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リュウのケイトウ ミザリテ 2 オレという存在
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初老の紳士の後を1メートルほど間隔を空け
オレとその方わらのメイドさんが続く。
耳鳴りの声をすんなり受け入れたオレは
好奇心や恐怖心を一切忘れ
いや、感じなくなっていた。
それは必然をはらむ偶然。
偶然は無いのか…
この小包をオレが運ぶと決まった時から
その前からだったのかもしれない…
通路をしばし、おかしな考察を
交えながら歩いていると
古風な設え〈しつらえ〉のドアの前へと
辿り着く。
初老の紳士はドアノブに手を触れなかった。
しかし、ドアは静かに開く
『入ってくれたまえ来出平〈きでひら〉君』
オレは言われるがままその古風な扉の奥へと
足を運んだ。まるで何かに操られるか如く。。
『そこへ掛けてくれたまえ
気持ちを楽に な。』
少しひんやりとした高級な革張りのソファーは
身体を預けると適度な弾力と沈み込みで
雲に身を預けているのかと思う程の心地よさで
今までにないリラックス効果をもたらす。
そして、オレの思考が急に鮮明さをもち
クリアになって行くのが目の前の画像を
よりはっきりと認識すると同時におこり
それは、身体の中の全神経が活性化しているものと理解出来た。
『今日はご苦労様でした。
配達に来てもらったのは事のついで。
君を此処へ呼んだのはある頼みを聞いて欲しかったからなのだ。
その前に少しあらましを知って欲しい。』
初老の紳士が指をならす。
パチン!と乾いた小気味の良い音と共に
頭の中へあるイメージが流れ込んで来る。
鮮明な意識のまま催眠術にかかったかの様に
情報が脳から全身へ駆け巡る感覚。
龍真瑰〈りゅうしんかい〉
それは全知を孕む受け継がれし
思考と経験の蓄積
そして、異能への輝き。
この龍真瑰を巡る様々なドラマ
異界の物語いや、
異界に実際に起こった過去と
現在に至るまで。
オレはこんなSF紛い〈まがい〉の
出来事をすんなり事実だと認識し
情報を受け入れた分、更に
好奇心、理解力が増しているのを実感する。
異界の他に並行世界なる物も存在し
そこには別の人生を送るオレも居た。
そこのオレは酒が弱かったようだ…
〈リュウのケイトウ スラッシュ〉
"オマエノ イノチ
モライ ウケル"
フフフフフフフ………。
『うっわっ!
なんだっ!…………。』
夢?!………
夢か………。
闇の中に真っ赤な…
血のイメージ。
しかし、
あまり恐ろし気では無かったな。
なんて言えばいいのか。
ビジュアルで言えばホラーなのに
なんだろ?
どこか懐かしさ?!
違うな…
温かさ………のような
これじゃ僕がサイコな人間みたいぢゃないか。
至って普通で
しかも、取り立て特技も無い。
ぐぬぬっ!。
特技なら有る!。
なんだ、えーと…
うん、直ぐ思いつかん!!。
自分の思考に自分でツッコミを
入れたりする。
アホか。
どわっ!それよりココ。
ゴミ置場ぢゃないカ……。
呑み過ぎだ。
と、取り敢えず家に帰ろう。
何時間このゴミ置場に
ぶっ倒れていたんだろう。
あーダメだ思考が揺らぐ。
まだ…
なんとか 歩ける な。
お兄ちゃん足元、気を付けて。
『ん、ありがと
れんれん らいりょうぶ てすっ!。』
千鳥足でふらふらと進む。
何かに支えられる様にゆっくりと。
ただただ家への帰路だけを考え。
吐き気をこらえ途中で眠って
しまわぬ様に。
