2 / 40
メイド長の相談
しおりを挟む
「あの、アンナ様、少し相談があるのですが……」
ベンの部屋を出て、余計なことをするなと言われたので私がくつろいでいると。
不意にメイド長のメリッサに声を掛けられます。
彼女は五十を超えるメイドで、成人してからずっとこの屋敷で奉公しているという超ベテランのメイドです。しかし全く老いを感じさせず、いつも新入りのメイドたちも驚くぐらいの勢いで仕事をこなしています。私も屋敷に来たばかりの時は随分世話になりましたし、最近は逆に相談を受けることも多くなりました。
「どうしたの?」
「実はメイドの一人が退職したいと言っていて、理由を訊くと待遇が他のメイドといざこざがあるらしいのです。私としてはどちらにも非があると思うのですが、彼女は仕事は出来るのでどうしたものかと」
「そういうことならちょっと話を……あ」
そこまで言いかけて私は「余計なことをするな」と言われたことを思い出します。
ここでまた勝手にこの件を解決すればベンに怒られることでしょう。
「そういう話ならベンさんにした方がいいかもしれないわ」
「え、若旦那様に?」
これまで私がそんなことを言ったことはないので、メリッサは困惑します。
「でも若旦那様にこんなことを話してもうっとうしがられないでしょうか?」
「そうかもしれませんが、最近はそういうこともご自身で判断する経験を積みたいとのことです」
そんなことは一言も言っていませんでしたが、さすがにあの時言われたことをそのままメリッサに話す訳にもいかないので私は善意で補足して伝えます。
メリッサも少し首をかしげていましたが、それを聞いて頷きます。
これまでメリッサとやりとりするのはベンよりも私の方が多かったのですが、そんな彼女の目線で見てもベンはもう少し色んな経験を積んだ方がいいと思ったのかもしれません。
「言われてみればそうかもしれませんね。でしたら伝えてみます」
「ええ。でも、彼はこういうのは初めてだから出来るだけ丁寧に状況を説明した方がいいかも」
「なるほど、そうですね」
「あと、ベンさんはメイドが普段何をしているかもよく分かってないと思うので、まずはその辺の説明もした方が、それから……」
「はい、はい、なるほど……」
私はベンに話した方がいいと思うことを述べていると結局普通に相談を聞くのと同じぐらいの時間がかかってしまいます。
ですがこれだけ念を押しておけばベンもメリッサの話を聞いてうまく判断してくれるでしょう。
「……ありがとうございます」
こうして私はメリッサが部屋を出ていくのをうまくいけばいいのですが、と思いつつ見送るのでした。
ベンの部屋を出て、余計なことをするなと言われたので私がくつろいでいると。
不意にメイド長のメリッサに声を掛けられます。
彼女は五十を超えるメイドで、成人してからずっとこの屋敷で奉公しているという超ベテランのメイドです。しかし全く老いを感じさせず、いつも新入りのメイドたちも驚くぐらいの勢いで仕事をこなしています。私も屋敷に来たばかりの時は随分世話になりましたし、最近は逆に相談を受けることも多くなりました。
「どうしたの?」
「実はメイドの一人が退職したいと言っていて、理由を訊くと待遇が他のメイドといざこざがあるらしいのです。私としてはどちらにも非があると思うのですが、彼女は仕事は出来るのでどうしたものかと」
「そういうことならちょっと話を……あ」
そこまで言いかけて私は「余計なことをするな」と言われたことを思い出します。
ここでまた勝手にこの件を解決すればベンに怒られることでしょう。
「そういう話ならベンさんにした方がいいかもしれないわ」
「え、若旦那様に?」
これまで私がそんなことを言ったことはないので、メリッサは困惑します。
「でも若旦那様にこんなことを話してもうっとうしがられないでしょうか?」
「そうかもしれませんが、最近はそういうこともご自身で判断する経験を積みたいとのことです」
そんなことは一言も言っていませんでしたが、さすがにあの時言われたことをそのままメリッサに話す訳にもいかないので私は善意で補足して伝えます。
メリッサも少し首をかしげていましたが、それを聞いて頷きます。
これまでメリッサとやりとりするのはベンよりも私の方が多かったのですが、そんな彼女の目線で見てもベンはもう少し色んな経験を積んだ方がいいと思ったのかもしれません。
「言われてみればそうかもしれませんね。でしたら伝えてみます」
「ええ。でも、彼はこういうのは初めてだから出来るだけ丁寧に状況を説明した方がいいかも」
「なるほど、そうですね」
「あと、ベンさんはメイドが普段何をしているかもよく分かってないと思うので、まずはその辺の説明もした方が、それから……」
「はい、はい、なるほど……」
私はベンに話した方がいいと思うことを述べていると結局普通に相談を聞くのと同じぐらいの時間がかかってしまいます。
ですがこれだけ念を押しておけばベンもメリッサの話を聞いてうまく判断してくれるでしょう。
「……ありがとうございます」
こうして私はメリッサが部屋を出ていくのをうまくいけばいいのですが、と思いつつ見送るのでした。
165
あなたにおすすめの小説
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
【完結】結婚しておりませんけど?
