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クリストフ殿下の選択
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驚いている私に、殿下が説明してくれる。
「まあ、大体分かったと思うが、追い出されたジークをたまたま王家の執事が見つけたんだ。王家と公爵家の交流があるように、執事同士も交流がある。ジークは優秀だし信用されていたから何かおかしい、と思って王家で雇い入れることになったんだ」
なるほど、ジークは人としてだけでなく執事としても有能だったのか。
「そしてそれからしばらくして僕とエルガルド公爵家の縁談が決まり、妹の方が推薦された訳だ。そこで僕はジークから聞いた話を思い出してね。ジークが妹はやめた方がいいと言うものだから、一芝居打った訳だ。ジークのことを疑う訳ではないが、さすがに一執事の言葉だけで推薦を蹴る訳にはいかない。それにジークの言葉が事実であれば、あなたなら必ず僕を助けてくれると思ったからね」
「ありがとう……ございます」
この場でお礼を言うのは適切ではないような気もしたが、私は胸の奥が熱くなってそれぐらいしか言葉が出てこなかった。
「僕はただ自分が結婚したいと思う相手を選んだだけで、礼を言われる筋合いはない。しかしこの家は大丈夫なのだろうか、僕が結婚相手を決めたというのに周りはまるで葬式のようだ。今日はパーティーだと聞いていたはずなのだが」
「申し訳ございません殿下! これには深い事情があるのです!」
不意に後ろに立っていた父上が急に頭を下げた。
が、殿下はそれを見て一笑に付す。
「この家の醜い事情に興味はない。まあ強いて言えば、さっさと隠居して家督を譲った方がいいんじゃないかと思うだけだ」
ちなみに家督継承者であるオルン兄上は領地に戻り、領地経営の勉強をしている。最近は全然会ってないが、評判を聞く限りはまともな人物らしい。
殿下の言葉にさすがの父上も言葉が出なくなったのか、無言で立ち尽くすだけだった。何気ない言葉ではあるものの、第一王子から隠居を促すような言葉を掛けられれば公爵としての面目は丸つぶれだろう。
すると殿下は真剣な表情に戻り、改めて私に向き直る。
「セシル・エルガルドよ。大事なパーティーが迫っていながらも困っている人を見捨ててはおけないというあなたの真心に僕は感銘を受けた。これからの人生を共に歩むならばあなたのような心優しき人物がいい。改めてクリストフ・ファーレンはあなたに婚約を申し込みたい。受けていただけるだろうか?」
「もちろん、喜んでお受けいたします」
「良かった。それではこの屋敷はなぜか空気が悪いし、王宮で改めて婚約祝賀パーティーを開こうではないか。実はこうなることは予想していたから、内々に用意させている」
その準備の良さには感心するしかない。
「さすが殿下。喜んでおともさせていただきます」
こうして私たちはお通夜のようなエルガルド公爵家の屋敷を抜けて、王宮で改めてパーティーを開くのだった。
「まあ、大体分かったと思うが、追い出されたジークをたまたま王家の執事が見つけたんだ。王家と公爵家の交流があるように、執事同士も交流がある。ジークは優秀だし信用されていたから何かおかしい、と思って王家で雇い入れることになったんだ」
なるほど、ジークは人としてだけでなく執事としても有能だったのか。
「そしてそれからしばらくして僕とエルガルド公爵家の縁談が決まり、妹の方が推薦された訳だ。そこで僕はジークから聞いた話を思い出してね。ジークが妹はやめた方がいいと言うものだから、一芝居打った訳だ。ジークのことを疑う訳ではないが、さすがに一執事の言葉だけで推薦を蹴る訳にはいかない。それにジークの言葉が事実であれば、あなたなら必ず僕を助けてくれると思ったからね」
「ありがとう……ございます」
この場でお礼を言うのは適切ではないような気もしたが、私は胸の奥が熱くなってそれぐらいしか言葉が出てこなかった。
「僕はただ自分が結婚したいと思う相手を選んだだけで、礼を言われる筋合いはない。しかしこの家は大丈夫なのだろうか、僕が結婚相手を決めたというのに周りはまるで葬式のようだ。今日はパーティーだと聞いていたはずなのだが」
「申し訳ございません殿下! これには深い事情があるのです!」
不意に後ろに立っていた父上が急に頭を下げた。
が、殿下はそれを見て一笑に付す。
「この家の醜い事情に興味はない。まあ強いて言えば、さっさと隠居して家督を譲った方がいいんじゃないかと思うだけだ」
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殿下の言葉にさすがの父上も言葉が出なくなったのか、無言で立ち尽くすだけだった。何気ない言葉ではあるものの、第一王子から隠居を促すような言葉を掛けられれば公爵としての面目は丸つぶれだろう。
すると殿下は真剣な表情に戻り、改めて私に向き直る。
「セシル・エルガルドよ。大事なパーティーが迫っていながらも困っている人を見捨ててはおけないというあなたの真心に僕は感銘を受けた。これからの人生を共に歩むならばあなたのような心優しき人物がいい。改めてクリストフ・ファーレンはあなたに婚約を申し込みたい。受けていただけるだろうか?」
「もちろん、喜んでお受けいたします」
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「さすが殿下。喜んでおともさせていただきます」
こうして私たちはお通夜のようなエルガルド公爵家の屋敷を抜けて、王宮で改めてパーティーを開くのだった。
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