夫から「余計なことをするな」と言われたので、後は自力で頑張ってください

今川幸乃

文字の大きさ
1 / 40

ベンとアンナ

しおりを挟む
「余計なことをするな、お前のせいで全てがうまくいかない!」

 ある日、私は婚約者のベンに呼び出されたかと思うと突然そんなことを言われます。ベンは名門貴族アスカム公爵家の生まれなのですが、公爵の跡継ぎとしてふさわしい人物にならなければならないというプレッシャーと日々戦っているせいか、いつも苛々しているように見えます。

 今日も理由はよく分かりませんが、私に指を突き付けてそう宣言しました。
 怒っているのは分かりますが、そう言われても私はどうしていいか分かりません。

「えっと……あの、それはどういうことでしょうか?」
「どうもこうもない! お前が僕が何も言わずに色々するせいでめちゃくちゃになっている! この前は勝手に書類を片付けたせいで書類がどこにあるか分からなかった!」
「それは客間に大事そうな書類が置きっぱなしになっていたからで……」

 説明をしますが、彼は私の言葉を遮って再び怒鳴ります。

「言い訳するな! あれを探すのにどれだけ時間がかかったと思っているんだ!」
「そうは言ってもあそこに置きっぱなしにして家の外の方の目に触れては困ると思ったので……」

 確かに勝手に片付けたのは悪いかもしれませんが、一応ベンの部屋の机の上に置いておいたのですが。

「それならそうしたということをちゃんと報告しろ!」
「ですがその時あなたは誰も声をかけるなと言って部屋に引きこもっていたので……」

 確か重要な来客があったので邪魔をするなと言っていたはずです。
 もちろん緊急のことでしたらその間でも声をかけますが、書類を片付けただけでそこまで言われるのはおかしいです。
 なぜここまで一方的に怒られなければならないのでしょうか。

「くそ、ああ言えばこう言う! 全く、何て口うるさい婚約者なんだ」
「……それはすみません」

 謝りつつも、内心ベンの狭量さに嘆息します。そもそも私よりも今のベンの方がよほど口うるさいと思うのですが。

 私、アンナはスペンサー公爵家という最近勢力を伸ばしている家に生まれた娘です。
 元は中堅貴族に過ぎなかったのですが祖父、父上と優秀な当主が続き、十年ほど前に王国全体で飢饉が起こった時の対応で手柄を立て、その功で公爵位をもらいました。
 そんな家であるため私も幼いころから跡継ぎである兄上とほぼ同じような教育を受けて育ったのです。

 そして去年十五になった時、うちとは逆に伝統があって勢いがないアスカム公爵家のベンの元に嫁ぎました。
 嫁ぐ際にアスカム公爵からはベンの至らぬところがあって補って欲しい、と言われたこともあり私なりにベンのことを色々手助けしてきたつもりでしたが、完全に逆効果だったようです。

「……でも本当に大丈夫でしょうか? 他にも色々私がしていることがありましたが」
「ああ、そういうのは本当に迷惑しているんだ。僕だってもう成人してるんだ、もう少し信頼して欲しいね」
「そこまで言うなら分かりました」

 そう言われてしまっては言うことを聞かざるを得ません。
 私はこれまでベンのために良かれと思ってやっていたことをやめることにしました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】結婚しておりませんけど?

との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」 「私も愛してるわ、イーサン」 真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。 しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。 盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。 だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。 「俺の苺ちゃんがあ〜」 「早い者勝ち」 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\ R15は念の為・・

白い結婚で結構ですわ。殿下より、私の自由のほうが大事ですので

鍛高譚
恋愛
「第二王子との婚約? でも殿下には平民の恋人がいるらしいんですけど? ――なら、私たち“白い結婚”で結構ですわ。お好きになさってくださいな、殿下」 自由気ままに読書とお茶を楽しむのがモットーの侯爵令嬢・ルージュ。 ある日、突然“第二王子リオネルとの政略結婚”を押しつけられてしまう。 ところが当の殿下は平民の恋人に夢中で、 「形式上の夫婦だから干渉しないでほしい」などと言い出す始末。 むしろ好都合とばかりに、ルージュは優雅な“独身気分”を満喫するはずが…… いつしか、リナという愛人と妙に仲良くなり、 彼女を巡る宮廷スキャンダルに巻き込まれ、 しまいには婚約が白紙になってしまって――!? けれどこれは、ルージュが本当の幸せを掴む始まりにすぎなかった。 自分を心から大切にしてくれる“新しい旦那様”候補が現れて、 さあ、思い切り自由に愛されましょう! ……そして、かの王子様の結末は“ざまぁ”なのか“自業自得”なのか? 自由気ままな侯爵令嬢が切り開く、 “白い結婚破談”からの痛快ざまぁ&本当の恋愛譚、はじまります。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

【完結】結婚して12年一度も会った事ありませんけど? それでも旦那様は全てが欲しいそうです

との
恋愛
結婚して12年目のシエナは白い結婚継続中。 白い結婚を理由に離婚したら、全てを失うシエナは漸く離婚に向けて動けるチャンスを見つけ・・  沈黙を続けていたルカが、 「新しく商会を作って、その先は?」 ーーーーーー 題名 少し改変しました

『婚約破棄されたので王太子女となります。殿下より上位です』

鷹 綾
恋愛
「君は王太子妃に相応しくない」 その一言で、私は婚約を破棄されました。 理由は“真実の愛”。選ばれたのは、可憐な令嬢。 ……ええ、どうぞご自由に。 私は泣きません。縋りません。 なぜなら——王家は、私を手放せないから。 婚約は解消。 けれど家格、支持、実務能力、そして民の信頼。 失ったのは殿下の隣の席だけ。 代わりに私は、王太子女として王政補佐の任を命じられます。 最初は誰もが疑いました。 若い、女だ、感情的だ、と。 ならば証明しましょう。 怒らず、怯えず、排除せず。 反対も忠誠も受け止めながら、国を揺らさずに保つことを。 派手な革命は起こしません。 大逆転も叫びません。 ただ、静かに積み上げます。 そして気づけば—— “殿下の元婚約者”ではなく、 “揺れない王”と呼ばれるようになるのです。 これは、婚約破棄から始まる静かな逆転譚。 王冠の重みを受け入れた一人の女性が、 国を、そして自分の立場を塗り替えていく物語です。

誰からも必要とされていないから出て行ったのに、どうして皆追いかけてくるんですか?

木山楽斗
恋愛
伯爵令嬢ミリーシャは、自身が誰からも必要とされていないことを悟った。 故に彼女は、家から出て行くことを決めた。新天地にて、ミリーシャは改めて人生をやり直そうと考えたのである。 しかし彼女の周囲の人々が、それを許さなかった。ミリーシャは気付いていなかったのだ。自身の存在の大きさを。

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

処理中です...