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パーティー
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さて、男性を助けたのはいいですが、私が乗っていた馬車はリリーを載せてすでに帰宅してしまっている。そのため、私は家まで徒歩で帰らねばならず、さらに時間がかかってしまった。
そのため当然パーティーの開始には間に合わず、遅れて帰って来た私は使用人たちの白い目に晒された。
「殿下がくるパーティーに遅刻するなんてありえない」
「どうせ無理だからって逃げ出そうとしたんじゃない?」
使用人たちはそんな陰口をわざと私に聞こえるようにささやく。以前は陰口は本当に陰口だったんだけど、最近ではもう全く遠慮がない。
とはいえ今の私はむしろすっきりしていた。私は自分の意志を貫いてパーティーに遅れただけだから何を言われても構わない。
それに、どうせウルムート家に嫁に出されればこいつらともお別れだ。
私が何食わぬ顔でドレスに着替えようとしていると、今度は顔を真っ赤にした父上がやってくる。
そして私を見るなり怒鳴りつけた。
「セシル! 全く、お前は何をしてくれているんだ! 殿下がいらっしゃるパーティーで遅刻とは何を考えている! お前のせいでリリーまで恥をかくんだ! いい加減にしろ!」
「……」
散々私のことを邪魔者扱いして来なかったら来なかったで怒るのは理不尽ではないか、と思ったがもはや私は何も言わない。
「全くお前はいつもいつも……、リリーは……だというのに……、少しは我が家の長女であるという自覚を持て」
殿下を招いたパーティーで一応主役であるところの私が遅刻して、父は苛々していたのだろう、お説教はいつにもまして長かった。
ひとしきり怒った父はやがて静かになる。
「こほん、まあいい。どうせお前はもうすぐウルムート侯爵家に嫁ぐのだ。それに殿下も所用があって少し遅くなるらしいからな」
ん、私だけでなく殿下まで遅くなる? その言葉に私は少し引っ掛かる。言うまでもなく、クリストフ殿下はあらかじめ決まっている予定に遅刻するような方ではないし、すでに予定からは結構な時間が過ぎている。何かあったのだろうか。
が、私が口を開こうとしたときだった。
「殿下がいらっしゃったぞ!」
と遠くから呼びかける声が聞こえてくる。
それを聞いて父上も執事もメイドも使用人も皆正門の方に向かった。
そのため私はぽつんと取り残される。別に殿下に会いにいってもいいが、どうせ邪魔者と思われるだけだろう。
とはいえ会場にいないと怒られそうなので、今のうちに着替えを終えると、会場の隅でぼーっと立っている。
そこへ満面の笑みを浮かべて接待する私の両親、そして大勢の使用人に囲まれてリリーとクリストフ殿下が並んで入ってくる。
悲しいながら、二人が並んで歩いている姿はまるで絵画の中の風景のようで、私からしてもお似合いだと認めざるを得なかった。うちの使用人も、殿下の家来たちも皆二人を祝福している。そんな風に見えて、そこには全く私が入り込む隙などなさそうだった。
そんな時だった。
不意にクリストフ殿下が言う。
「そう言えば、この家にはリリー殿以外にもご令嬢がいるとうかがっていたが?」
彼の言葉に一瞬場の空気が冷たくなる。
が、すぐに父上が愛想笑いを浮かべて反応した。
「ああ、セシルのことでございますね。殿下にお会いさせるほどの者ではありませんが」
「それは僕が決めることだ」
「おいセシル、殿下がお呼びだ」
父上は私に向かってぞんざいに声をかけた。
その声に呼ばれて私はいよいよか、と緊張しながら殿下の方へ歩いていくのだった。
そのため当然パーティーの開始には間に合わず、遅れて帰って来た私は使用人たちの白い目に晒された。
「殿下がくるパーティーに遅刻するなんてありえない」
「どうせ無理だからって逃げ出そうとしたんじゃない?」
使用人たちはそんな陰口をわざと私に聞こえるようにささやく。以前は陰口は本当に陰口だったんだけど、最近ではもう全く遠慮がない。
とはいえ今の私はむしろすっきりしていた。私は自分の意志を貫いてパーティーに遅れただけだから何を言われても構わない。
それに、どうせウルムート家に嫁に出されればこいつらともお別れだ。
私が何食わぬ顔でドレスに着替えようとしていると、今度は顔を真っ赤にした父上がやってくる。
そして私を見るなり怒鳴りつけた。
「セシル! 全く、お前は何をしてくれているんだ! 殿下がいらっしゃるパーティーで遅刻とは何を考えている! お前のせいでリリーまで恥をかくんだ! いい加減にしろ!」
「……」
散々私のことを邪魔者扱いして来なかったら来なかったで怒るのは理不尽ではないか、と思ったがもはや私は何も言わない。
「全くお前はいつもいつも……、リリーは……だというのに……、少しは我が家の長女であるという自覚を持て」
殿下を招いたパーティーで一応主役であるところの私が遅刻して、父は苛々していたのだろう、お説教はいつにもまして長かった。
ひとしきり怒った父はやがて静かになる。
「こほん、まあいい。どうせお前はもうすぐウルムート侯爵家に嫁ぐのだ。それに殿下も所用があって少し遅くなるらしいからな」
ん、私だけでなく殿下まで遅くなる? その言葉に私は少し引っ掛かる。言うまでもなく、クリストフ殿下はあらかじめ決まっている予定に遅刻するような方ではないし、すでに予定からは結構な時間が過ぎている。何かあったのだろうか。
が、私が口を開こうとしたときだった。
「殿下がいらっしゃったぞ!」
と遠くから呼びかける声が聞こえてくる。
それを聞いて父上も執事もメイドも使用人も皆正門の方に向かった。
そのため私はぽつんと取り残される。別に殿下に会いにいってもいいが、どうせ邪魔者と思われるだけだろう。
とはいえ会場にいないと怒られそうなので、今のうちに着替えを終えると、会場の隅でぼーっと立っている。
そこへ満面の笑みを浮かべて接待する私の両親、そして大勢の使用人に囲まれてリリーとクリストフ殿下が並んで入ってくる。
悲しいながら、二人が並んで歩いている姿はまるで絵画の中の風景のようで、私からしてもお似合いだと認めざるを得なかった。うちの使用人も、殿下の家来たちも皆二人を祝福している。そんな風に見えて、そこには全く私が入り込む隙などなさそうだった。
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「そう言えば、この家にはリリー殿以外にもご令嬢がいるとうかがっていたが?」
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「ああ、セシルのことでございますね。殿下にお会いさせるほどの者ではありませんが」
「それは僕が決めることだ」
「おいセシル、殿下がお呼びだ」
父上は私に向かってぞんざいに声をかけた。
その声に呼ばれて私はいよいよか、と緊張しながら殿下の方へ歩いていくのだった。
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