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47 簒奪者の答え
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「っ!」
俺の言葉に、眼下の男――月島玲二が息を飲む。
まさか顔が少し似ているくらいで俺を騙せるとでも思ったのだろうか。
気に入らなかった。月島を傷付けておきながら俺の前に顔を出したことも、月島のふりをして近づいてきた根性も、俺を騙せると見くびったことも、全て。
しかし、腸が煮えくり返るような怒りとは裏腹に、自分の口から出た声は氷のように冷たかった。
「下手くそな芝居に付き合わせやがって。お望みならその顔、二度とアイツの兄弟とは思えない様にしてやるぞ」
「……ッ」
言葉を紡げずにいる玲二の顔に手を伸ばし、そこに貼られたガーゼを躊躇なく剥ぎ取る。その下に傷一つない肌が覗いたのを見て、舌打ちを落とした。
月島の顔には、今もまだ痛々しい傷跡が残っているだろう。そう思うと、やるせない気持ちになってしまった。
苛立ちのまま、玲二の胸の上に遠慮の欠片も無く腰を下ろす。
そして呻く男の顔を再び覗き込んだ。
「月島を……亮介をあんな目に遭わせただけじゃ、満足出来ないのか? まだアイツを傷付け足りないのか?」
「あれは……ッ事故だ。わざと突き落としたりなんかしてない、怪我をさせるつもりなんてなかったんだ!」
敢えて心を抉るよう選んだ言葉に、玲二が顔を顰める。
その胸倉を掴んで更に詰問を続けた。
「じゃあ、なんで亮介のふりなんかして俺の前に顔を出したんだ」
「……」
「何とか言えよ……ッ」
服が乱れるのにも構わず、黙りこくった玲二を力任せに揺さぶる。
やがて玲二は、泣きそうな顔をしてぽつりと呟いた。
「兄貴を……」
か細い声は小さく震えている。
逡巡するように開閉を繰り返す唇を見詰めながら、続く言葉を辛抱強く待ち続けていると、突如玲二はこちらを見据えて叫んだ。
「兄貴を、元の完璧な兄貴に戻すんだッ!」
「っ……と!」
下敷きにしたままの玲二に襟を掴まれて体勢を崩す。辛くも持ち堪えたが、玲二は凄まじい力で俺の服を握り締めていた。
そして、憎しみと悲しみを湛えた瞳で俺を睨み付ける。
「アンタに惑わされて、兄貴は変わってしまったんだ! だから、アンタが消えれば、兄貴は元の完璧な兄貴に戻る筈なんだ!」
「は、短絡的だな」
「黙れ! オレが兄貴の目を覚まさせてやらなきゃいけないんだよ、オレが……っ」
「それを亮介が望んでいるとでも思っているのか。お前は亮介の気持ちを聞いたのか?」
「兄貴の気持ちなんて知ったことか! 大体、今の兄貴はおかしくなってしまってるんだ、話したって分かるもんか!」
兄貴の気持ちなんて知ったことではない、とは。
一向に月島と向き合おうとしない玲二に呆れ、俺は溜息を吐いた。
「今の兄貴はおかしい、か。お前も、何も分かっちゃいないな」
コイツらは、兄弟揃って強情な分からず屋だ。
確かに、月島は俺と出会って変わった。けれどもそれは、元々隠していたものを表に出すようになっただけに過ぎない。
それが理解できないのは、玲二が月島の表面だけしか見て来なかったからだ。
かつての、俺のように。
「確かにアイツは変わったよ。けれどもそれは、隠すことをやめて自然体になっただけに過ぎない。お前の言う完璧な兄貴っていうのは、アイツが必死に演じて来た虚像なんだよ」
「知った口を聞きやがって、アンタに何が分かるんだ! 俺の方が兄貴と長く過ごしてきたっていうのに!」
