弟子に”賢者の石”発明の手柄を奪われ追放された錬金術師、田舎で工房を開きスローライフする~今更石の使い方が分からないと言われても知らない~

今川幸乃

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魔王の娘 マキナ

マキナと牧場

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「あー、おいしかった」

 ご飯を食べ終えたマキナは満足そうにお腹をさする。ミリアはミリアで夕飯の料理を今から楽しみにしているようで、家にある食材を見ながらメニューを考えている。

「ところで、マキナの力があるなら牧場みたいなものを作ることは出来ないか?」
「確かに、いつもわらわの力の範囲に動物がいるとも限らないからな。しかしそんなスペースはあるか?」
「俺たちの力なら木を伐るのは造作もないことだろう」

 それにマキナのために家を増築するならどうせ木を使うのでちょうどいい。こんな山の中に牧場を作ってちゃんと動物が育つのか、とかエサは大丈夫なのか、とか問題はあるがその辺はミリアの力を借りようと思っていた。おそらくミリアであれば動物の繁殖に適した草を生やし、多少なら気候を調整することも出来るのではないか。

「確かに。この力を制御する訓練にもなるかもしれない」

 こうして俺は剣を持ち、マキナは右腕のみを変異させて森に向かう。

「やあっ」

 マキナが気合を入れて鉤爪を振るうと木はすぱっと伐れた。右腕だけでもこの威力を誇るとはやはり魔王の力は凄まじい。マキナを保護したことで魔王に睨まれなければいいのだが。
 俺の方も剣を振るい、次々と木を伐っていく。こちらは俺の魔力を威力に変換しているだけで、相変わらず俺に剣の腕はない。

 こうして瞬く間に俺たちは数十本の木を伐り、森の中を流れる小川沿いに広いスペースを作り上げてしまった。

「後はこの木材をどけるだけだな」

 そう言ってマキナは伐り倒した木を軽々と持ち上げる。前に木を伐った時は伐った木を運ぶのが一番面倒だったのでこれはすごく助かる。

 その間、俺は地面に剣を刺し込み、切り株から延びる根を次々と斬り、最後にテコの要領で切り株を持ち上げる。マキナは俺が抜いた切り株も持っていってくれたので、こうして数時間ほどで広めの更地が出来た。

「よし、これで動物が呼べるな」
「ああ、わらわに任せてくれ」

 そう言ってマキナは朝の時と同じように目を閉じる。

 そして待つこと十数分、今度は朝と違い、数匹ずつの牛と猪がのろのろとこちらに向かって歩いて来るのが見えた。

 この力は複数にもかけることが出来るのか、と俺はマキナの力に驚く一方で少しだけ不安になる。

「この動物たちはどこから連れてきたんだ? もし人間がどこかで飼っているところからだったらまずい気がするが」
「残念だがそこまではこの力では分からぬ……だが、人間なら動物は牧場に囲って飼うのではないか?」
「まあそれはそうか」

 俺は動物の生態に詳しい訳ではないが、今歩いてきた動物たちは野生というよりは食用に飼われているという雰囲気がある。朝食べた肉も、ミリアの調理がうまかったとはいえ野生の動物であそこまでの味が出せるのかという疑問もある。

「マキナの力はずっと使い続けることは出来るのか?」
「さすがに厳しいな。特に寝ている間は無理だ」
「そうか。なら一度動物たちを集めて、柵だけたてて囲っておけばいいか」

 幸い木材は今伐ったばかりの木が大量にある。
 俺はその木を使って牧場を作ることにした。
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