65 / 69
その後のふたり
指先に宿る愛(神原視点)
しおりを挟む
「……おっと」
「ん?」
デスクで昼食をとっていた時のこと。
不意に月島さんが声を上げたので、僕は思わず視線を上げた。
パソコンの向こうに座る月島さんは、少し眉を顰めて指先を睨んでいる。
右手にカッターナイフを持ったまま、左手を眺めているところから察するに、指を切りでもしたのだろうか。
こんな時に篠崎先輩がいれば真っ先に飛んでいくのだろうが、あいにく今は外に出かけている最中だ。
代わりに……という訳ではないが、何となく放っておけなくて、僕は声をかけた。
「大丈夫ですか? 絆創膏ならありますよ」
「いや、問題ない。少し爪が欠けてしまっただけだ」
デスクから引っ張り出した絆創膏を掲げるが、月島さんはひらりと手を振ってそれを断った。
そして、鞄からおもむろに爪切りを取り出すと、パチンと小気味良い音をさせながら爪を整え出す。
「準備いいですねぇ」
「まぁね」
驚いた。月島さんのことは完璧人間だと思ってはいたが、まさか爪切りまで常備しているとは予想していなかった。
もしかしてソーイングセットとかも持っているのだろうか。そんな益体の無いことを考えているうちに、月島さんの爪はどんどん短く切られていく。
やがて、ちょっと深爪過ぎるのではと感じるほど短く爪を切り揃えた月島さんは、それだけでは終わらず、今度はヤスリを取り出して丹念に角を取り始めた。
流石は几帳面な月島さんだ。爪切り1つ取っても妥協を許さない。
……とはいえ、少々気にしすぎではないだろうか。
しきりに爪の先の感触を確かめては唸る月島さんを見て、僕は首を捻った。
「そんなに気になります、爪?」
思わず零れた僕の疑問に、月島さんはにやりと笑って応えた。
「ふ、『男』のマナーだよ」
「……?」
「おや、君もまだ青いようだね。神原君」
意味深に囁かれた言葉の意味をはかりかねて疑問符を浮かべる僕に、月島さんは薄く微笑む。
そんな会話を端から聞いていた女性職員から黄色い声が上がったが、僕にはその理由も分からなかった。
「――と、いうことがあったんですけど」
「……ッ!!」
昼休みが明け、外に出て行った月島さんと入れ替わるようにして帰ってきた篠崎先輩に先ほどの話をしたところ、顔を覆って机に突っ伏してしまった。
不思議に思って理由を問いただそうとしたが、それは何故か周囲の同僚に止められた。
曰く、「そのくらいで勘弁してやれ」とのこと。
どうやら僕以外の人は、月島さんの台詞の意味を察しているらしい。
「どうして赤くなってるんですか、先輩?」
「お前の……ああいや、月島のせいだな、これは……」
珍しく歯切れの悪い篠崎先輩は、何か苦悩するように額を押さえていた。
「妙に意味深に『男』のマナーって言ってましたけど、何なんでしょうか」
「…………ぅ」
こてんと首を傾げた僕を、篠崎先輩は何とも言えない半目で眺めている。
そして、何やら深く考え込んだ後、言いにくそうに口を開いた。
「……神原、お前彼女が居たことは?」
「ありますよ。中学生の頃でしたが」
脈絡のない質問に戸惑いつつ、素直に答えを口にする。
僕の回答を聞いてまた悩み込んだ篠崎先輩は、「中学か……経験あるか微妙だな」などと小声で呟いていたが、何が微妙なのだろうか。
益々不思議に思っていると、決意を固めるように頷いた篠崎先輩が、僕へと語り掛けた。
「その、な。お前の後学のために話すんだが……もし将来彼女が出来たら、お前もちゃんと爪を整えるんだぞ。それが『男』がするべき配慮ってヤツだからな」
「でも篠崎先輩はそこまで熱心に整えてないですよね?」
「バカ、大きな声で言うな! お、俺はちょっと特殊なんだよ……!」
「『男』だと気にしなきゃいけないのに、篠崎先輩は違うんですか?」
「ぐっ……!」
何がそこまで刺さったのか、篠崎先輩は珍しく動揺しきって、助けを求めるように周囲に視線をやっていた。
気の毒なことに、そっと視線を逸らされてしまっているのだが。
誰も助け船を出してくれないと悟った篠崎先輩は、苛立たし気にガシガシと髪を掻き回した後、半分やけっぱちな口調でこう言った。
「ああもう! 恋人は大事にしたいだろ? 傷つけたくないだろ?」
「そうですね」
「だから、爪は、短く丸くしておくんだよ!」
「ちょっと話が飛躍してる気がするんですけど」
「行間を読んでくれよ……!!」
恋人をうっかり傷つけないように爪を短く整えるというのなら、篠崎先輩もそうするべきだろう。
