの謝罪の言葉が虚言を並べ立てていても、ナルセスをこよなく愛していたから騙されてもいいとさえ思っていた。
「私もずっとナルセスを一人にして寂しい思いをさせてきた。今回も最初はそのせいでルージュと関係を持ったと思っていました。それにナルセスが他の女性に惹かれても止むを得ないとも考えたこともあった」
アイシャはナルセスの顔を見ながら語り始める。
「何を言ってるんだ。僕が悪いからアイシャは謝らないでくれ。こんな僕でもいいと思うのならもう一度夫婦関係をやり直してほしい」
「はい」
反省の言葉を口にするアイシャに、ナルセスは心苦しく思う。自分は調子のいい男だが、まっさらの状態で夫婦をやり直そうと言う。アイシャはナルセスの事を本気で愛してると思い出して返事をする。
ナルセスは泣きながら、ありがとうと何度も頭を下げる。二人は力いっぱい抱きしめ合い、力尽きて眠るまで一緒に感涙にむせびながら幸せな心地で余韻に浸っていた。
*****
新作「王子が親友を好きになり婚約破棄「僕は本当の恋に出会えた。君とは結婚できない」王子に付きまとわれて迷惑してる?衝撃の真実がわかった。」を投稿しました。よろしくお願いします。
「僕が種無しだから子供ができないんだよ!」
「そうだったのか……ナルセスすまなかった」
ある日、ナルセスと親友のハリソンは酒を飲んでたときに、しつこく子供ができない理由を聞かれたそう。自信を失っていたナルセスは思わず自分が種無しだと答えたのです。
今考えればこの頃からアイシャとナルセスは、少しずつすれ違いだしたのかもしれません。勝手に見えない壁を張って積極的に交流しようとせずにお互い煙たく思っていた。
確かに緊張感が欠けていたナルセスが、ルージュにつけ込まれてしまった落ち度はありますが、そんな事が回りまわって今回のような問題が起きたのでしょう。
「アイシャ様お帰りなさいませ」
「ただいま。ナルセスはいる?」
「ナルセス様なら寝室にいらっしゃいます」
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「ナルセス?真っ暗な部屋でどうしたの?」
アイシャは部屋の照明をつけた。ほとんど抜け殻状態だったナルセスの隣に座り、顔を見ると泣いていたようで目を腫らしていた。
ルージュと会ってきたことを話しました。ナルセスは伏せていた顔を上げて泣きながら、深く反省し何度もアイシャに詫びてくる。
「本当にアイシャには申し訳ないことをした。全部僕のせいで君を苦しめてしまって……」
「それは別にいいの。それよりナルセスは本当に私と別れたくないの?」
「もちろんだよ。アイシャと一生共に過ごして寿命を迎えたい。節操のない情けない夫だと自覚して罪の重さも理解している。ほんとに都合の良い事を言うけどアイシャとこれから先も一緒にいたい」
ナルセスは熱い涙がとめどなく流れ泣くばかりでした。アイシャに対してナルセスは後悔がどこまでも尽きないという雰囲気だった。心からの気持ちだと感じました。
慈愛に満ちた顔のアイシャは、彼が同情を受けるのに充分値したと正しい精神と寛大な思いで判断する。
正直に言うとナルセスの謝罪の言葉が虚言を並べ立てていても、ナルセスをこよなく愛していたから騙されてもいいとさえ思っていた。
「私もずっとナルセスを一人にして寂しい思いをさせてきた。今回も最初はそのせいでルージュと関係を持ったと思っていました。それにナルセスが他の女性に惹かれても止むを得ないとも考えたこともあった」
アイシャはナルセスの顔を見ながら語り始める。
「何を言ってるんだ。僕が悪いからアイシャは謝らないでくれ。こんな僕でもいいと思うのならもう一度夫婦関係をやり直してほしい」
「はい」
反省の言葉を口にするアイシャに、ナルセスは心苦しく思う。自分は調子のいい男だが、まっさらの状態で夫婦をやり直そうと言う。アイシャはナルセスの事を本気で愛してると思い出して返事をする。
ナルセスは泣きながら、ありがとうと何度も頭を下げる。二人は力いっぱい抱きしめ合い、力尽きて眠るまで一緒に感涙にむせびながら幸せな心地で余韻に浸っていた。
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