「少なくとも、お前よりはアイツを知ってる自信があるな」
これ見よがしに鼻で笑い、玲二を挑発する。
頭に血を上らせた玲二はなりふり構わず暴れたが、頭突きの一発で抑えつけた。
月島は、随分と弟を甘やかして来たようである。お前こそ目を覚ませと怒鳴ってやりたかった。
痛みからか、悔しさからか。瞳を潤ませる玲二に構わず容赦ない言葉を投げつける。
「お前は一度たりとも、等身大の亮介を見ちゃいない。それがアイツを苦しめて来たんだ」
「黙れ!」
「お前が今追い求めているのは、お前が勝手に作り出した虚像だ。本当の亮介なんかじゃない」
「違う! 兄貴は昔からいつも正しくて、揺らがない、完璧な存在なんだ! オレなんか足元にも及ばない、完璧な……」
「そうやって、兄貴に追いつけない自分を正当化してきたのか。亮介の努力も苦しみも無視して、理想を押し付けて、自分が未熟である言い訳にしてきたのか?」
「オレだって何もしなかった訳じゃない、苦しまなかった訳じゃない! でも、駄目だったんだ、誰にも認めてもらえなかったんだ。それは、仕方なかったんだよ、だって」
「兄貴は完璧だから、か?」
玲二の言葉尻を奪って黙らせる。
勢いをそがれた玲二は力を失くした声で同意した。
玲二の立場には、同情もする。
出来過ぎた兄と比べられて、さぞ息苦しい日々を送ってきたのだろう。
その苦しみを、月島に分かってもらいたいと思うのはいい。むしろ、ちゃんとぶつかり合って、今まで出来なかった兄弟喧嘩をして、わだかまりを無くして欲しいとすら思う。
けれども、これから変わろうとしている月島の邪魔をすることは許せなかった。
「お前、兄貴に甘えるのも大概にしろよ」
「……ッ」
「自分の責任は、自分で背負え。いつまでも兄貴に押し付けてるんじゃない」
自覚は、あったのだろうか。俺の言葉に、玲二が声も無く涙を零した。
「いい歳なんだから、そろそろ独り立ちしろよ。亮介は亮介、お前はお前だ。一番、亮介とお前を比較しているのは……お前自身だろう?」
「う。ぐ……ッ!」
玲二が唇を噛んで泣き声を押し殺す。
その姿にほんの少しだけ罪悪感を刺激され、玲二の胸倉を掴んでいた手を離した。
解放された玲二は、力無くアスファルトの上に横たわったまま、縋るように俺の腕を掴む。
そして、震える声で言った。
「頼むから、兄貴を返してくれよぉ……」
兄を奪われた弟の心からの懇願に、ちくりと胸が痛む。
けれども、俺の答えは決まっていた。
「嫌だね。アイツはもう俺のものなんだ」
「……っう」
俺の言葉に、ついに玲二が顔を覆って嗚咽を漏らし始める。
引き攣って苦しそうに震える胸の上から腰を上げ、玲二の傍らに胡坐をかいて座り込んだ。
「……悪いな、お前の兄貴を奪ってしまって」
「ッ」
静かな駐車場に、玲二の苦し気な呻き声だけが微かに響く。
俺は、しばし黙ったまま玲二が落ち着くのを待った。
相変わらず静かなままの街中で、雑音に混ざって啜り泣く声が聞こえている。
その声が大分小さくなり、玲二の身体の震えも収まってきた頃を見計らって、俺は再び口を開いた。
「お前の気持ちは、少しだけ、分かる。亮介に相手にされなくて、悔しかったんだろ。何をしても揺らがない、アイツのすまし顔に腹が立ったんだろ」
「……っ」
俺の言葉に玲二は微かに息を飲む。
「いっそ怒らせてでも自分を見て欲しいと思ったことはなかったか。あの鼻を明かしてやりたいと思ったことは? 弱みを握ってやろうとも、考えたかもしれないな」
「アンタに、何が……!」
「分かるよ、俺も一緒だったから」
