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第11話
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「まさか……アレリオ?」
「そうです! アレリオです! うわー、何十年も経つのに、覚えててくれたなんて感激です!」
次の瞬間、アレリオは、わーい! という奇声と共に、私にがばりと抱きついてきた。
「ちょっ、苦しい……!」
「先生に会いたかったー!」
ぎゅうぎゅうと締め付ける腕の力は、昔のひょろっとした彼からは想像もつかないほど強い。立派になって……。嬉しいけど、本当に苦しい!
「元気そうで……よかったわ……、ぐえっ」
私が喜びと窒息の間で揺れていると、背後から地獄の底から響くような低い声がした。
「……アレリオ」
声の方を見ると、レオナールが般若のような顔で、肩をぷるぷると震わせている。あ、これはまずい。
「貴様、先生に気安く抱きつくな!!」
「うおっ!?」
レオナールは、アレリオを私から力ずくで引き剥がした。
「なんだよレオナール! 邪魔すんな! 俺は今、先生との感動の再会の真っ最中なんだぞ!」
「感動の再会だと? 貴様、仕事はどうしたんだ!」
「俺に山のような仕事を押し付けておいて、自分は先生とデートか!」
「まさか、私が先生をデートにお連れしているのを嗅ぎつけてきたな!?」
「ずるいぞ、レオナール! 俺だって先生とデートしたいのに!」
二人の間で、バチバチと激しい火花が散っているのが見える。え、何この状況。というか、仲悪かったの? この二人。
彼らの言い争いは、当然ながら、周囲の注目を一身に集めていた。
「すごい! 医療魔法師団のレオナール様とアレリオ様よ!」
「本物の《大神癒師》様と《副大神癒師》様だわ!」
「すごい組み合わせね! でも、何で言い争って……」
「間にいる人、さっきレオナール様と一緒にいた……あの新しい指南役の人じゃない?」
「え、じゃあ、二人が取り合ってるってこと!?」
きゃー! という黄色い悲鳴が、あちこちから上がる。やめて、そんなキラキラした目で見ないで。私はただの田舎の医療師です。こんな少女漫画みたいな展開、求めてません!
息が詰まるような視線の中で、それでも私は、誇らしい気持ちになっている自分に気づいた。
大神癒師。副大神癒師。人々から尊敬され、憧れの目で見つめられる立派な二人。
私の、自慢の教え子たち。
アレリオが、むっとした顔で私に向き直った。
「先生、酷いじゃないですか! レオナールだけじゃなくて、俺との約束も覚えてますよね!?」
「え? 約束……?」
アレリオとの約束? レオナールとの約束は、あまりにも衝撃的だったから覚えているけれど……。
私が不思議そうな顔をしたのに気づいて、アレリオはさらに唇を尖らせた。そして、昔と少しも変わらない、子供っぽい口調で言ったのだ。
『俺も! 俺も、先生を守れるくらい強くて大きくなったら、先生と結婚するんだからな! レオなんかに負けない!』
あの日、レオナールが私にプロポーズ(?)した翌日。アレリオはレオナールを真似するように、そう息巻いていた。そうだ、そんなこともあった。すっかり、忘れていた。
「……思い、出した」
「でしょ!? 俺、レオナールに勝つために、死ぬ気で頑張ってきたんですよ! なのに、抜け駆けなんて許しませんからね!」
そう宣言すると、アレリオは私の右腕をがっしりと掴んだ。
「ちょ、アレリオ!?」
「先生は私と王都を回るんです! 貴様は仕事に戻れ!」
すかさず、レオナールが私の左腕を掴む。
「いや、俺と回るんだ! 大体、大典医のお前がサボってどうすんだよ!」
「デートではない! 先生の心を癒すための、公務だ!」
「何だよそれ、意味わかんねーよ!」
大神癒師と副大神癒師に両腕を掴まれ、大通りで引っ張り合いにされる特別指南役。
私の王都での生活は、どうやらとんでもなく騒がしいものになりそうだ。
心臓がいくつあっても足りないかもしれない。なんて、どこか他人事のように考えながら、私は空を仰いだ。王都の空は、私の故郷の空よりも、ずっとずっと高くて、そして青かった。
「そうです! アレリオです! うわー、何十年も経つのに、覚えててくれたなんて感激です!」
次の瞬間、アレリオは、わーい! という奇声と共に、私にがばりと抱きついてきた。
「ちょっ、苦しい……!」
「先生に会いたかったー!」
ぎゅうぎゅうと締め付ける腕の力は、昔のひょろっとした彼からは想像もつかないほど強い。立派になって……。嬉しいけど、本当に苦しい!