との
恋愛
「アリーシャ⋯⋯愛してる」
「私も愛してるわ、イーサン」
真実の愛復活で盛り上がる2人ですが、イーサン・ボクスと私サラ・モーガンは今日婚約したばかりなんですけどね。
しかもこの2人、結婚式やら愛の巣やらの準備をはじめた上に私にその費用を負担させようとしはじめました。頭大丈夫ですかね〜。
盛大なるざまぁ⋯⋯いえ、バリエーション豊かなざまぁを楽しんでいただきます。
だって、私の友達が張り切っていまして⋯⋯。どうせならみんなで盛り上がろうと、これはもう『ざまぁパーティー』ですかね。
「俺の苺ちゃんがあ〜」
「早い者勝ち」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結しました。HOT2位感謝です\(//∇//)\
R15は念の為・・
【完結】要らないと言っていたのに今更好きだったなんて言うんですか?
星野真弓
恋愛
十五歳で第一王子のフロイデンと婚約した公爵令嬢のイルメラは、彼のためなら何でもするつもりで生活して来た。
だが三年が経った今では冷たい態度ばかり取るフロイデンに対する恋心はほとんど冷めてしまっていた。
そんなある日、フロイデンが「イルメラなんて要らない」と男友達と話しているところを目撃してしまい、彼女の中に残っていた恋心は消え失せ、とっとと別れることに決める。
しかし、どういうわけかフロイデンは慌てた様子で引き留め始めて――
【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?
との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」
結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。
夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、
えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。
どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに?
ーーーーーー
完結、予約投稿済みです。
R15は、今回も念の為
最愛の人に裏切られ死んだ私ですが、人生をやり直します〜今度は【真実の愛】を探し、元婚約者の後悔を笑って見届ける〜
腐ったバナナ
恋愛
愛する婚約者アラン王子に裏切られ、非業の死を遂げた公爵令嬢エステル。
「二度と誰も愛さない」と誓った瞬間、【死に戻り】を果たし、愛の感情を失った冷徹な復讐者として覚醒する。
エステルの標的は、自分を裏切った元婚約者と仲間たち。彼女は未来の知識を武器に、王国の影の支配者ノア宰相と接触。「私の知性を利用し、絶対的な庇護を」と、大胆な契約結婚を持ちかける。
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
【完結】出逢ったのはいつですか? えっ? それは幼馴染とは言いません。
との
恋愛
「リリアーナさーん、読み終わりましたぁ?」
今日も元気良く教室に駆け込んでくるお花畑ヒロインに溜息を吐く仲良し四人組。
ただの婚約破棄騒動かと思いきや・・。
「リリアーナ、だからごめんってば」
「マカロンとアップルパイで手を打ちますわ」
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結迄予約投稿済みです。
R15は念の為・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる