リュウのケイトウ

きでひら弓

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72大会14違和感

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三番手の試合開始前、
第三ハンガー内で
出番を待つ千陽。

カムイのコクピット内で
バーチャルコンソールにて
装備の最終チェックの自己診断結果を
モニターしていた。

自己診断結果は想定通り
各種兵装共に問題は無かった。
しかし、ほんの少し違和感を
覚える部分が有ったのだ。

(何だろう?。
別に取り立てて問題は無いんだよね。
でも、何かしっくり来ない。

何時もより命令入力からの
処理が遅く感じる。

気のせいかな?。

自己診断も少し時間が
掛かったような……。

まあ、でも問題にする程では
無いよね。

私が疲れてるからとか?。

それは有るかもしれないな。

いけない、
試合前に雑念が多いと
出鼻で挫かれちゃうよ。

しっかりしなきゃ。)

千陽は懸念を拭い捨て
気合いを入れ直す為に
自身の頬を
パチパチと掌で何度か叩き
集中を取り戻すように、
しっかりモニターを
見据えるのだった。

脳の視覚野に
直接、映像を結ぶ
このシステムに置いて
今の行動は実際的には
あまり意味の無い行為では
あるのだが…。

6号機からの秘匿通信が入り
回線を開くように
アラームが点滅する。

千陽は素直に
回線を開くと固定状態で
ロックを掛けた。

『千陽、もうすぐ出番だな。
この試合は"仕事"とは
無関係なんだよな?。』

慧人は千陽に
試合運びに自分の
私情を持ち込むのか
どうか尋ねるべく
秘匿回線で通信を
入れて来たのだ。

『そうよ。
私情は挟まないわ。

其処は心配しなくても大丈夫よ。』

『そうか。
せっかく伸び伸びカムイを
動かせるんだ。

つまらない都合で
使いこなせなかったら
面白くないだろうと思ってな。』

『そんな心配をしていたの?。
………………………………。

全く、お人好しなの?。
其れとも私なんか数に入って
いないとか?。』

千陽はうがった見方の
答えを慧人に返す。

『そう言う意味じゃない。

普通に試合が出来るのであれば
問題無い。

存分に戦ってくれ。

それだけだ。』

慧人は千陽の曲解に対し
おかしな含みは無い事を伝える。

『了解よ。
ありがとう、頑張るわ。

回線切るわね。』

慧人の素直過ぎる物言いに
少し吹き出してしまいそうでは
有ったのだが、
なんとか堪え
何の含みも持たせず
簡単に礼を述べると
秘匿回線を遮断するのであった。
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