俺の目を見詰めて玲二が黙りこくる。
真っ赤に染まった瞳を見詰め返しながら、静かに言葉を紡ぎ続けた。
「俺も、さ。初めは亮介に相手にされていないと思っていたんだ。最近、そうじゃなかったと知ったんだけどな」
「……」
「お前だって、この間の喧嘩で分かったんじゃないか? アイツはお前に無関心だった訳じゃない。隠すのが上手なだけだったんだ」
「そう、なのかな」
「そうだろ? 弟の我儘に振り回されて、怒る。そんな普通の兄貴だよ、アイツも」
玲二は考え込むように視線を彷徨わせている。
寄る辺を無くして不安そうな男がなんだか小さく見えて、思わずその頭に手を置いていた。
「いつもの亮介を思い出して戸惑う気持ちも、分かる。だけど頼むから、本当のアイツも見てやってくれないか」
「本当の……兄貴」
「ああ、そうだ。嫉妬深くて不器用で、細かくって潔癖症で負けず嫌いな上に格好付けたがりで、苦しんでても表に出さない性質の悪いアイツのことも、受け入れてやってくれ」
「それ、兄貴の話なのか?」
あんまりな言い草に、玲二が一瞬呆気にとられる。
未だ信じがたそうな表情を浮かべる玲二に向かって、俺は機嫌よく月島の欠点をあげつらっていった。
「そうだ、アイツはあれで猪突猛進なところがあって、目的のためには手段を選ばない。犯罪には手を染めないが、逆に言えばギリギリのところまでは躊躇なく攻めやがる。オマケに人の話を聞かないわ、人目を気にしないわでよく振り回されてるんだ、こっちは」
「は、兄貴が?」
「そうだよ」
玲二はぽかんとした顔でこちらを見つめている。
その間抜け面がやけに幼く見えて、俺は玲二の髪をぐちゃぐちゃに撫でた。
「俺は完璧な月島亮介じゃなくて、そんな人間臭いアイツに惹かれたんだよ」
月島に驚かされ、振り回された日々を思い返し、思わず笑みを零す。それを見た玲二が、僅かに息を飲んだ。
俺の言葉に、眼下の男――月島玲二が息を飲む。
まさか顔が少し似ているくらいで俺を騙せるとでも思ったのだろうか。
気に入らなかった。月島を傷付けておきながら俺の前に顔を出したことも、月島のふりをして近づいてきた根性も、俺を騙せると見くびったことも、全て。
しかし、腸が煮えくり返るような怒りとは裏腹に、自分の口から出た声は氷のように冷たかった。
「下手くそな芝居に付き合わせやがって。お望みならその顔、二度とアイツの兄弟とは思えない様にしてやるぞ」
「……ッ」
言葉を紡げずにいる玲二の顔に手を伸ばし、そこに貼られたガーゼを躊躇なく剥ぎ取る。その下に傷一つない肌が覗いたのを見て、舌打ちを落とした。
月島の顔には、今もまだ痛々しい傷跡が残っているだろう。そう思うと、やるせない気持ちになってしまった。
苛立ちのまま、玲二の胸の上に遠慮の欠片も無く腰を下ろす。
そして呻く男の顔を再び覗き込んだ。
「月島を……亮介をあんな目に遭わせただけじゃ、満足出来ないのか? まだアイツを傷付け足りないのか?」
「あれは……ッ事故だ。わざと突き落としたりなんかしてない、怪我をさせるつもりなんてなかったんだ!」
敢えて心を抉るよう選んだ言葉に、玲二が顔を顰める。
その胸倉を掴んで更に詰問を続けた。
「じゃあ、なんで亮介のふりなんかして俺の前に顔を出したんだ」
「……」
「何とか言えよ……ッ」
服が乱れるのにも構わず、黙りこくった玲二を力任せに揺さぶる。
やがて玲二は、泣きそうな顔をしてぽつりと呟いた。
「兄貴を……」
か細い声は小さく震えている。
逡巡するように開閉を繰り返す唇を見詰めながら、続く言葉を辛抱強く待ち続けていると、突如玲二はこちらを見据えて叫んだ。
