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第1章 『動き出す世界』
第6話 扉
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「ソラン、居るか?」
誰かが扉を叩いている。
扉をを開けたそこにはアトラがいた。
「ソラン、これから父に会いに行く。一緒に来てくれ」
「アトラのお父さんに?」
「あぁ、アルステラ王国の国王に会いに行くのだ」
国王に会いに行く?
……そうか、アトラはこの国の王女だったな。
あの戦争のあとこの城の人達には良くしてもらっているが城主には会ったことがない。
そう思うと少しだけ緊張するな。
そんなソランの心配をアトラは感じ取ったのか、
「まあそんなに思い詰めることではない……と言いたいが私も少し緊張していてな。
しかし、ソランが居れば私は大丈夫だと思える」
「そ、そんなに期待されても」
突然向けられたアトラの期待の目に、ソランはたじろいでしまう。
するとアトラは小さく笑いながら
「期待していると言いたい訳ではない。君が居れば私の心が落ち着くと言いたいのだ」
「なんか釈然としないな」
「何を言う。気のせいだ。」
アトラは優しく微笑んだ。
...何故だろうか、うまく言いくるめられた様な気がする。
「また後で迎えに来る。ジャスレイとレリカに準備は頼んだからそろそろ来るだろう。」
「じゃあ、また後で」
「そうだな。また後で」
アトラは白銀の鎧の肩口から伸びているマントを軽く翻し、ソランの部屋を後にした。
入れ違うように使用人とメイドのジャスレイとレリカが入ってくる。
「ソラン様、お召し物の準備をいたします。此方へ」
ジャズレイン=リガルドリガンは60歳くらいの白髪の老人で、黒い制服が、彼の老人とは思えない背筋の良さを強調している。
「ソラン様、此方に飲み物をご用意しておきますので、お着替えが終わりましたらお飲みください」
ソランの緊張を少しでも解そうと、机の上に水を置きながら此方に向かって微笑むレリカ=シンルード。
彼女は、ロングスカートのメイド服に白いエプロンを掛けている30歳くらいの女性だ。
長い黒髪を三つ編みにして、銀色の髪留めで止めている。
この城に来て1ヶ月。ソラン生活で変わったのは、剣術や魔法を習い始めた事だけではない。
使用人やメイドに世話をされたり、豪華な料理が出てきたりなど、奴隷だった頃から360度変わったのだ。
毎日綺麗な服、ふかふかの大きなベッド。
自由に使える広々とした部屋に、とても美味しく豪勢な料理。
始めは、奴隷であった頃には縁が無かった為に驚き、戸惑ったが、1ヶ月経った今では完全にとは言わないが慣れてきた。
「ソラン様、此方の服で宜しいでしょうか」
ジャスレインが純白の服を見せてくる。
その服は、白を基調とし、左肩から二の腕にかけてが赤い装飾がなされているのが特徴的だ。
ズボンは黒を基調としていて、脛の半分から下あたりから裾にかけての白がアクセントになっている。
「こういう時、どんな服を着れば良いか判らないから、これでいいと思う」
「左様ですか。では、着付けさせて頂きます」
手慣れた手つきでソランに服を着せていくジャスレイン。
着替えること約五分。襟から裾まで、きっちりと整えられた純白の衣服は、ソランの黒髪、赤目と相まってとても映えている。
これだけ綺麗に整えられると、なんか緊張が増すな。大丈夫であってほしいが。
硬直している、ソランの隣で、脱いだ服を片付けているレリカ。
「大丈夫ですよ。陛下はとても寛大な方ですから。心配する必要はありませんよ」
と、優しく微笑んだ。
大丈夫というのなら、大丈夫か。
メイドのレリカが嘘をつくとは思えない。
レリカの優しい言葉もあって、ソランの緊張は次第に消えていった。
「ソラン、私だ、アトラだ。準備できたか?そろそろ行くぞ。」
軽快なノックの音と共に、アトラの声が響く。
遂に、この国の国王に会うのか。
「分かった、今行く」
ジャスレインとレリカの温かい対応によって小さくなった不安と、ミリアとの夢を胸に抱え、自分の部屋を開いた。
◇◆◇
国王との謁見広場へ向かう道の途中、アトラに国王について聞く事にした。
「アトラのお父さんは、どんな人なんだ?
ジャスレイやレリカからは寛大で優しい人だと聞いたが」
「あぁ、確かに父上は優しいお方だ。
ただ、少しばかり変わって言うというか、心が子供というか」
アトラが、浮かない表情をしている。
「会って大丈夫か?
