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デニスとの出会いⅢ
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事件が解決し、周囲の野次馬が解散したところで私は出ていきます。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
「ん? ……君はもしかしてアンナか? 今の者たちはスペンサー家の者たちだったのか?」
「え、私のことを知っているのでしょうか?」
私はデニスが自分の名前を知っていたことに少し驚きます。デニスの名前は知っていましたが、直接話したことはほとんどありません。幼いころ挨拶ぐらいはしたぐらいはあるかもしれませんが。
が、デニスは頷きます。
「ああ、スペンサー家のご令嬢だろう? 前に公爵と話した時に自慢の娘だと言っていたよ」
「親馬鹿なもので……お恥ずかしい限りです」
まさか父上にそんな風に言われていたとは。
しかも親馬鹿の相手がデニスであると聞いて恥ずかしくなります。
「いやいや、僕も家庭教師の先生から時々名前を聞くよ。その評判を聞く限り親馬鹿になるのも無理はない」
「それはありがとうございます」
家の事であれば父上から直接教わることも多かったのですが、一般的な歴史や文化、学問やその他貴族の政務に関わるようなことであれば高名な家庭教師の方に教わることも多かったのです。高名な教師と言えば数も限られますから、デニスを教えた人と被っていてもおかしくはありません。
嬉しいのですが、ちょうどうちの者が醜態を晒したところなので褒められれば褒められるほど恥ずかしくなってしまいます。
「しかしスペンサー公爵家の者たちであればあのような振る舞いをすることはないのではないか?」
そう言ってデニスは首をかしげます。
「いえ、私は今アスカム家に輿入れしておりまして、実はそちらの者なのです」
「アスカム家というと……失礼、誰だったかな?」
デニスは再び首をかしげました。
「ベンです」
「ああ、そう言えばそんな名前だったな。もしかして、彼が命じたのかい?」
「そのようです」
「それは大変だな」
彼は今の状況と無名のベンの評判から何かを察したのか、私に同情的な視線を向けてきます。
「ちなみに今日はこんなところで何を? お使いか?」
そう私に話しかけてくるデニスの言葉が自然だったせいか、私はついつい話してしまいます。
「実は今ベンとあまり折り合いがよくなくて……一人で王都を観光しようかと」
「そうか。僕はまだ相手が決まっている訳ではないが……確かに突然決められた相手と仲良くするのは大変かもしれないな。しかも今の光景を見ていると、ベンがどんな人物か浮かびあがってくるようだ」
そう言われてデニスの大人な対応に比べて、ほぼ初対面の相手に夫の愚痴を言ってしまった自分が急に恥ずかしくなってきます。
「い、いえ、夫婦仲が悪いのはお互いに非があるということですので」
「詳しい事情は分からないが、確かにそうかもしれないな。とはいえ、やはり相手が何を自分に望んでいるのかを知るところからじゃないか? と言っても僕はそういう相手がいないから受け売りのことしか言えないけど」
「確かに、言われてみれば」
ベンが私に望んでいないことは嫌というほど聞かされましたが、その逆はこれまで話題に上がったこともありません。
一度それを聞いてみれば、また関係も変わるかもしれません。
「ありがとうごじあます、今度訊いてみます」
「そうか? まあ僕の言葉でうまくいくようになったならいいんだが。それじゃあ」
「はい、色々ありがとうございました」
こうして私はデニスと別れたのですが、少しだけ気持ちが軽くなるのを感じたのでした。
「すみません、ご迷惑おかけしました」
「ん? ……君はもしかしてアンナか? 今の者たちはスペンサー家の者たちだったのか?」
「え、私のことを知っているのでしょうか?」
私はデニスが自分の名前を知っていたことに少し驚きます。デニスの名前は知っていましたが、直接話したことはほとんどありません。幼いころ挨拶ぐらいはしたぐらいはあるかもしれませんが。
が、デニスは頷きます。
「ああ、スペンサー家のご令嬢だろう? 前に公爵と話した時に自慢の娘だと言っていたよ」
「親馬鹿なもので……お恥ずかしい限りです」
まさか父上にそんな風に言われていたとは。
しかも親馬鹿の相手がデニスであると聞いて恥ずかしくなります。
「いやいや、僕も家庭教師の先生から時々名前を聞くよ。その評判を聞く限り親馬鹿になるのも無理はない」
「それはありがとうございます」
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嬉しいのですが、ちょうどうちの者が醜態を晒したところなので褒められれば褒められるほど恥ずかしくなってしまいます。
「しかしスペンサー公爵家の者たちであればあのような振る舞いをすることはないのではないか?」
そう言ってデニスは首をかしげます。
「いえ、私は今アスカム家に輿入れしておりまして、実はそちらの者なのです」
「アスカム家というと……失礼、誰だったかな?」
デニスは再び首をかしげました。
「ベンです」
「ああ、そう言えばそんな名前だったな。もしかして、彼が命じたのかい?」
「そのようです」
「それは大変だな」
彼は今の状況と無名のベンの評判から何かを察したのか、私に同情的な視線を向けてきます。
「ちなみに今日はこんなところで何を? お使いか?」
そう私に話しかけてくるデニスの言葉が自然だったせいか、私はついつい話してしまいます。
「実は今ベンとあまり折り合いがよくなくて……一人で王都を観光しようかと」
「そうか。僕はまだ相手が決まっている訳ではないが……確かに突然決められた相手と仲良くするのは大変かもしれないな。しかも今の光景を見ていると、ベンがどんな人物か浮かびあがってくるようだ」
そう言われてデニスの大人な対応に比べて、ほぼ初対面の相手に夫の愚痴を言ってしまった自分が急に恥ずかしくなってきます。
「い、いえ、夫婦仲が悪いのはお互いに非があるということですので」
「詳しい事情は分からないが、確かにそうかもしれないな。とはいえ、やはり相手が何を自分に望んでいるのかを知るところからじゃないか? と言っても僕はそういう相手がいないから受け売りのことしか言えないけど」
「確かに、言われてみれば」
ベンが私に望んでいないことは嫌というほど聞かされましたが、その逆はこれまで話題に上がったこともありません。
一度それを聞いてみれば、また関係も変わるかもしれません。
「ありがとうごじあます、今度訊いてみます」
「そうか? まあ僕の言葉でうまくいくようになったならいいんだが。それじゃあ」
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こうして私はデニスと別れたのですが、少しだけ気持ちが軽くなるのを感じたのでした。
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