リュウのケイトウ

きでひら弓

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49大会へ向け8心カヨウ

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慧人は
夏の特訓相手となり
機動、うち込みの
タイミングを何度も
根気良く説いて行く。

『そうだ。
     撃ち込みはなかなか
   良くなって来ている。
     タイミングも
   まあまあだが
     筋は悪くない。

   …………。』

『もう一度
         お願いします。』

(お兄ちゃんは
   ああ言ってくれてるけど
 あれじゃきっと
    雅美ちゃんに
  通用しない。

私ってやっぱり、
   雅美ちゃんの言ってた
通り、
これまで
   甘い考えで武道を
      やって来たのかな
  …………。

ダメだ。
   こんな風に
迷ってるからダメなんだ。
しっかりしないと。)

夏は慧人の教えを
一所懸命に飲み込もうと
するが、
イメージ通りに
なかなか上手く行かず、
焦りもあって
今一歩の部分が
どうしても完成しない。
次第に迷いも出て来るが
その気持ちに
負けない様
精神を今一度集中する。

(夏、
   迷って己(おのれ)に
 負けるな。

    お前の武道への
  気持ち、こだわりを
   雅美に伝える為にも。)

何度も繰り返すうち
思考が麻痺して
何が正解なのか
次第に解らなくなって
しまう夏。
慧人も夏のそんな
ジレンマに歯痒さを
覚えてしまう。

おそらくこのままでは、
見えない泥沼にハマり
込んでしまいそうに
感じられた。

業を煮やした訳では無いが
慧人は一つのヒントを
夏に伝える決心をする。

それは彼の甘さ
から来る物か…。

それとも……。

『夏
     すまないが
   一度カムイから
  降りて来てくれないか。
  インターバルを
     入れて
ミーティングしたい事が
     ある。』

『分かりました。
       演習場の
    向こう端で
        良いですか?。』

『ああ。
      あそこの木陰が良い。
   其処にしよう。』
  
二人は皆が練習している
場所から、だいぶ離れた
演習場の端にある
幾つかの木陰の側に
カムイを乗り付けると
乗降姿勢に操作し
その場所に降り立った。
 
『夏、
    其処の木陰で
   少し休憩しよう。』

『はい。』
二人は木陰に腰を降ろす。
慧人は胡座を崩し
片膝立てのスタイル。
夏は正座を崩した様な
いわゆる女の子座りで。

『夏、
     もうカムイ乗りの
   一員として、
     メインシステム
   ε(エプシロン)の
      秘密の一つを
   教えておこうかと思う。』

『はい。
    大事な事なんですね?。』

『そうだ。
     大会に向けても
これからカムイを扱う上でも
     大切な事なんだ。』

慧人はここまで語ると
一呼吸置く様に
しばらく辺りに視線を移し
もう一度、夏に向き直り
ゆっくりと咀嚼するかの如く
言葉を紡いで行く。

『カムイは
     魔法使いにとっての
   杖の様な存在だと
     話したと思う。』

『はい。
   お兄ちゃんは私に
     そう教えてくれました。
   なんとなく、
そう言う事なんだなと理解
   しました。』

『そうか。
    ……………
それともう一つあってな、
     カムイは思考する。

  "意志を持っている"んだ。

ただの杖じゃない。
  考える事の出来る
 "意志ある杖"なんだ。』

ここまでを聞かされて
頭の中には知識、
言葉として入って
来ているのに、
何か焦点を結ばぬボヤけた
画像の様にハッキリと
捉えられぬ夏は
目を見開いたまま
動けずポカンとして
慧人の優し気に語る
表情だけを瞳に
映している。

慧人は
夢に浮かされた様に
揺らぎ頷く夏を
視界に捉えていたが
耳には届いている物として
更に話しを続ける。

『意志、
    思考を持つが故に、
  パイロットの
    考え、気持ちも
   読み取ってしまうんだ。

迷い、疑念、揺らぎ、焦りも
  読み取り
同じ様に思考してしまう。
   失敗を恐れてしまえば
それは疑念に変わり
   成功への考え方も
道をも閉ざしてしまうんだ。』

其処まで聞かされ
はっと
目を見開く夏。
迷いと焦りから
上手くタイミングを
取る事が出来ないでいた
先程までの感情と
映像が蘇って来る。

夏は思ってしまう。

"私には出来ないのかも
       しれない"     と。

負の感情が湧き上がり、
自信と今までの
頑張りが無情に
飛散してしまいそうになる。

慧人は
夏の瞳より
揺らぎ、移ろいを
感じ取り
このままに
して置けない 
危機感を覚える。

『夏、
    俺の掌の上に
   掌を重ねてくれ。』

慧人は両手の掌を
上向きに広げ
夏の掌を重ねる様
柔らかい視線と
口調でゆっくりと伝える。

『こう?。
        かな。』

『ああ。
      それでいい。』

掌の上に重ねられた
夏の掌の指先を
柔らかく
優しく握る。

夏は
慧人の瞳から
視線を外せなく
なっている。
呼吸が
無意識に早まる。
心臓の鼓動が
掌を伝って
届いてしまう様な
錯覚。

『夏、
    目を閉じて。』

慧人から
紡がれる言葉を
何処か
熱に浮かされている
ように
聞き入れるも
虚ろに。

ゆっくり瞼を
閉ざす。

鼓動は早過ぎて
もはや、
意識の中に
留まれない程。

顔に熱を帯びているのを
瞼を閉じる事で
更に自覚してしまう。

瞼を閉じると
少し顎を上向きに
持ち上げて
何かを
待つ様に
息を潜める。

熱を帯びる
夏の
額に
温もりが伝って来る。

夏の額には
慧人の額が
重ねられていた。

刹那、
慧人から
幾つかのビジョンが
流れ込んで来る。

その中の一つに
先程、
タイミングを
測りあぐねていた
シーンが
成功するビジョンと
共に映し出されていた。

『夏、
      伝わったか?。』

慧人は
一言だけ
優しく紡ぐ。

『はい。

    今、ハッキリと
       伝わりました。』

夏はニッコリと 
微笑むと
慧人の掌をしっかりと
握りしめた。

笑み溢れる
目尻には少しの涙と
冷めきらぬ
熱が
夏の喜びを
ありありと
現していたのだった。
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