それに、お父さんの事、少し酷く言っていないか?」
思わず聞いてしまったソラン。
それに対しアトラは、真剣な面持ちになって、
「否、少しも誇張はしていない。
酷くも言っていないし、多少良く言っているかもしれないが・・・・・・」
そ、それでよく言っているのか・・・・・・
その国王、本当に大丈夫か?さっきから、心配で堪らないのだが。
アトラが鍛錬でしか見た事のない、嫌、鍛錬でも見た事のない位真剣な面持ちをしている為、ソランの不安が再度膨らんでいった。
「しかし、いざという時には一国を動かし、敵国を倒すこともできる位頼りになる人だ。
私の一番憧れている人だ。」
さっきの真剣な顔が、嘘の様に自慢げな顔で、胸を張り語るアトラ。
話を聞いていく程、この国の国王という人物が、どんどん良くわからなくなっていく。
先程から、何度も言っているが、本当に大丈夫なのだろうか。
この国のもう本当によく分からなくなってきた国王に、頭を悩ませていると、この廊下を丁度右に曲がって少し進んだその先、国王の謁見室から、
「ギヤャャャアアアァァァ!!!」
思わず耳を塞いでしまう程、大きな兵士の奇声が聞こえてきた。
「・・・・・・」
「・・・・・・アトラのお父さん、というか国王陛下、本当に大丈夫なの?」
ずっと心の中だけで留めておいた本心を、うっかり出してしまった。
思わずアトラのほうを見ると、アトラは立ち止まり、俯いている。
少しプルプルと震えている気がする。
「やはりソランもそう思うか?
姉様たちの『普通』という考え方はおかしいと!?」
「う、うん」
あまりの迫力に、先の言葉を理解することなく頷いてしまった。
「そうだ!父上は変わっているのだ!それも、危ない程に!」
...なんか、アトラから黒い何かが出ている気がする。
そんなに大変なのだろうか。アトラのお父さん。
ジャスレイさんとレリカさんに小さくしてもらった緊張が、止まるところを知らず膨れ上がっていく。
そんなこんなで謁見室の扉の前に来る。
途中、物凄い形相で向かって来る兵士とすれ違ったが・・・・・・
「ここに、アトラのお父さんが・・・・・・」
重たく軋む扉が、ゆっくりと今開かれた。
誰かが扉を叩いている。
扉をを開けたそこにはアトラがいた。
「ソラン、これから父に会いに行く。一緒に来てくれ」
「アトラのお父さんに?」
「あぁ、アルステラ王国の国王に会いに行くのだ」
国王に会いに行く?
……そうか、アトラはこの国の王女だったな。
あの戦争のあとこの城の人達には良くしてもらっているが城主には会ったことがない。
そう思うと少しだけ緊張するな。
そんなソランの心配をアトラは感じ取ったのか、
「まあそんなに思い詰めることではない……と言いたいが私も少し緊張していてな。
しかし、ソランが居れば私は大丈夫だと思える」
「そ、そんなに期待されても」
突然向けられたアトラの期待の目に、ソランはたじろいでしまう。
するとアトラは小さく笑いながら
「期待していると言いたい訳ではない。君が居れば私の心が落ち着くと言いたいのだ」
「なんか釈然としないな」
「何を言う。気のせいだ。」
アトラは優しく微笑んだ。
...何故だろうか、うまく言いくるめられた様な気がする。
「また後で迎えに来る。ジャスレイとレリカに準備は頼んだからそろそろ来るだろう。」
「じゃあ、また後で」
「そうだな。また後で」
アトラは白銀の鎧の肩口から伸びているマントを軽く翻し、ソランの部屋を後にした。
入れ違うように使用人とメイドのジャスレイとレリカが入ってくる。
「ソラン様、お召し物の準備をいたします。此方へ」
ジャズレイン=リガルドリガンは60歳くらいの白髪の老人で、黒い制服が、彼の老人とは思えない背筋の良さを強調している。
「ソラン様、此方に飲み物をご用意しておきますので、お着替えが終わりましたらお飲みください」
ソランの緊張を少しでも解そうと、机の上に水を置きながら此方に向かって微笑むレリカ=シンルード。
彼女は、ロングスカートのメイド服に白いエプロンを掛けている30歳くらいの女性だ。
長い黒髪を三つ編みにして、銀色の髪留めで止めている。
この城に来て1ヶ月。ソラン生活で変わったのは、剣術や魔法を習い始めた事だけではない。
使用人やメイドに世話をされたり、豪華な料理が出てきたりなど、奴隷だった頃から360度変わったのだ。