でも、していない。果たして月島さんと篠崎先輩の違いとは何なのか。僕はしばし悩み込んだが、やはり答えは見つからなかった。
まだピンときていない様子の僕を見て、篠崎先輩は天を仰いでいる。
そして、大きな溜息を吐くと、僕の首根っこを引っ掴んで壁際へ引きずり、周囲に聞こえないほどの声量で囁いた。
「恋人同士だと、普通触れないところに触れたりするだろ?」
「はあ」
「その……繊細なところに触れた時、爪の先が荒いと痛いんだよ。だから、さぁ……ちくしょう、なんで俺は職場でこんな話をしてるんだ」
段々尻すぼみになりながらも核心に触れた篠崎先輩は、話の半ばでぐったりと力無く俯いてしまった。
流石の僕も、そこまで言われれば分かった。
月島さんが、あれほど熱心に爪を整えていた理由が。
篠崎先輩の身体を傷つけたくないという、その想いが。
「……!」
途端に、今まで自分がトンデモない質問を繰り返していたことに気が付き赤面する。
篠崎先輩が滅茶苦茶言い淀んでいた訳を理解した。
オマケに、余計なことにまで気付いてしまった。
篠崎先輩は先ほど、「爪の先が荒いと痛い」と言った。触れられる側の、当事者目線ではないと出てこない台詞だ。
その上、少し前には「男だけど自分は特殊だ」とも話していた。
つまり篠崎先輩は、月島さんに『繊細なところ』を触られていて、『男』としての配慮が必要ない立場だという訳で……まあ、そういうことだ。
そして、僕はそんな夜の事情を課内でつまびらかにしてしまった訳で――、
「すっ、すいません! 先輩にとんだセクハラを……むぐッ!」
「いいから、もうお前は黙れ!!」
眦を吊り上げた篠崎先輩が、謝罪の言葉ごと僕の顔面を握り潰す。
顔の形が変わりそうなほどの握力に呻きながらも、文句は言えないなと猛省するのであった。
◆ ◆ ◆
「――おい、亮介」
「なんだい?」
「今日、神原に変なこと言っただろ」
「ん?」
「つ、爪がどう、とか……」
「ああ、ほんの冗談だったのだが」
「お前はいい加減、冗談が下手くそなことを自覚しろ……!!」
「それはすまなかった。――でも、」
ひたり、と濡れた指先が俺の身体に触れる。
反射的に息を詰めた俺に、月島は意地の悪い笑みを向けた。
「今はこちらに集中してくれないか? せっかく爪も綺麗に整えたのだ」
「てめ、全く悪びれてないな……!? ……くっ」
ふてぶてしい男に向けた悪態は、体内に滑り込まされた指先によって遮られる。
繊細なところに潜り込まされたその指は、昼に爪が欠けたことなど感じさせないほど滑らかで。
「どうだ?」と言わんばかりの月島を、俺は精一杯睨み付けた。
指先に宿った愛情を感じて嬉しくなったなど、口が裂けても言ってやらないのだ。
「ん?」
デスクで昼食をとっていた時のこと。
不意に月島さんが声を上げたので、僕は思わず視線を上げた。
パソコンの向こうに座る月島さんは、少し眉を顰めて指先を睨んでいる。
右手にカッターナイフを持ったまま、左手を眺めているところから察するに、指を切りでもしたのだろうか。
こんな時に篠崎先輩がいれば真っ先に飛んでいくのだろうが、あいにく今は外に出かけている最中だ。
代わりに……という訳ではないが、何となく放っておけなくて、僕は声をかけた。
「大丈夫ですか? 絆創膏ならありますよ」
「いや、問題ない。少し爪が欠けてしまっただけだ」
デスクから引っ張り出した絆創膏を掲げるが、月島さんはひらりと手を振ってそれを断った。
そして、鞄からおもむろに爪切りを取り出すと、パチンと小気味良い音をさせながら爪を整え出す。
「準備いいですねぇ」
「まぁね」
驚いた。月島さんのことは完璧人間だと思ってはいたが、まさか爪切りまで常備しているとは予想していなかった。
もしかしてソーイングセットとかも持っているのだろうか。そんな益体の無いことを考えているうちに、月島さんの爪はどんどん短く切られていく。
やがて、ちょっと深爪過ぎるのではと感じるほど短く爪を切り揃えた月島さんは、それだけでは終わらず、今度はヤスリを取り出して丹念に角を取り始めた。
流石は几帳面な月島さんだ。爪切り1つ取っても妥協を許さない。
……とはいえ、少々気にしすぎではないだろうか。
しきりに爪の先の感触を確かめては唸る月島さんを見て、僕は首を捻った。
「そんなに気になります、爪?」
思わず零れた僕の疑問に、月島さんはにやりと笑って応えた。
「ふ、『男』のマナーだよ」
「……?」
「おや、君もまだ青いようだね。神原君」
