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Ⅱ
翌日
「……さん、……さん、……い!」
「?」
翌日、私はそんな風に自分を呼ぶ声と、体をゆすられた衝撃で目を覚まします。
あれ、私は何で寝てしまっているんだっけ? 目をどうやら私はうちの居住部分ではなくお店のスペースでいつの間にか寝てしまっていたらしいのです。
そして目を覚まして気が付きます。
あれ? 私は寝ようと思ってはないのに。しかも私は一人暮らしなのに誰に起こされたのでしょう?
疑問に思って顔を上げると、そこに立っていたのは慌てた表情のサリーでした。
「セシルさん!? 良かったです、やっと起きてくれて!」
が、私が起きたのを見て彼女はほっと息を吐きます。そんな彼女を見て私はようやく寝る前の状況を思い出しました。
昨夜遅くまで調剤を行っていた私は、作業が一区切りついたので少しだけ仮眠をとろうと思って突っ伏したところ、そのまま寝てしまっていたようです。
そのことを思い出した私は心臓をぎゅっとわしづかみされたような気持ちになります。
「しまった! もう朝だよね!?」
「お、落ち着いてくださいセシルさん。まだ日は昇っていません。ですから大丈夫です」
「本当に?」
確かに窓の外はまだ薄明るいぐらいで日は昇っていません。それを見て私はひとまずほっとしました。
「ありがとう、サリーが起こしてくれなかったら大変なことになっていたかもしれません。でもどうして?」
「ほら、昨日私にここで働かないか誘ってくれたじゃないですか。父さんに訊いたらいいって言ってくれたので少し早めにここに来たら寝ていたということです。まさかドアを開けたまま寝ているとは思いませんでしたが。お金もあるので気を付けてくださいね」
「確かに……何て恥ずかしいのでしょう」
たまたま何事もなかったから良かったものの、何かあったら遅かったでしょう。
そんな私にサリーは沸かしたばかりのコーヒーを差し出してくれます。
「とりあえずこれをどうぞ」
「ありがとう」
コーヒーを飲むと、ようやく目が覚めて脳が働いてきます。
目の前には昨日作った薬が大量に並んでいます。……包装もされていないままで。
それを見て私はパニックになりそうでしたが、どうにか自分を落ち着けます。商品を包装しないとお店を開くことは出来ませんが、一番に決めないといけないことは。
「まずはサリーのお給料から決めようか。一日銀貨十五枚でどう?」
「え、そんなにもらっていいのですか!?」
サリーは驚きます。正直寝起きでぱっと算出した金額なので合っていないかもしれませんが、昨日の儲けから考えるとそれくらいのはずです。
「でも普通のお店だと一時間働いても銅貨六、七枚って聞きますよ」
大体銅貨十枚で銀貨一枚ぐらいの交換レートです。
「それだったら大体正しくないですか? 昨日も夜遅くまで手伝ってもらいましたし、今日も朝早くから来てもらいました。それにサリーは初対面の人を雇うより信用出来ますし、知識もあります」
「なるほど……言われてみればそこまでおかしくない気がしてきました」
サリーが頷きます。私はぱっと求めた金額がそこまでおかしいものではなかったことに安堵しました。
「と言う訳でまずはこの薬を包装しましょう……あ! 薬は買ったけど包装紙までは買ってませんでした!」
「だったら私が買ってきます!」
「お願い、サリー」
こうして今日も朝からばたばたで、日が昇ると同時に来てくださったお客さんを少し待たせることにはなってしまいましたが、どうにか作った薬を包装して店をオープンすることが出来たのでした。
さすがに殿下がやってきて噂になった昨日ほどではないですが、今日も朝からお客さんがひっきりなしに訪れます。初日に全然お客さんが来なくて自分で外まで呼び込みに出ていたのが嘘のようでした。
午前中はサリーに店番を手伝ってもらいながら、寝てしまって終わらなかった分の調剤と包装を私が行います。そして昼ごろに差し掛かりお客さんが減って来た頃合いを見てサリーと交代で休憩をとりました。もっとも、私は寝不足のせいでお昼を食べると眠くなってしまい、サリーに頑張ってもらって少し仮眠をとりましたが。
また、今日は店頭に並べていないような珍しい薬の注文もいくつかいただきました。うちは基本的な薬だけを店頭に並べ、稀少な薬は注文を受けてから作ることにしています。というのも、珍しい薬は種類が多すぎて、全てをあらかじめ作っておくとお金がかかりすぎてしまうせいです。
そんな訳で、今日も大盛況のまま一日が終わったのでした。
「お疲れ様です」
最後のお客さんが店内から出ていくと、サリーが疲れた表情で私に声をかけてくれます。
ですが今日の仕事が終わった訳ではありません。
「サリー、私はこれから注文された分の薬の材料を買いに行くから、売上の集計と帳簿、あと夕飯をお願いします」
「確かに、これは銀貨十五枚もらっても多すぎないような気がします」
サリーは苦笑いで言うのでした。
ともあれ、こうしてどうにかお店は営業を続けることが出来たのです。
===
ざっくり、銀貨一枚=千円ぐらいのイメージです。
「?」
翌日、私はそんな風に自分を呼ぶ声と、体をゆすられた衝撃で目を覚まします。
あれ、私は何で寝てしまっているんだっけ? 目をどうやら私はうちの居住部分ではなくお店のスペースでいつの間にか寝てしまっていたらしいのです。
そして目を覚まして気が付きます。
あれ? 私は寝ようと思ってはないのに。しかも私は一人暮らしなのに誰に起こされたのでしょう?