毎日綺麗な服、ふかふかの大きなベッド。
自由に使える広々とした部屋に、とても美味しく豪勢な料理。
始めは、奴隷であった頃には縁が無かった為に驚き、戸惑ったが、1ヶ月経った今では完全にとは言わないが慣れてきた。
「ソラン様、此方の服で宜しいでしょうか」
ジャスレインが純白の服を見せてくる。
その服は、白を基調とし、左肩から二の腕にかけてが赤い装飾がなされているのが特徴的だ。
ズボンは黒を基調としていて、脛の半分から下あたりから裾にかけての白がアクセントになっている。
「こういう時、どんな服を着れば良いか判らないから、これでいいと思う」
「左様ですか。では、着付けさせて頂きます」
手慣れた手つきでソランに服を着せていくジャスレイン。
着替えること約五分。襟から裾まで、きっちりと整えられた純白の衣服は、ソランの黒髪、赤目と相まってとても映えている。
これだけ綺麗に整えられると、なんか緊張が増すな。大丈夫であってほしいが。
硬直している、ソランの隣で、脱いだ服を片付けているレリカ。
「大丈夫ですよ。陛下はとても寛大な方ですから。心配する必要はありませんよ」
と、優しく微笑んだ。
大丈夫というのなら、大丈夫か。
メイドのレリカが嘘をつくとは思えない。
レリカの優しい言葉もあって、ソランの緊張は次第に消えていった。
「ソラン、私だ、アトラだ。準備できたか?そろそろ行くぞ。」
軽快なノックの音と共に、アトラの声が響く。
遂に、この国の国王に会うのか。
「分かった、今行く」
ジャスレインとレリカの温かい対応によって小さくなった不安と、ミリアとの夢を胸に抱え、自分の部屋を開いた。
◇◆◇
国王との謁見広場へ向かう道の途中、アトラに国王について聞く事にした。
「アトラのお父さんは、どんな人なんだ?
ジャスレイやレリカからは寛大で優しい人だと聞いたが」
「あぁ、確かに父上は優しいお方だ。
ただ、少しばかり変わって言うというか、心が子供というか」
アトラが、浮かない表情をしている。
「会って大丈夫か?
それに、お父さんの事、少し酷く言っていないか?」
思わず聞いてしまったソラン。
それに対しアトラは、真剣な面持ちになって、
「否、少しも誇張はしていない。
酷くも言っていないし、多少良く言っているかもしれないが・・・・・・」
そ、それでよく言っているのか・・・・・・
その国王、本当に大丈夫か?さっきから、心配で堪らないのだが。
アトラが鍛錬でしか見た事のない、嫌、鍛錬でも見た事のない位真剣な面持ちをしている為、ソランの不安が再度膨らんでいった。
「しかし、いざという時には一国を動かし、敵国を倒すこともできる位頼りになる人だ。
私の一番憧れている人だ。」
さっきの真剣な顔が、嘘の様に自慢げな顔で、胸を張り語るアトラ。
話を聞いていく程、この国の国王という人物が、どんどん良くわからなくなっていく。
先程から、何度も言っているが、本当に大丈夫なのだろうか。
この国のもう本当によく分からなくなってきた国王に、頭を悩ませていると、この廊下を丁度右に曲がって少し進んだその先、国王の謁見室から、
「ギヤャャャアアアァァァ!!!」
思わず耳を塞いでしまう程、大きな兵士の奇声が聞こえてきた。
「・・・・・・」
「・・・・・・アトラのお父さん、というか国王陛下、本当に大丈夫なの?」
ずっと心の中だけで留めておいた本心を、うっかり出してしまった。
思わずアトラのほうを見ると、アトラは立ち止まり、俯いている。
少しプルプルと震えている気がする。
「やはりソランもそう思うか?
姉様たちの『普通』という考え方はおかしいと!?」
「う、うん」
あまりの迫力に、先の言葉を理解することなく頷いてしまった。
「そうだ!父上は変わっているのだ!それも、危ない程に!」
...なんか、アトラから黒い何かが出ている気がする。
そんなに大変なのだろうか。アトラのお父さん。
ジャスレイさんとレリカさんに小さくしてもらった緊張が、止まるところを知らず膨れ上がっていく。
そんなこんなで謁見室の扉の前に来る。
途中、物凄い形相で向かって来る兵士とすれ違ったが・・・・・・
「ここに、アトラのお父さんが・・・・・・」
重たく軋む扉が、ゆっくりと今開かれた。
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