リュウのケイトウ

きでひら弓

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リュウのケイトウ ミザリテ 1 始まりの足音

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仕事が嫌いだ
動いている時はまだいい
そこに至るまで、仕事を始めるまで…
まったく苦痛だ

例えば毎日決まった事を決まった時間に
繰り返す仕事だとする。
そうすると、だんだん機械的になり
つまらなくなる
つまらなくなると少々の違和感が
訪れた時、もうそこには居られないストレスが
蓄積されており
膨らみきった風船の如く破裂する。

ならば、朝、仕事場へ出向くまで
今日の成り行きがハッキリしない仕事は
どうだろう?
大雑把にはする事は分かっている
配達だ   そう、いわゆる宅配と言うヤツだ。
だが荷物の量は朝、仕事場へ出向くまでは
分からない。
荷物の量が少ない
ラッキーか?
うーん これは暇を持て余す事になりそうだ
ならば多かったら
今度は全部配達出来るか分からないぞ
これは大変な事になる
慌てれば事故のリスクが増え
落ち着いて行動するにしても
余裕は無い

適量、適度はかなりレアなケースだ
それを考えるだけでストレスが溜まる

上司は言う
『君がもっと上達して速く配れるように
なればいいんだよ  ねぇそうだろう?。』

そりゃそうだろうが
じゃあどこまで上達して速くなればいいんだ?。
ある先輩が言った
1時間に20個配れるようになれば
大したもんだ  と

オレの今の実力は1時間に
最高で15個くらいか
精神と体力をフルブーストして18個
それにラッキーが重なれば
なんとか20個…
無理だコイツは骨が折れる
精神も折れる 

そして、今日がそのフルブーストを使わざるを
得ない日
オレは雑念を一切断ち切り
最高の効率と最大の成果を模索しながら
車を懸命に走らせていた
しかし、注意は怠らない
万一事故でも起こせばその頑張りは
水の泡だからだ

えーと次はカトウさんの家、
その後そこの角を曲がってその先が
イノウエさんの家だな
その後ハイツ キタムラか
ヨシ!なんとかなりそうだぞ
だんだん気持ちがハイになり
脳内麻薬成分がドバドバ出ていそう
これはイケル!次次次次次っ!…………………

ん?
☆♥︎○▽$%€✖️☆○=〒*#※\…

いかん一瞬トランスに入っちまったのか
マズイマズイ、オレはヤバイ人格じゃないんだ
おっとココだ最後の目的の家…

日も沈みかけた夕暮れの  そう
綺麗な夕焼け雲が…なんか季節外れだな
脳裏に一瞬、逢魔が刻と言う不吉な
そして好奇心を掻き立てる一説を
思い浮かべた

あれ?こんな建物、いや
こんな雰囲気の場所だったか?
表札は…合ってる
新流〈しんる〉さんのお宅だ
えーとこちらへのお届け物はこれだ
小さな箱が入った封筒
貼り付ける伝票の方が大きくて
封筒からはみ出して貼られている
厚みは1㎝程か。

ピンポーン!〈実際には例のファミャの曲が流れてる〉
インターホンのカメラに荷物を映すように
かまえてしばし待つ。
『どうぞ、お入りください。』
『ノラ猫宅配便です。』
あれ?被った。
まだこちらの素性を喋っても居ないのに…
まあいいか、留守でなく通してくれると言うなら
話しも早い。
インターホンの声は若い女性の物に聞こえた。
2秒後、強固な設えの大き目のシャッターの
脇にある通用口のロックが外れる音がした。
ピーチチチ…カチッ!
『失礼しまーす。』
え?真っ暗な  あっ!
高さ3メールは在ろうかと言う通路の
天井両脇と床面のセンターを
関節光で照らす灯が入り口から
奥へ向かって発光し、その長大なトンネル?を
浮き上がらせて行く。

うわ、なんだこの家は
サンバーダードの秘密基地にでもなっているのか?。
子供の頃に見た空想科学人形劇を思い出す。
カツコツと靴音を響かせてしばらく
奥へと進む。
配達に来た事を一瞬忘れ妙な好奇心を掻き立てられるがそんな興味をへし折るべく
頬を撫でるような少し冷ややかな風が
何処かから流れて来る。
何か恐ろしげな事が起こる様な前触れに
しかし、足取りはしっかりと。
30m程進んだところで通路脇の
扉がLED光のグリーン色に浮かび上がる。

ここに入れと言う事なのか…
扉の正面に立ちドアノブを探す
ノブは見当たらず自動扉に有るような
スイッチの類いも付いていないようだ。

カチ、チー キュイーン
何かの装置が作動する様な音がする
扉がこちら側にせり出すようにロックが外れ
隙間からスモークが漏れだす

カン プシューーーーッ
スモークの勢いが増す!!

わっ!!!!
背後から両肩を思いっきり叩かれて驚いて振り返る!!
振り向いた頰を何か鋭利な物が突き刺さる感覚!
『驚きましたかなぁ
ワシはこっちです  ワハハハハハハ
ゲホン ゲホン』
初老の紳士がオレの肩口に手を乗せ
振り向いた頰にその指が食い込む
よくあるあのイタズラをしていた。
あまりのマヌケ事態に二度見して良く見ると初老の紳士の手ではなく
マジックハンドで紳士の横に立つ
メイドさんがオレの頰を突いていた。
何しとるんじゃテメェ等と言う気持ちを
抑え込んでビジネスライクに引きつり笑顔を
貼り付けてオレが聞く
『一体何をなさっていやがるんですか
貴方様方は?。』
『なに、ちょっとした余興じゃよ。』
初老の紳士が一言だけのべて
身体の向きを変えるとツカツカ歩き出した。
まさか、ただオレを脅かすためだけにこの
大掛かりなギミックを用意したのか…?
オレのこんな些細な疑問は解消されないままに
お供のメイドさんがオレに一礼して
『此方へどうぞ。』と
初老の紳士の歩く方へと手振りで
促し、オレのすぐ隣に付いて歩き出した。
さっきの扉が気になりもう一度振り返ろうと
意識をそちらに向けた時、
耳鳴りのような感覚に襲われる。
『我が相棒に選ばれた者よ。
これからよろしく頼む。』
何の意味か分からなかったが
嫌な気分はしなかった。
そしてそんな普通にあり得ない感覚を
簡単に受け入れてしまっている事に
その時は何の疑問も持たなかったのだった。
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