他の事は一切、思考出来てはいない。
玄関のカギ。えーとポケットの
どこだ?。
『あれ?。ありがと開けてくれたんだ。
えーと…まあいいや。』
この子は幼馴染の…
いや違うな。
えーと親戚の…でもないか。
妹の…違うな。
よく一緒に遊んだよな。
たしか…。
まともに意識が保っていられず
気持ち良さそうな布団にダイブする。
こんな時でも服は無意識に自動で
脱ぎ捨てている。
ぼんやりとした意識に
懐かしい想い出が蘇る。
そして夢に見る。
『お兄ちゃん。お兄ちゃん。』
『揺するなよ。分かってるって。
何して遊ぶ?。』
『木登りしようよ。』
『おまえじゃ無理だよ。
まだ登れないよ。』
『やだやだ登るの。チズも一緒に登る。
とおく見えるんでしょ?。
お家より、公園より
もっともっと とおく。』
『うん、見えるよ。
ココからならずーっと遠く
向こうのもっと向こうまで
見えるよ。』
『ねぇ登るの手伝ってよ。
お兄ちゃんお願い。
チズも とおくまで見たいよ。』
『チッ!しょうがねーな。
手伝ってやるけど
一人の時は絶対に登るなよ。
約束するか?。』
『約束する。
どーせ1人じゃ登れないもん。』
『そーだな。
チーズじゃまだ1人は無理だもんな。
よし、簡単に登れる方法
教えてやる。ちょっと待ってな。』
『うん。』
僕は剪定された最初の太い枝の
切り残しまでチズでも
届くように太めの枝クズを
幹のくぼみに立て掛けた。
『ほら、ココに足掛けて。
手はそのくぼみ。
そして次はココに足。』
『こう?。』
『そうだ。
上手いぞ次はそこに足だ。』
僕は下からチズのアシストを止め
幹の反対側より高難度の登り方で
スルスルと一段上の枝に上がり
今度は上からチズの身体を
引き上げにかかった。
『よいしょっ!どーだっ!。』
『わあっ!登れた!。
しゅごいっ!。』
『あっはははははは………。
しゅごいってなんだよ。
変なの。
でも、登れたな。
しかし、まだ終点じゃないぜ。
ココからは簡単だ。ほら。』
最初の枝に取り付いてしまえば
後は簡単。
二段目の枝からは
間隔が短いから誰でも行ける。
『チーズ。下は見るなよ。
ほら手かせ。よっと。』
『んっ!。ありがと。
下 見ない様にする。』
『ココが終点だ。
ほら。見てみな。』
『わぁーーーっ!
すごい。すごいね。
あっちの方まで見えるぅ。』
木登りで上がれるこの場所を僕は基地と呼び
木の植わった少し先が崖になっている性もあり
幼心には冒険心と好奇心をくすぐる
素晴らしい眺め
そう、街並みを遥か高空から眺めているかのような 子供心には世界の王にでもなったような
そんな優越感に浸れる場所だったのだ。
『だろう。
危ないからココ持ってろ。
絶対離すなよ。』
僕のシャツの裾に
チズを捕まらせて
反対の手はしっかりと繋いでやる。
『うん。
絶対に離さない。』
僕はその言葉を聞くと
少しだけ大人びた気分で
なんだかこそばゆさの様な物を感じ
更に有頂天になるのを覚えた。
『女の子でココに登れたのは
チーズが一号じゃないかな?。
スゲーよチーズ。
やったな!!。』
僕は嬉しくなって
チズの偉業を讃えたくなったのだ。
『えへへへへへ。
お兄ちゃんと一緒が良かったから。
ココに一緒に登りたかったの。
だってもう…………。』
チズの言葉が全て終わらぬうちに
木の下から怒号が掛けられた。
『おいっ!お前らっ!。
勝手に俺の基地に登るんじゃねーっ!。
しかも、女なんて登らせるんじゃねーよっ!。
クサくなるだろ。
女クセーーっ!。』
1人の男の子がこっちに向かって
叫んでいる。
