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第11話
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「レオナルドよ……お前は考えが足りない。アリーナ令嬢の能力をまだ理解できていないらしいな?」
「どういうことですか?」
「アリーナ令嬢に病気を治してもらった私が、彼女を束縛するようなことをすればどうなると思う?」
国王はしみじみとした気持ちで、涙ぐみそうだった。息子は彼女の心を傷つけるという同じ過ちを繰り返そうとしている。アリーナの能力を1割も分かっていないようだなと内心で舌打ちした。
レオナルドは、今になってもまだ気の抜けた顔で質問してくる。父は哀れみを越えた視線を息子に向けると、深刻な顔をして念を押すように厳重な口調で問うた。
「……まさか!?」
「ふぅ、やっと気づいたか……」
頭に重大な障害でも発生しているのかと思わせるような息子に、頭の中を綺麗にお手入れをして正常な状態に戻して機能を回復する必要があると感じた。父は、ふーっと疲労を吐き出すように息をすると、息子のばかさ加減にぐったりする。
相変わらず父は、哀れむような目で自分をじっと見つめている。その瞬間、レオナルドは思わずはっといたしました。脳裏に、あのときのシーンが蘇ってくるのです。
誕生日パーティーでアリーナに婚約破棄を宣言した時に、招待した海外の要人や影響力のある各界の著名人に、代々の王室や大貴族たちが自分に向けてきた視線と同じだった。
(あの視線はそういうことだったのか……)
凍りついた顔で可哀想なものでも見るような視線を感じて、次から次へと死者に祈りを捧げるような奇妙な態度を取り始めて、涙を流して自分に向かって手を合わせてくれた。
なんだこれは?レオナルドは何か異様な雰囲気を覚えて、ちょっと狼狽えながらも一人だけ取り残されたような心細さを味わった。とはいえ、隣にいる結婚を決めた幼馴染のカトリーヌを不安な気持ちにはさせられないので勇気を奮い起こす。
「レオナルド様あああああぁーっ!」
「前から親愛の情を抱いておりました……」
「レオナルド様が人生の幕を閉じることに胸がつぶれる思いです」
「レオナルド殿下は千の風になるのですよ……」
「おっしゃる通りですわ!レオナルド様は死んだのではなく、魂になって残された私たちの傍らでいつも語りかけてくれるのですね……」
あまり目立たぬように日々を過ごし、まだ誰にも気づかれていない素敵で可愛い女性たちがレオナルドに近づいてきた。上品で若々しく華やかな美貌の奥様方や人形みたいな可憐な顔立ちの純情そうな令嬢たちです。
昔からあなたのことが好きでした、生まれて初めて恋に落ちましたと、密かに自分に片思いしていたなどと涙を流さんばかりの声で、切ない感情を何もかも隠さず打ち明けてきた。
実らない恋の告白と、レオナルドが世を去るのが悲しくて大粒の涙が溢れている女性たちは、いくら泣いても泣ききれない様子で、追悼メッセージを我先にと寄せている。
「ありがとう」
レオナルドは戸惑い気味の顔になりながらも、ありがとう大切にするからねと優しく微笑んで丁寧にお礼を返していました。
「どういうことですか?」
「アリーナ令嬢に病気を治してもらった私が、彼女を束縛するようなことをすればどうなると思う?」
国王はしみじみとした気持ちで、涙ぐみそうだった。息子は彼女の心を傷つけるという同じ過ちを繰り返そうとしている。アリーナの能力を1割も分かっていないようだなと内心で舌打ちした。
レオナルドは、今になってもまだ気の抜けた顔で質問してくる。父は哀れみを越えた視線を息子に向けると、深刻な顔をして念を押すように厳重な口調で問うた。
「……まさか!?」
「ふぅ、やっと気づいたか……」
頭に重大な障害でも発生しているのかと思わせるような息子に、頭の中を綺麗にお手入れをして正常な状態に戻して機能を回復する必要があると感じた。父は、ふーっと疲労を吐き出すように息をすると、息子のばかさ加減にぐったりする。
相変わらず父は、哀れむような目で自分をじっと見つめている。その瞬間、レオナルドは思わずはっといたしました。脳裏に、あのときのシーンが蘇ってくるのです。
誕生日パーティーでアリーナに婚約破棄を宣言した時に、招待した海外の要人や影響力のある各界の著名人に、代々の王室や大貴族たちが自分に向けてきた視線と同じだった。
(あの視線はそういうことだったのか……)
凍りついた顔で可哀想なものでも見るような視線を感じて、次から次へと死者に祈りを捧げるような奇妙な態度を取り始めて、涙を流して自分に向かって手を合わせてくれた。
なんだこれは?レオナルドは何か異様な雰囲気を覚えて、ちょっと狼狽えながらも一人だけ取り残されたような心細さを味わった。とはいえ、隣にいる結婚を決めた幼馴染のカトリーヌを不安な気持ちにはさせられないので勇気を奮い起こす。
「レオナルド様あああああぁーっ!」
「前から親愛の情を抱いておりました……」
「レオナルド様が人生の幕を閉じることに胸がつぶれる思いです」
「レオナルド殿下は千の風になるのですよ……」
「おっしゃる通りですわ!レオナルド様は死んだのではなく、魂になって残された私たちの傍らでいつも語りかけてくれるのですね……」
あまり目立たぬように日々を過ごし、まだ誰にも気づかれていない素敵で可愛い女性たちがレオナルドに近づいてきた。上品で若々しく華やかな美貌の奥様方や人形みたいな可憐な顔立ちの純情そうな令嬢たちです。
昔からあなたのことが好きでした、生まれて初めて恋に落ちましたと、密かに自分に片思いしていたなどと涙を流さんばかりの声で、切ない感情を何もかも隠さず打ち明けてきた。
実らない恋の告白と、レオナルドが世を去るのが悲しくて大粒の涙が溢れている女性たちは、いくら泣いても泣ききれない様子で、追悼メッセージを我先にと寄せている。
「ありがとう」
レオナルドは戸惑い気味の顔になりながらも、ありがとう大切にするからねと優しく微笑んで丁寧にお礼を返していました。
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