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第15話
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「アナベルか。どうした?」
レオナールは、わずかに眉をひそめて応える。アナベル、という名前らしい。
彼女は、まずレオナールに深々と一礼すると、次に、まっすぐこちらを見つめる目に、思わず身がすくむ。その視線には怒りすらにじんでいて、一切の揺らぎがない。まるで命を狙われているみたいな、すさまじい気迫だ。
な、なんなの、このすごい圧……私、やられるの!?
「私は、アナベル・クラウゼンと申します。今年、首席の成績で王立医療学園を卒業し、この医療魔法師団に配属されました、見習いの身です」
首席! すごい、すごすぎる。私は心の中で、素直に拍手を送った。
アナベルさんは、一呼吸置くと、さらに衝撃的な事実を告げた。
「そして、私は、この医療魔法師団公認、レオナール様ファンクラブの『会員番号712番』を務めさせていただいております!」
……え? 会員番号712番。それは、すごいの? すごいのか?
ファンクラブに公認とかあるんだ……。
「会員番号3桁以内はレアなんですのよ!」
王都は、五百万人以上の人々の暮らしが織りなす巨大な都市だ。
そして、レオナールのファンクラブの会員数は十万人以上いるみたい。
そう考えると、3桁以内は、かなりすごいのかな?
ただ、アナベルさんがあまりにも真面目な顔で言うものだから、可笑しくなりそうになる。それでも、さすがに笑うわけにはいかず、どうにかこらえた。
「セシリア先生に向かって……お前は、何を言ってるんだ?」
レオナールは、半ばあきれたように呟いた。けれど完全には怒っていない不思議な顔で、アナベルを見つめていた。
私の思考がフリーズしているのをよそに、アナベルさんは、ぴしりと背筋を伸ばし、高らかに宣言した。
「私が心から敬愛するレオナール様が、ご自身の師と仰ぎ、お認めになられたそのご実力、いかほどのものか。大変恐縮ながら、この私と、勝負していただけませんでしょうか! セシリア・モントヴェール様!」
挑戦状。
それは、あまりにもはっきりとした挑戦状だった。
研修室の空気が、一瞬にして凍りつく。周りの見習いたちは、固唾を飲んで私とアナベルさんを交互に見ている。その瞳には、好奇心と、残酷なまでの期待が入り混じっていた。
絶体絶命、という言葉が、私の頭の上でピカピカと点滅している。
どうするの、私。
この、とんでもない状況を。
まずいことになったわ。
私の目の前で、栗色の髪をきりりと結い上げた美少女、アナベルさんが挑戦状を叩きつけている。その背後には、好奇心と疑念に満ちた大勢の瞳。
勝負だなんて……。
さっそく、私はこの王都で、特大の恥をかくことになるのだろうか。この、いかにも才気に満ちた若き見習いに、一方的に叩きのめされて『やっぱりね』と笑われる未来しか見えない。
ここで私が、アナベルさんとの勝負を断ればどうなる?
きっと、彼女の、いや、この医療魔法師団全員の不信感は、確信へと変わるだろう。『本当は実力なんてない、ただのコネなんだ』と。
かといって、この勝負を受けて、みっともないところを見せてしまえば……。私を信じて、こんな大層な立場に推薦してくれたレオナールの顔に、泥を塗ることになる。彼の輝かしいキャリアに、私という一点のシミを残してしまう。それだけは、絶対に嫌だった。
どうしよう。八方塞がりだ。
こうなったら、最後の望みは一つしかない。
私は、助けを求めるように、ちらりとレオナールに視線を送った。
あなたなら、この場を穏便に収めてくれるでしょう?
『見習いが指南役に勝負を挑むなど無礼だ!』とか、何とか言って。お願い。アナベルさんも、あなたの言うことなら聞くはずよね。だって、あなたのファンクラブの『会員番号712番』さんなんだから。
レオナールは、わずかに眉をひそめて応える。アナベル、という名前らしい。
彼女は、まずレオナールに深々と一礼すると、次に、まっすぐこちらを見つめる目に、思わず身がすくむ。その視線には怒りすらにじんでいて、一切の揺らぎがない。まるで命を狙われているみたいな、すさまじい気迫だ。
な、なんなの、このすごい圧……私、やられるの!?
「私は、アナベル・クラウゼンと申します。今年、首席の成績で王立医療学園を卒業し、この医療魔法師団に配属されました、見習いの身です」
首席! すごい、すごすぎる。私は心の中で、素直に拍手を送った。
アナベルさんは、一呼吸置くと、さらに衝撃的な事実を告げた。
「そして、私は、この医療魔法師団公認、レオナール様ファンクラブの『会員番号712番』を務めさせていただいております!」
……え? 会員番号712番。それは、すごいの? すごいのか?
ファンクラブに公認とかあるんだ……。
「会員番号3桁以内はレアなんですのよ!」
王都は、五百万人以上の人々の暮らしが織りなす巨大な都市だ。
そして、レオナールのファンクラブの会員数は十万人以上いるみたい。
そう考えると、3桁以内は、かなりすごいのかな?
ただ、アナベルさんがあまりにも真面目な顔で言うものだから、可笑しくなりそうになる。それでも、さすがに笑うわけにはいかず、どうにかこらえた。
「セシリア先生に向かって……お前は、何を言ってるんだ?」
レオナールは、半ばあきれたように呟いた。けれど完全には怒っていない不思議な顔で、アナベルを見つめていた。
私の思考がフリーズしているのをよそに、アナベルさんは、ぴしりと背筋を伸ばし、高らかに宣言した。
「私が心から敬愛するレオナール様が、ご自身の師と仰ぎ、お認めになられたそのご実力、いかほどのものか。大変恐縮ながら、この私と、勝負していただけませんでしょうか! セシリア・モントヴェール様!」
挑戦状。
それは、あまりにもはっきりとした挑戦状だった。
研修室の空気が、一瞬にして凍りつく。周りの見習いたちは、固唾を飲んで私とアナベルさんを交互に見ている。その瞳には、好奇心と、残酷なまでの期待が入り混じっていた。
絶体絶命、という言葉が、私の頭の上でピカピカと点滅している。
どうするの、私。
この、とんでもない状況を。
まずいことになったわ。
私の目の前で、栗色の髪をきりりと結い上げた美少女、アナベルさんが挑戦状を叩きつけている。その背後には、好奇心と疑念に満ちた大勢の瞳。
勝負だなんて……。
さっそく、私はこの王都で、特大の恥をかくことになるのだろうか。この、いかにも才気に満ちた若き見習いに、一方的に叩きのめされて『やっぱりね』と笑われる未来しか見えない。
ここで私が、アナベルさんとの勝負を断ればどうなる?
きっと、彼女の、いや、この医療魔法師団全員の不信感は、確信へと変わるだろう。『本当は実力なんてない、ただのコネなんだ』と。
かといって、この勝負を受けて、みっともないところを見せてしまえば……。私を信じて、こんな大層な立場に推薦してくれたレオナールの顔に、泥を塗ることになる。彼の輝かしいキャリアに、私という一点のシミを残してしまう。それだけは、絶対に嫌だった。
どうしよう。八方塞がりだ。
こうなったら、最後の望みは一つしかない。
私は、助けを求めるように、ちらりとレオナールに視線を送った。
あなたなら、この場を穏便に収めてくれるでしょう?
『見習いが指南役に勝負を挑むなど無礼だ!』とか、何とか言って。お願い。アナベルさんも、あなたの言うことなら聞くはずよね。だって、あなたのファンクラブの『会員番号712番』さんなんだから。
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