「元気そうで……よかったわ……、ぐえっ」
私が喜びと窒息の間で揺れていると、背後から地獄の底から響くような低い声がした。
「……アレリオ」
声の方を見ると、レオナールが般若のような顔で、肩をぷるぷると震わせている。あ、これはまずい。
「貴様、先生に気安く抱きつくな!!」
「うおっ!?」
レオナールは、アレリオを私から力ずくで引き剥がした。
「なんだよレオナール! 邪魔すんな! 俺は今、先生との感動の再会の真っ最中なんだぞ!」
「感動の再会だと? 貴様、仕事はどうしたんだ!」
「俺に山のような仕事を押し付けておいて、自分は先生とデートか!」
「まさか、私が先生をデートにお連れしているのを嗅ぎつけてきたな!?」
「ずるいぞ、レオナール! 俺だって先生とデートしたいのに!」
二人の間で、バチバチと激しい火花が散っているのが見える。え、何この状況。というか、仲悪かったの? この二人。
彼らの言い争いは、当然ながら、周囲の注目を一身に集めていた。
「すごい! 医療魔法師団のレオナール様とアレリオ様よ!」
「本物の《大神癒師》様と《副大神癒師》様だわ!」
「すごい組み合わせね! でも、何で言い争って……」
「間にいる人、さっきレオナール様と一緒にいた……あの新しい指南役の人じゃない?」
「え、じゃあ、二人が取り合ってるってこと!?」
きゃー! という黄色い悲鳴が、あちこちから上がる。やめて、そんなキラキラした目で見ないで。私はただの田舎の医療師です。こんな少女漫画みたいな展開、求めてません!
息が詰まるような視線の中で、それでも私は、誇らしい気持ちになっている自分に気づいた。
大神癒師。副大神癒師。人々から尊敬され、憧れの目で見つめられる立派な二人。
私の、自慢の教え子たち。
アレリオが、むっとした顔で私に向き直った。
「先生、酷いじゃないですか! レオナールだけじゃなくて、俺との約束も覚えてますよね!?」
「え? 約束……?」
アレリオとの約束? レオナールとの約束は、あまりにも衝撃的だったから覚えているけれど……。
私が不思議そうな顔をしたのに気づいて、アレリオはさらに唇を尖らせた。そして、昔と少しも変わらない、子供っぽい口調で言ったのだ。
『俺も! 俺も、先生を守れるくらい強くて大きくなったら、先生と結婚するんだからな! レオなんかに負けない!』
あの日、レオナールが私にプロポーズ(?)した翌日。アレリオはレオナールを真似するように、そう息巻いていた。そうだ、そんなこともあった。すっかり、忘れていた。
「……思い、出した」
「でしょ!? 俺、レオナールに勝つために、死ぬ気で頑張ってきたんですよ! なのに、抜け駆けなんて許しませんからね!」
そう宣言すると、アレリオは私の右腕をがっしりと掴んだ。
「ちょ、アレリオ!?」
「先生は私と王都を回るんです! 貴様は仕事に戻れ!」
すかさず、レオナールが私の左腕を掴む。
「いや、俺と回るんだ! 大体、大典医のお前がサボってどうすんだよ!」
「デートではない! 先生の心を癒すための、公務だ!」
「何だよそれ、意味わかんねーよ!」
大神癒師と副大神癒師に両腕を掴まれ、大通りで引っ張り合いにされる特別指南役。
私の王都での生活は、どうやらとんでもなく騒がしいものになりそうだ。
心臓がいくつあっても足りないかもしれない。なんて、どこか他人事のように考えながら、私は空を仰いだ。王都の空は、私の故郷の空よりも、ずっとずっと高くて、そして青かった。
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