「兄貴を、元の完璧な兄貴に戻すんだッ!」
「っ……と!」
下敷きにしたままの玲二に襟を掴まれて体勢を崩す。辛くも持ち堪えたが、玲二は凄まじい力で俺の服を握り締めていた。
そして、憎しみと悲しみを湛えた瞳で俺を睨み付ける。
「アンタに惑わされて、兄貴は変わってしまったんだ! だから、アンタが消えれば、兄貴は元の完璧な兄貴に戻る筈なんだ!」
「は、短絡的だな」
「黙れ! オレが兄貴の目を覚まさせてやらなきゃいけないんだよ、オレが……っ」
「それを亮介が望んでいるとでも思っているのか。お前は亮介の気持ちを聞いたのか?」
「兄貴の気持ちなんて知ったことか! 大体、今の兄貴はおかしくなってしまってるんだ、話したって分かるもんか!」
兄貴の気持ちなんて知ったことではない、とは。
一向に月島と向き合おうとしない玲二に呆れ、俺は溜息を吐いた。
「今の兄貴はおかしい、か。お前も、何も分かっちゃいないな」
コイツらは、兄弟揃って強情な分からず屋だ。
確かに、月島は俺と出会って変わった。けれどもそれは、元々隠していたものを表に出すようになっただけに過ぎない。
それが理解できないのは、玲二が月島の表面だけしか見て来なかったからだ。
かつての、俺のように。
「確かにアイツは変わったよ。けれどもそれは、隠すことをやめて自然体になっただけに過ぎない。お前の言う完璧な兄貴っていうのは、アイツが必死に演じて来た虚像なんだよ」
「知った口を聞きやがって、アンタに何が分かるんだ! 俺の方が兄貴と長く過ごしてきたっていうのに!」
「少なくとも、お前よりはアイツを知ってる自信があるな」
これ見よがしに鼻で笑い、玲二を挑発する。
頭に血を上らせた玲二はなりふり構わず暴れたが、頭突きの一発で抑えつけた。
月島は、随分と弟を甘やかして来たようである。お前こそ目を覚ませと怒鳴ってやりたかった。
痛みからか、悔しさからか。瞳を潤ませる玲二に構わず容赦ない言葉を投げつける。
「お前は一度たりとも、等身大の亮介を見ちゃいない。それがアイツを苦しめて来たんだ」
「黙れ!」
「お前が今追い求めているのは、お前が勝手に作り出した虚像だ。本当の亮介なんかじゃない」
「違う! 兄貴は昔からいつも正しくて、揺らがない、完璧な存在なんだ! オレなんか足元にも及ばない、完璧な……」
「そうやって、兄貴に追いつけない自分を正当化してきたのか。亮介の努力も苦しみも無視して、理想を押し付けて、自分が未熟である言い訳にしてきたのか?」
「オレだって何もしなかった訳じゃない、苦しまなかった訳じゃない! でも、駄目だったんだ、誰にも認めてもらえなかったんだ。それは、仕方なかったんだよ、だって」
「兄貴は完璧だから、か?」
玲二の言葉尻を奪って黙らせる。
勢いをそがれた玲二は力を失くした声で同意した。
玲二の立場には、同情もする。
出来過ぎた兄と比べられて、さぞ息苦しい日々を送ってきたのだろう。
その苦しみを、月島に分かってもらいたいと思うのはいい。むしろ、ちゃんとぶつかり合って、今まで出来なかった兄弟喧嘩をして、わだかまりを無くして欲しいとすら思う。
けれども、これから変わろうとしている月島の邪魔をすることは許せなかった。
「お前、兄貴に甘えるのも大概にしろよ」
「……ッ」
「自分の責任は、自分で背負え。いつまでも兄貴に押し付けてるんじゃない」
自覚は、あったのだろうか。俺の言葉に、玲二が声も無く涙を零した。
「いい歳なんだから、そろそろ独り立ちしろよ。亮介は亮介、お前はお前だ。一番、亮介とお前を比較しているのは……お前自身だろう?」