疑問に思って顔を上げると、そこに立っていたのは慌てた表情のサリーでした。
「セシルさん!? 良かったです、やっと起きてくれて!」
が、私が起きたのを見て彼女はほっと息を吐きます。そんな彼女を見て私はようやく寝る前の状況を思い出しました。
昨夜遅くまで調剤を行っていた私は、作業が一区切りついたので少しだけ仮眠をとろうと思って突っ伏したところ、そのまま寝てしまっていたようです。
そのことを思い出した私は心臓をぎゅっとわしづかみされたような気持ちになります。
「しまった! もう朝だよね!?」
「お、落ち着いてくださいセシルさん。まだ日は昇っていません。ですから大丈夫です」
「本当に?」
確かに窓の外はまだ薄明るいぐらいで日は昇っていません。それを見て私はひとまずほっとしました。
「ありがとう、サリーが起こしてくれなかったら大変なことになっていたかもしれません。でもどうして?」
「ほら、昨日私にここで働かないか誘ってくれたじゃないですか。父さんに訊いたらいいって言ってくれたので少し早めにここに来たら寝ていたということです。まさかドアを開けたまま寝ているとは思いませんでしたが。お金もあるので気を付けてくださいね」
「確かに……何て恥ずかしいのでしょう」
たまたま何事もなかったから良かったものの、何かあったら遅かったでしょう。
そんな私にサリーは沸かしたばかりのコーヒーを差し出してくれます。
「とりあえずこれをどうぞ」
「ありがとう」
コーヒーを飲むと、ようやく目が覚めて脳が働いてきます。
目の前には昨日作った薬が大量に並んでいます。……包装もされていないままで。
それを見て私はパニックになりそうでしたが、どうにか自分を落ち着けます。商品を包装しないとお店を開くことは出来ませんが、一番に決めないといけないことは。
「まずはサリーのお給料から決めようか。一日銀貨十五枚でどう?」
「え、そんなにもらっていいのですか!?」
サリーは驚きます。正直寝起きでぱっと算出した金額なので合っていないかもしれませんが、昨日の儲けから考えるとそれくらいのはずです。
「でも普通のお店だと一時間働いても銅貨六、七枚って聞きますよ」
大体銅貨十枚で銀貨一枚ぐらいの交換レートです。
「それだったら大体正しくないですか? 昨日も夜遅くまで手伝ってもらいましたし、今日も朝早くから来てもらいました。それにサリーは初対面の人を雇うより信用出来ますし、知識もあります」
「なるほど……言われてみればそこまでおかしくない気がしてきました」
サリーが頷きます。私はぱっと求めた金額がそこまでおかしいものではなかったことに安堵しました。
「と言う訳でまずはこの薬を包装しましょう……あ! 薬は買ったけど包装紙までは買ってませんでした!」
「だったら私が買ってきます!」
「お願い、サリー」
こうして今日も朝からばたばたで、日が昇ると同時に来てくださったお客さんを少し待たせることにはなってしまいましたが、どうにか作った薬を包装して店をオープンすることが出来たのでした。
さすがに殿下がやってきて噂になった昨日ほどではないですが、今日も朝からお客さんがひっきりなしに訪れます。初日に全然お客さんが来なくて自分で外まで呼び込みに出ていたのが嘘のようでした。
午前中はサリーに店番を手伝ってもらいながら、寝てしまって終わらなかった分の調剤と包装を私が行います。そして昼ごろに差し掛かりお客さんが減って来た頃合いを見てサリーと交代で休憩をとりました。もっとも、私は寝不足のせいでお昼を食べると眠くなってしまい、サリーに頑張ってもらって少し仮眠をとりましたが。
また、今日は店頭に並べていないような珍しい薬の注文もいくつかいただきました。うちは基本的な薬だけを店頭に並べ、稀少な薬は注文を受けてから作ることにしています。というのも、珍しい薬は種類が多すぎて、全てをあらかじめ作っておくとお金がかかりすぎてしまうせいです。
そんな訳で、今日も大盛況のまま一日が終わったのでした。
「お疲れ様です」
最後のお客さんが店内から出ていくと、サリーが疲れた表情で私に声をかけてくれます。
ですが今日の仕事が終わった訳ではありません。
「サリー、私はこれから注文された分の薬の材料を買いに行くから、売上の集計と帳簿、あと夕飯をお願いします」
「確かに、これは銀貨十五枚もらっても多すぎないような気がします」
サリーは苦笑いで言うのでした。
ともあれ、こうしてどうにかお店は営業を続けることが出来たのです。
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ざっくり、銀貨一枚=千円ぐらいのイメージです。
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