僕と同い年か一つ上か。
僕も少しカッとなって
言い返してやる。
『誰がお前の基地なんて決めたんだよ。
勝手に自分の基地なんて言うな。
ふざけんなっ!。』
『なんだと女とイチャイチャしやがって。
この男の腐ったヤツ。
軟弱ヤローめっ!。』
『イチャイチャなんてしてねーよ。
バカじゃねーの。
くやしかったら登ってこいっ!。』
『そーよ。
登ってみなよ。
高いからあんたなんか無理でしょ?。』
チズまで言い争いに加わって来た。
『登ってやるよっ!。
待ってろよ。
そこから逃げるんじゃねーぞっ。』
目を吊り上げる形相で
僕たちを睨み付けると
イチャモン野朗が
難しい方の登り口の方から
上がって来ようとする。
僕は上に来られると
不利になる事を覚り〈さとり〉
上から枝落とし攻撃を
仕掛ける。
(チズも居るんだ
あいつをココに上げる訳にはいかない。)
僕は近くの
折れそうな枝を探しては
下に向けて攻撃を始めた。
細かい木屑や葉っぱも
落としてやる。
『ばかやろうっ!。
落とすんじゃねーっ!。
目に入るじゃねーかっ!。』
目をしばしばさせながら
ヤツは口に入った枝クズを
ペッペとはきながら
登るのを躊躇〈ちゅうちょ〉している。
『やーい。ざまぁ見ろっ!。
登ってこれねぇだろ。バーーーカ。』
いい気味だ。
悪者顔のあんなヤツはきっと弱い者イジメが
したいだけのクソ野朗だ。
この場所へ絶対上げてやるもんか。
ヤツは一度 木の幹を蹴ると
小走りに姿を消した。
『悪は敗れ去ったぜ チーズ。
最後にはやはり正義が勝つのだ。
………なにっ!。』
『お兄ちゃん 大変だ
アイツ仲間を連れて来ちゃったよ。』
ヤツは逃げ帰ったのではなく
近所の友達2人を連れて来た。
3人がかりで包囲しようってのか?!。
『アイツ等が生意気なんだよ。
俺たちの基地へ女を上げたうえに
あんな場所でイチャつきやがって。』
『悪には制裁が必要だな。』
『悪だとっ!。お前等の方が
悪者っぽいくせに何言ってやがる。』
『上で吠えていられるのも今のうちだぜ。
やるぞっ!。』
『おう!。地震の刑だ。』
『地震の刑の恐怖と地獄を味わえっ!。』
ヤツ等3人は木の幹を思いっきり
揺すり出した。
『バカっ!よせ、小さな女の子が
上にいるの見えてるんだろ。
チーズ絶対離すなよ。くっ!。』
マズイ、3人がかりで揺すられたら
流石に辛抱も限界だ少しでも足を滑らせれば
落下して骨折は免れないだろう。
なんせここは一番高い位置。
5m以上はありそうだ。
崖側に落ちればそれどころじゃ済まされない
子供にも分かる それは死の恐怖。
『いやっ!
もうダメ、お兄ちゃんっおちっ…。』
『チズっ!。』
チズが足を滑らせるのを見て
咄嗟に腕の中に抱き込んだ。
しっかりチズを抱えたまま
真っ逆様に2人は落ちる。
(頭から落ちたら死ぬかもしれない。)
チズの頭を庇うようにしっかり
腕の中へ抱え落ちる。
『お兄ちゃんゴメンね。』
『え?。』
首筋に走る痛み。
何だ?。
チズが僕の首筋に噛み付いていた。
どう言う事なんだ?!。
しかしそんな考えをまとめる時間は
残されてはいなかった。
次の瞬間後頭部へ走る激痛と共に
僕は気を失いそのまましばらく
目を覚ます事は無かった。
キッチンの仄暗い照明をバックに
揺らめく様に立ち上る影。
『久しぶりだね。
もう会う事も無いと思っていたのに…
まさかね。
貴方が…
ウフフフフフフフフ…
よろしくね、お兄ちゃんフフッ。』
思いっきり布団から起き上がる。
ガバッ!!。
『夢かよ…
最後ホラー過ぎだろ。
あー頭痛ぇ 二日酔いか あん?!。』
布団をめくった僕の腰の位置に
小さく丸まるように眠る女の子。
誰っ!!。
オレとその方わらのメイドさんが続く。
耳鳴りの声をすんなり受け入れたオレは
好奇心や恐怖心を一切忘れ
いや、感じなくなっていた。
それは必然をはらむ偶然。
偶然は無いのか…
この小包をオレが運ぶと決まった時から
その前からだったのかもしれない…
通路をしばし、おかしな考察を
交えながら歩いていると
古風な設え〈しつらえ〉のドアの前へと
辿り着く。
初老の紳士はドアノブに手を触れなかった。
しかし、ドアは静かに開く
『入ってくれたまえ来出平〈きでひら〉君』
オレは言われるがままその古風な扉の奥へと
足を運んだ。まるで何かに操られるか如く。。
『そこへ掛けてくれたまえ
気持ちを楽に な。』
少しひんやりとした高級な革張りのソファーは
身体を預けると適度な弾力と沈み込みで
雲に身を預けているのかと思う程の心地よさで
今までにないリラックス効果をもたらす。
そして、オレの思考が急に鮮明さをもち
クリアになって行くのが目の前の画像を
よりはっきりと認識すると同時におこり
それは、身体の中の全神経が活性化しているものと理解出来た。
『今日はご苦労様でした。
配達に来てもらったのは事のついで。
君を此処へ呼んだのはある頼みを聞いて欲しかったからなのだ。
その前に少しあらましを知って欲しい。』
初老の紳士が指をならす。
パチン!と乾いた小気味の良い音と共に
頭の中へあるイメージが流れ込んで来る。
鮮明な意識のまま催眠術にかかったかの様に
情報が脳から全身へ駆け巡る感覚。
龍真瑰〈りゅうしんかい〉
それは全知を孕む受け継がれし
思考と経験の蓄積
そして、異能への輝き。
この龍真瑰を巡る様々なドラマ
異界の物語いや、
異界に実際に起こった過去と
現在に至るまで。
オレはこんなSF紛い〈まがい〉の
出来事をすんなり事実だと認識し
情報を受け入れた分、更に
好奇心、理解力が増しているのを実感する。
異界の他に並行世界なる物も存在し
そこには別の人生を送るオレも居た。
そこのオレは酒が弱かったようだ…
〈リュウのケイトウ スラッシュ〉
"オマエノ イノチ
モライ ウケル"
フフフフフフフ………。
『うっわっ!
なんだっ!…………。』
夢?!………
夢か………。
闇の中に真っ赤な…
血のイメージ。
しかし、
あまり恐ろし気では無かったな。
なんて言えばいいのか。
ビジュアルで言えばホラーなのに
なんだろ?
どこか懐かしさ?!
違うな…
温かさ………のような
これじゃ僕がサイコな人間みたいぢゃないか。
至って普通で
しかも、取り立て特技も無い。
ぐぬぬっ!。
特技なら有る!。
なんだ、えーと…
うん、直ぐ思いつかん!!。
自分の思考に自分でツッコミを
入れたりする。
アホか。
どわっ!それよりココ。
ゴミ置場ぢゃないカ……。
呑み過ぎだ。
と、取り敢えず家に帰ろう。
何時間このゴミ置場に
ぶっ倒れていたんだろう。
あーダメだ思考が揺らぐ。
まだ…
なんとか 歩ける な。
お兄ちゃん足元、気を付けて。
『ん、ありがと
れんれん らいりょうぶ てすっ!。』
千鳥足でふらふらと進む。
何かに支えられる様にゆっくりと。
ただただ家への帰路だけを考え。
吐き気をこらえ途中で眠って
しまわぬ様に。
他の事は一切、思考出来てはいない。
玄関のカギ。えーとポケットの
どこだ?。
『あれ?。ありがと開けてくれたんだ。
えーと…まあいいや。』
この子は幼馴染の…
いや違うな。
えーと親戚の…でもないか。
