異世界宿屋の住み込み従業員

熊ごろう

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216話 「予想以上にお高い」

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早朝、新雪が積もった雪道に二人分の足跡がつけられていく。
足跡の正体は加賀とアイネの二人である、珍しくギルドから連絡がきたので二人でギルドへと向かっているのだ。

「頼んでた物の報告があるらしいね」

「うん、見つかったか現品が手に入ったかどっちかだと思う」

ギルドに行く目的は加賀が以前から頼んでおいた食材の調査結果報告を聞きにいく為だ。
詳細はギルドにいかないとまだ分からないが物が手に入ったもしくは所在が分かったかのどちらかだろうと加賀はあたりをつけていた。

「色々頼んでたみたいだけど、どれの報告なんだろうね」

加賀が依頼していたものは複数ある。
いくつかはすでに入手している為、残りの数は少なくなってきているがそれでも未だそこそこ残っていたりはする。
加賀は顎に指をあて上を見上げ考える仕草を見せるがすぐに手を下ろしアイネの問いに答える。

「どれが来てもいいかなー、一つだけでも手に入ればかなりメニュー増えるし……」

「そう、楽しみね」

どれがきてもメニューは増える。それにどれもが加賀にとってはすごく欲しいものだ、どれからでも良いから早く入手したいと言うのが本当の所だろう。

ギルドに近づくにつれて人通りは多くなる、ギルドの扉を潜ればそこは早朝にも関わらず人でごった返していた。

「朝なのに多いー」

「多いね」

だがその大半は探索者達であり、彼らと違う用事の加賀達は窓口が異なるのでさほど待たされる事なく二人の順番が来るだろう。
等と話しながら二人は整理券を受け取り一先ずテーブルへと向かうのであった。




「八木八木、ちょっといい?」

ギルドで用事を済ませた二人はそのまま宿へと戻る。
アイネは厨房に、加賀は八木に話したい事が出来たので厨房ではなく八木の部屋へと向かっていた。
扉を軽くノックし声を掛けると中から八木の反応がある。どうやら寝てはいなかった様だ。

「む……何、内緒の話?」

「ちょっとねー相談したい事があって」

「ふむ。とりあえず中はいんなー」

ガチャリと扉を開け顔をのぞかせた八木であるが加賀の改まった様子を見て首をかしげる。
そして廊下で立ち話というのもあれなので部屋の中へと加賀を誘う。

「何か言いづらそうだな。まあなんだ、とりあえず言ってみ?」

「まあ、言いづらい内容ではある……えっとね――」

相談したい事があると言うがどうも言いづらそうにしている加賀を見て話すように促す八木。
加賀は逸らしていた視線を八木へと戻すと、少しの間を置いてぽつりぽつりと話始める。


「――と、言う訳で」

そうして先ほどギルドで聞いてきた話を八木へと伝える加賀。
話を聞いて最初はぽかんとしていた八木であったが話を理解するうちに次第に顔が喜びに満ちて行く。

「まじか。ついに手に入るのか!」

「たぶんね。ついでに香辛料も頼むつもり、カレーも食べたいでしょ?」

「醤油と味噌は? あれも見つかってたりするの?」

「あっちは情報だけあったよ、そのうち手に入ると思う」

加賀が頼んでいた物の内主食である米、それにカレーに必要となる香辛料。そして八木が欲しくてたまらなかった醤油と味噌がそれらが手に入る目途がついたのである。

「おっしゃあ! よくやった加賀ぁ!」

「ボクが見つけたわけじゃーないんだけどねー」

服が破けんばかりに全力でガッツポーズする八木。
ちょっと破けているが怒られるのは八木である。

「依頼したのは加賀だろ? しかしよく情報手に入ったなあ。今までまったく見つからなかったんだろ?」

筋肉から目をそらす加賀の頭をわしわしと撫でにこにこと笑う八木。
よほど嬉しかったのだろう後ろでうーちゃんがスタンバっているのも気が付いてないようだ。

「うん。んであんま見つからないから醤油じゃなくて、黒くて怪しげな液体をって事で調べて貰ったんだよねーそしたらめっかった」

「まじかい」

ウスターソースの見た目もあれだが、醤油は見た目真っ黒で初めて見る人は口にするのを不安を覚える程だ。なので加賀は醤油という名称ではなく、黒くて怪しい液体の噂から調査する様依頼していたのである。

「んで、と言う訳でね。ちょおっとばかし入手するのにお金かかるみたいで……少しカンパしてくれると嬉しいなーなんて」

加賀が言いづらそうにしてた理由はこれであった。
調査費用に金が掛かり、肝心の物を入手するのに必要がお金が不足していたのである。
幼馴染と言えども金銭の貸し借りをお願いするのは正直気が引けたのだろう。

「ん、もちろん構わんよ……やっぱそんなお金かかるもんなんね?」

だがそれらの食材は八木も欲しかったものであり、元々必要であれば八木も費用は出そうと考えていた。
なので加賀のお願いを断る理由はない、八木は加賀のお願いを承諾し疑問に思っていた事を口にする。

「100リア?」

「んなわけないっしょ。万が付く」

八木の問いに指を1本立て、丸を二回作る加賀。
それを見て思わず100リアと口にする八木であったがそんな訳があるはずも無く、桁が4つほど違ったらしい。

「はっ!? うっそだろ」

米や醤油や味噌、現代日本人の感覚で言えば100万もするものではない、少なくとも諭吉が1枚もあれば事足りるはず。八木も輸入する為の費用などで多少割高になるとは思っていたがまさあそこまで高くなるとは思っていなかったのだ。

「ある程度の量もってこようとするとそれぐらい掛かるんだって。ちなみに調べてもらうのにこんだけ掛かってたり」

「わーお」

調査費用は別といって今度は指を2本立て、丸を二つ作ってみせる加賀。
合計で300万と聞いて八木の反応が欧米ぽくなってしまう。

「そっちはもう掛からないから良いのだけどね。問題は入手に必要なお金がちょっちたらにゃい……」

「にゃい」

といった感じで食材の入手に掛かる費用については最終的に八木と加賀で折半する事となったようだ。
八木と加賀がどうしても食べたくと手に入れた物であり。宿のお金を使用するわけにもいかない。
目を押さえた八木から食材代を受け取った加賀はアイネと共に再びギルドへと向かうのであった。
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