「う。ぐ……ッ!」
玲二が唇を噛んで泣き声を押し殺す。
その姿にほんの少しだけ罪悪感を刺激され、玲二の胸倉を掴んでいた手を離した。
解放された玲二は、力無くアスファルトの上に横たわったまま、縋るように俺の腕を掴む。
そして、震える声で言った。
「頼むから、兄貴を返してくれよぉ……」
兄を奪われた弟の心からの懇願に、ちくりと胸が痛む。
けれども、俺の答えは決まっていた。
「嫌だね。アイツはもう俺のものなんだ」
「……っう」
俺の言葉に、ついに玲二が顔を覆って嗚咽を漏らし始める。
引き攣って苦しそうに震える胸の上から腰を上げ、玲二の傍らに胡坐をかいて座り込んだ。
「……悪いな、お前の兄貴を奪ってしまって」
「ッ」
静かな駐車場に、玲二の苦し気な呻き声だけが微かに響く。
俺は、しばし黙ったまま玲二が落ち着くのを待った。
相変わらず静かなままの街中で、雑音に混ざって啜り泣く声が聞こえている。
その声が大分小さくなり、玲二の身体の震えも収まってきた頃を見計らって、俺は再び口を開いた。
「お前の気持ちは、少しだけ、分かる。亮介に相手にされなくて、悔しかったんだろ。何をしても揺らがない、アイツのすまし顔に腹が立ったんだろ」
「……っ」
俺の言葉に玲二は微かに息を飲む。
「いっそ怒らせてでも自分を見て欲しいと思ったことはなかったか。あの鼻を明かしてやりたいと思ったことは? 弱みを握ってやろうとも、考えたかもしれないな」
「アンタに、何が……!」
「分かるよ、俺も一緒だったから」
俺の目を見詰めて玲二が黙りこくる。
真っ赤に染まった瞳を見詰め返しながら、静かに言葉を紡ぎ続けた。
「俺も、さ。初めは亮介に相手にされていないと思っていたんだ。最近、そうじゃなかったと知ったんだけどな」
「……」
「お前だって、この間の喧嘩で分かったんじゃないか? アイツはお前に無関心だった訳じゃない。隠すのが上手なだけだったんだ」
「そう、なのかな」
「そうだろ? 弟の我儘に振り回されて、怒る。そんな普通の兄貴だよ、アイツも」
玲二は考え込むように視線を彷徨わせている。
寄る辺を無くして不安そうな男がなんだか小さく見えて、思わずその頭に手を置いていた。
「いつもの亮介を思い出して戸惑う気持ちも、分かる。だけど頼むから、本当のアイツも見てやってくれないか」
「本当の……兄貴」
「ああ、そうだ。嫉妬深くて不器用で、細かくって潔癖症で負けず嫌いな上に格好付けたがりで、苦しんでても表に出さない性質の悪いアイツのことも、受け入れてやってくれ」
「それ、兄貴の話なのか?」
あんまりな言い草に、玲二が一瞬呆気にとられる。
未だ信じがたそうな表情を浮かべる玲二に向かって、俺は機嫌よく月島の欠点をあげつらっていった。
「そうだ、アイツはあれで猪突猛進なところがあって、目的のためには手段を選ばない。犯罪には手を染めないが、逆に言えばギリギリのところまでは躊躇なく攻めやがる。オマケに人の話を聞かないわ、人目を気にしないわでよく振り回されてるんだ、こっちは」
「は、兄貴が?」
「そうだよ」
玲二はぽかんとした顔でこちらを見つめている。
その間抜け面がやけに幼く見えて、俺は玲二の髪をぐちゃぐちゃに撫でた。
「俺は完璧な月島亮介じゃなくて、そんな人間臭いアイツに惹かれたんだよ」
月島に驚かされ、振り回された日々を思い返し、思わず笑みを零す。それを見た玲二が、僅かに息を飲んだ。
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