妹の…違うな。
よく一緒に遊んだよな。
たしか…。
まともに意識が保っていられず
気持ち良さそうな布団にダイブする。
こんな時でも服は無意識に自動で
脱ぎ捨てている。
ぼんやりとした意識に
懐かしい想い出が蘇る。
そして夢に見る。
『お兄ちゃん。お兄ちゃん。』
『揺するなよ。分かってるって。
何して遊ぶ?。』
『木登りしようよ。』
『おまえじゃ無理だよ。
まだ登れないよ。』
『やだやだ登るの。チズも一緒に登る。
とおく見えるんでしょ?。
お家より、公園より
もっともっと とおく。』
『うん、見えるよ。
ココからならずーっと遠く
向こうのもっと向こうまで
見えるよ。』
『ねぇ登るの手伝ってよ。
お兄ちゃんお願い。
チズも とおくまで見たいよ。』
『チッ!しょうがねーな。
手伝ってやるけど
一人の時は絶対に登るなよ。
約束するか?。』
『約束する。
どーせ1人じゃ登れないもん。』
『そーだな。
チーズじゃまだ1人は無理だもんな。
よし、簡単に登れる方法
教えてやる。ちょっと待ってな。』
『うん。』
僕は剪定された最初の太い枝の
切り残しまでチズでも
届くように太めの枝クズを
幹のくぼみに立て掛けた。
『ほら、ココに足掛けて。
手はそのくぼみ。
そして次はココに足。』
『こう?。』
『そうだ。
上手いぞ次はそこに足だ。』
僕は下からチズのアシストを止め
幹の反対側より高難度の登り方で
スルスルと一段上の枝に上がり
今度は上からチズの身体を
引き上げにかかった。
『よいしょっ!どーだっ!。』
『わあっ!登れた!。
しゅごいっ!。』
『あっはははははは………。
しゅごいってなんだよ。
変なの。
でも、登れたな。
しかし、まだ終点じゃないぜ。
ココからは簡単だ。ほら。』
最初の枝に取り付いてしまえば
後は簡単。
二段目の枝からは
間隔が短いから誰でも行ける。
『チーズ。下は見るなよ。
ほら手かせ。よっと。』
『んっ!。ありがと。
下 見ない様にする。』
『ココが終点だ。
ほら。見てみな。』
『わぁーーーっ!
すごい。すごいね。
あっちの方まで見えるぅ。』
木登りで上がれるこの場所を僕は基地と呼び
木の植わった少し先が崖になっている性もあり
幼心には冒険心と好奇心をくすぐる
素晴らしい眺め
そう、街並みを遥か高空から眺めているかのような 子供心には世界の王にでもなったような
そんな優越感に浸れる場所だったのだ。
『だろう。
危ないからココ持ってろ。
絶対離すなよ。』
僕のシャツの裾に
チズを捕まらせて
反対の手はしっかりと繋いでやる。
『うん。
絶対に離さない。』
僕はその言葉を聞くと
少しだけ大人びた気分で
なんだかこそばゆさの様な物を感じ
更に有頂天になるのを覚えた。
『女の子でココに登れたのは
チーズが一号じゃないかな?。
スゲーよチーズ。
やったな!!。』
僕は嬉しくなって
チズの偉業を讃えたくなったのだ。
『えへへへへへ。
お兄ちゃんと一緒が良かったから。
ココに一緒に登りたかったの。
だってもう…………。』
チズの言葉が全て終わらぬうちに
木の下から怒号が掛けられた。
『おいっ!お前らっ!。
勝手に俺の基地に登るんじゃねーっ!。
しかも、女なんて登らせるんじゃねーよっ!。
クサくなるだろ。
女クセーーっ!。』
1人の男の子がこっちに向かって
叫んでいる。
僕と同い年か一つ上か。
僕も少しカッとなって
言い返してやる。
『誰がお前の基地なんて決めたんだよ。
勝手に自分の基地なんて言うな。
ふざけんなっ!。』
『なんだと女とイチャイチャしやがって。
この男の腐ったヤツ。
軟弱ヤローめっ!。』
『イチャイチャなんてしてねーよ。
バカじゃねーの。
くやしかったら登ってこいっ!。』
『そーよ。
登ってみなよ。
高いからあんたなんか無理でしょ?。』
チズまで言い争いに加わって来た。
『登ってやるよっ!。
待ってろよ。
そこから逃げるんじゃねーぞっ。』
目を吊り上げる形相で
僕たちを睨み付けると
イチャモン野朗が
難しい方の登り口の方から
上がって来ようとする。
僕は上に来られると
不利になる事を覚り〈さとり〉
上から枝落とし攻撃を
仕掛ける。
(チズも居るんだ
あいつをココに上げる訳にはいかない。)
僕は近くの
折れそうな枝を探しては
下に向けて攻撃を始めた。
細かい木屑や葉っぱも
落としてやる。
『ばかやろうっ!。
落とすんじゃねーっ!。
目に入るじゃねーかっ!。』
目をしばしばさせながら
ヤツは口に入った枝クズを
ペッペとはきながら
登るのを躊躇〈ちゅうちょ〉している。
『やーい。ざまぁ見ろっ!。
登ってこれねぇだろ。バーーーカ。』
いい気味だ。
悪者顔のあんなヤツはきっと弱い者イジメが
したいだけのクソ野朗だ。
この場所へ絶対上げてやるもんか。
ヤツは一度 木の幹を蹴ると
小走りに姿を消した。
『悪は敗れ去ったぜ チーズ。
最後にはやはり正義が勝つのだ。
………なにっ!。』
『お兄ちゃん 大変だ
アイツ仲間を連れて来ちゃったよ。』
ヤツは逃げ帰ったのではなく
近所の友達2人を連れて来た。
3人がかりで包囲しようってのか?!。
『アイツ等が生意気なんだよ。
俺たちの基地へ女を上げたうえに
あんな場所でイチャつきやがって。』
『悪には制裁が必要だな。』
『悪だとっ!。お前等の方が
悪者っぽいくせに何言ってやがる。』
『上で吠えていられるのも今のうちだぜ。
やるぞっ!。』
『おう!。地震の刑だ。』
『地震の刑の恐怖と地獄を味わえっ!。』
ヤツ等3人は木の幹を思いっきり
揺すり出した。
『バカっ!よせ、小さな女の子が
上にいるの見えてるんだろ。
チーズ絶対離すなよ。くっ!。』
マズイ、3人がかりで揺すられたら
流石に辛抱も限界だ少しでも足を滑らせれば
落下して骨折は免れないだろう。
なんせここは一番高い位置。
5m以上はありそうだ。
崖側に落ちればそれどころじゃ済まされない
子供にも分かる それは死の恐怖。
『いやっ!
もうダメ、お兄ちゃんっおちっ…。』
『チズっ!。』
チズが足を滑らせるのを見て
咄嗟に腕の中に抱き込んだ。
しっかりチズを抱えたまま
真っ逆様に2人は落ちる。
(頭から落ちたら死ぬかもしれない。)
チズの頭を庇うようにしっかり
腕の中へ抱え落ちる。
『お兄ちゃんゴメンね。』
『え?。』
首筋に走る痛み。
何だ?。
チズが僕の首筋に噛み付いていた。
どう言う事なんだ?!。
しかしそんな考えをまとめる時間は
残されてはいなかった。
次の瞬間後頭部へ走る激痛と共に
僕は気を失いそのまましばらく
目を覚ます事は無かった。
キッチンの仄暗い照明をバックに
揺らめく様に立ち上る影。
『久しぶりだね。
もう会う事も無いと思っていたのに…
まさかね。
貴方が…
ウフフフフフフフフ…
よろしくね、お兄ちゃんフフッ。』
思いっきり布団から起き上がる。
ガバッ!!。
『夢かよ…
最後ホラー過ぎだろ。
あー頭痛ぇ 二日酔いか あん?!。』
布団をめくった僕の腰の位置に
小さく丸まるように眠る女の子。
誰っ!!。
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