意味深に囁かれた言葉の意味をはかりかねて疑問符を浮かべる僕に、月島さんは薄く微笑む。
そんな会話を端から聞いていた女性職員から黄色い声が上がったが、僕にはその理由も分からなかった。
「――と、いうことがあったんですけど」
「……ッ!!」
昼休みが明け、外に出て行った月島さんと入れ替わるようにして帰ってきた篠崎先輩に先ほどの話をしたところ、顔を覆って机に突っ伏してしまった。
不思議に思って理由を問いただそうとしたが、それは何故か周囲の同僚に止められた。
曰く、「そのくらいで勘弁してやれ」とのこと。
どうやら僕以外の人は、月島さんの台詞の意味を察しているらしい。
「どうして赤くなってるんですか、先輩?」
「お前の……ああいや、月島のせいだな、これは……」
珍しく歯切れの悪い篠崎先輩は、何か苦悩するように額を押さえていた。
「妙に意味深に『男』のマナーって言ってましたけど、何なんでしょうか」
「…………ぅ」
こてんと首を傾げた僕を、篠崎先輩は何とも言えない半目で眺めている。
そして、何やら深く考え込んだ後、言いにくそうに口を開いた。
「……神原、お前彼女が居たことは?」
「ありますよ。中学生の頃でしたが」
脈絡のない質問に戸惑いつつ、素直に答えを口にする。
僕の回答を聞いてまた悩み込んだ篠崎先輩は、「中学か……経験あるか微妙だな」などと小声で呟いていたが、何が微妙なのだろうか。
益々不思議に思っていると、決意を固めるように頷いた篠崎先輩が、僕へと語り掛けた。
「その、な。お前の後学のために話すんだが……もし将来彼女が出来たら、お前もちゃんと爪を整えるんだぞ。それが『男』がするべき配慮ってヤツだからな」
「でも篠崎先輩はそこまで熱心に整えてないですよね?」
「バカ、大きな声で言うな! お、俺はちょっと特殊なんだよ……!」
「『男』だと気にしなきゃいけないのに、篠崎先輩は違うんですか?」
「ぐっ……!」
何がそこまで刺さったのか、篠崎先輩は珍しく動揺しきって、助けを求めるように周囲に視線をやっていた。
気の毒なことに、そっと視線を逸らされてしまっているのだが。
誰も助け船を出してくれないと悟った篠崎先輩は、苛立たし気にガシガシと髪を掻き回した後、半分やけっぱちな口調でこう言った。
「ああもう! 恋人は大事にしたいだろ? 傷つけたくないだろ?」
「そうですね」
「だから、爪は、短く丸くしておくんだよ!」
「ちょっと話が飛躍してる気がするんですけど」
「行間を読んでくれよ……!!」
恋人をうっかり傷つけないように爪を短く整えるというのなら、篠崎先輩もそうするべきだろう。
でも、していない。果たして月島さんと篠崎先輩の違いとは何なのか。僕はしばし悩み込んだが、やはり答えは見つからなかった。
まだピンときていない様子の僕を見て、篠崎先輩は天を仰いでいる。
そして、大きな溜息を吐くと、僕の首根っこを引っ掴んで壁際へ引きずり、周囲に聞こえないほどの声量で囁いた。
「恋人同士だと、普通触れないところに触れたりするだろ?」
「はあ」
「その……繊細なところに触れた時、爪の先が荒いと痛いんだよ。だから、さぁ……ちくしょう、なんで俺は職場でこんな話をしてるんだ」
段々尻すぼみになりながらも核心に触れた篠崎先輩は、話の半ばでぐったりと力無く俯いてしまった。
流石の僕も、そこまで言われれば分かった。
月島さんが、あれほど熱心に爪を整えていた理由が。
篠崎先輩の身体を傷つけたくないという、その想いが。
「……!」
途端に、今まで自分がトンデモない質問を繰り返していたことに気が付き赤面する。
篠崎先輩が滅茶苦茶言い淀んでいた訳を理解した。
オマケに、余計なことにまで気付いてしまった。
篠崎先輩は先ほど、「爪の先が荒いと痛い」と言った。触れられる側の、当事者目線ではないと出てこない台詞だ。
その上、少し前には「男だけど自分は特殊だ」とも話していた。
つまり篠崎先輩は、月島さんに『繊細なところ』を触られていて、『男』としての配慮が必要ない立場だという訳で……まあ、そういうことだ。
そして、僕はそんな夜の事情を課内でつまびらかにしてしまった訳で――、
「すっ、すいません! 先輩にとんだセクハラを……むぐッ!」
「いいから、もうお前は黙れ!!」
眦を吊り上げた篠崎先輩が、謝罪の言葉ごと僕の顔面を握り潰す。
顔の形が変わりそうなほどの握力に呻きながらも、文句は言えないなと猛省するのであった。
◆ ◆ ◆
「――おい、亮介」
