リュウのケイトウ

きでひら弓

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3レガシィ リュウの伝承4

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慧人は見つめる。
その堂々たる姿を讃える武神の
佇まいを。

(似ている。彼に…。
見た目もそうだが
漂う雰囲気が良く似ている。

もしやこの武神が
彼の起こりなのか?。

おそらく…………。)

『兄ちゃん(あんちゃん)。
おいどーした?!。

そんなに気に入っちまったのか?。

まあ、無理もねぇだろうけどよ。
最初にコイツを見た輩は
大抵、口あんぐりあけて
惚けちまうからな。』

慧人の武神を見つめる横顔に
サレヒュトが声を掛ける。

それは慧人の表情が余りにも
鋭く険しい物に見えたから。
まるで魂を揺さぶられているのかようで
サレヒュトも少し心配になったのだ。

『サレヒュトさん…。』

『ああ、俺の事はこれから
サレフと呼んでくれよ。
兄ちゃんとはもっと砕けて
付き合いたいからよ。』

慧人がサレヒュトに声を掛けようと
振り向いた時サレヒュトの方から
こんな申し入れがあった。

サレフの愛称はサレヒュトの中でも
本当に気の置けない者達だけに
使わせている呼び方。

まだ会ったばかりの慧人を
相当気に入ってる証拠だった。

何か通ずる物を見出したのだろう。

『でしたら自分の事も
慧人と呼び捨てにして下さい。

その方が気に易いです。』

『そうか?。
ならそう呼ばせてもらおうかな。
うっへっへ。』

慧人の屈託のない表情を見て
サレヒュトも少し
照れ笑いを浮かべる。

似た者同士と言ってしまえば簡単だが、
それだけでは無い何か
お互いを深いところで通じているような
繋がりを感じていたのかもしれない。

『それでサレフ、
良かったら中も見せて貰えない
だろうか?。』

『中?。
操縦室周りか?。』

『ええ、其処もですが
もっと仕組みの中枢を見てみたい。』

『核の部分か。

一つ条件が有る。』

『何です?。』

『見た後、アドバイスをくれる事と
慧人の甲冑も見せて貰えないかな。
頼むよ。』

サレヒュトには珍しく
真剣に願う鋭い姿勢が感じられる。
大雑把な人柄だとは感じられない
低姿勢でだ。

『分かりました。
自分の機体もお見せしましょう。

そしてアドバイスも差し上げます。
しかし自分如きが物申せるかどうか。』

『いや、遠目でチラッと見ただけで
あの甲冑の凄さは分かったからな。

是非に頼むぜ。』

(なんたって、
従者と兄ちゃんが降りた後、
消えやがったんだからよ。

魔法装備も強烈なヤツが
設われてる証拠じゃねぇか。

とんでもねぇ代物に違いねぇよ。) 

サレヒュトはこの約束こそが
一番取り付けたかったもの。

その為に自分の甲冑を見せる等と言う提案に
打って出たのだ。
しかし顔にしめしめ等と言う不遜な色を滲ませる
不徳は犯さなかった。

『これが…………。』

(随分煮詰められたシステムだ。
こんなにシンプルで効率の良い…。

だが、せっかくのシステムも
コアの出力不足とそれに…
ココだな出力不足のせいで
プラーナが通っていない部分。

なるほどな…。
教えて差し上げるべきだろうな。)

『此れを設計した人は誰です?。』

『俺の育ての親だ。
名はイプシス。
だが俺だって拙いなりにかなり
手伝ったんだぜ。』

『中枢部に対して何か言って
いませんでしたか?。』

『えーと………。
そう言やあ…

『『時期が来たりしならば
真の心を獲、
無限にも思える力
お前の望みと共に
宇宙翔る(そらかける)魂の輝き。』』

だったかな…。
ジジイが唱えてやがったような。

なんかヒントになるか?。』

慧人はその呪文にも似た言葉を
眼を閉じ静かに自身の
王龍真瑰(おう りゅうしんかい)へ問う。

(この言葉は彼の一番最初に
刻まれた記憶…。

そうだ。)

『サレフ。
自分の甲冑の中枢を見て貰えないだろうか。

おそらく貴方なら見るだけで
言葉の意味を理解出来ると思うから。』

慧人の目は真剣な
そして、一つの光明を映していたのだった。

『有り難え!。
願ってもないぜ

しかし慧人、
お前の甲冑は何処に隠してある?。

どんな魔法で隠してあるんだ?。』

『魔法…!。

そうですね、今見せましょう。』

慧人の王龍真瑰が薄っすらと輝く。
迩椰のスキル ルーム。空間を自由に操り
現在軸時空とは別の空間(亜空間)へ接続
もしくは切り取り其処へ物を格納したり
利用したり出来る。
それを応用して作った空間を
あらかじめ慧人の龍真瑰へ登録する事により
使用可能としている。

今、そのルームより
ネイ シーティス スプレマシーを
呼び戻す。

しかし、まだステルス効果のまま。
姿を現わす前のまま。

ガレージのミレイノ サフィニアが鎮座する
向かいの空き空間にふわっと風が舞起きる。
ステルスを解除し
深い緋色の輝きを纏う
龍の姿を模す
慧人の武神が舞い降りた。

『おおおおっ!。
コイツが………。
慧人の………甲冑。

緋い龍の神…。』

ミレイノ サフィニアに比べ
その機体はかなりの細身。
しかし、サレヒュトには
その機体が内に秘める能力を
性能をある程度予測するだけの
経験と知識があったのだった。

『スゲェ…。
聞かずとも中を確かめる事無くとも。

解る。コイツの凄さが。

ビリビリ伝って来るぜ。
恐ろし程の力がよ。』

『サレフ、
まず操縦室 コクピットを
見て下さい。』

片膝をつく乗降姿勢の
ネイ シーティス スプレマシーの
コクピット脇から
トラクションコントロール光素子が放たれ
サレヒュトと慧人を
コクピット内へと光牽引して行く。

『どわっ!。
うおっ!浮いてやがる。

これが………。

何にもね…ほわっ!。』

二人をコクピット内に飲み込むと
ハッチが閉まり
一瞬にして室内をゲル化シルが満たす。
そして透過視型バーチャルコンソールが
立ち上がるとシステム情報が
二人の視覚野へ直接流れ込むのだった。

『おおーっ。
こいつは…。』

(ネイ、リンクをサレヒュトにも
送ってくれるか?。)

(了解ですマスター。)

慧人が思考にて
ネイに命令を下す。

『そうか…。
そう言う事なのか。

俺にも分かる。
全て理解した。』

『サレフ理解して頂けましたか。』

『ああ。
そして言わせて貰おう もう一度。

慧人、俺はお前を歓迎するぜ。

この出会に最大の感謝を。』

サレヒュトには似つかわしくない 
畏まった態度で
深く頭を下げ静かに落ち着いた面持ちで
もう一度慧人との出会いを噛み締めるのだった。
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