「なんだい?」
「今日、神原に変なこと言っただろ」
「ん?」
「つ、爪がどう、とか……」
「ああ、ほんの冗談だったのだが」
「お前はいい加減、冗談が下手くそなことを自覚しろ……!!」
「それはすまなかった。――でも、」
ひたり、と濡れた指先が俺の身体に触れる。
反射的に息を詰めた俺に、月島は意地の悪い笑みを向けた。
「今はこちらに集中してくれないか? せっかく爪も綺麗に整えたのだ」
「てめ、全く悪びれてないな……!? ……くっ」
ふてぶてしい男に向けた悪態は、体内に滑り込まされた指先によって遮られる。
繊細なところに潜り込まされたその指は、昼に爪が欠けたことなど感じさせないほど滑らかで。
「どうだ?」と言わんばかりの月島を、俺は精一杯睨み付けた。
指先に宿った愛情を感じて嬉しくなったなど、口が裂けても言ってやらないのだ。
25
あなたにおすすめの小説
平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)
優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。
本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
親友が虎視眈々と僕を囲い込む準備をしていた
こたま
BL
西井朔空(さく)は24歳。IT企業で社会人生活を送っていた。朔空には、高校時代の親友で今も交流のある鹿島絢斗(あやと)がいる。大学時代に起業して財を成したイケメンである。賃貸マンションの配管故障のため部屋が水浸しになり使えなくなった日、絢斗に助けを求めると…美形×平凡と思っている美人の社会人ハッピーエンドBLです。
ハイスペックED~元凶の貧乏大学生と同居生活~
みきち@書籍発売中!
BL
イケメン投資家(24)が、学生時代に初恋拗らせてEDになり、元凶の貧乏大学生(19)と同居する話。
成り行きで添い寝してたらとんでも関係になっちゃう、コメディ風+お料理要素あり♪
イケメン投資家(高見)×貧乏大学生(主人公:凛)
平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法
あと
BL
「よし!別れよう!」
元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子
昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。
攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。
……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。
pixivでも投稿しています。
攻め:九條隼人
受け:田辺光希
友人:石川優希
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグ整理します。ご了承ください。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件
ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。
せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。
クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom ×
(自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。
『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。
(全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます)
https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390
サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。
同人誌版と同じ表紙に差し替えました。
表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる