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【ブライアン視点】 カーラへの思い
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俺とカーラ、キャシーは昔から仲がいい幼馴染三人組だった。
その気持ちはこれからも変わらないし、二人も俺をそう思ってくれている。俺はそう信じていた。
だが、いつしか俺からカーラに向いている気持ちはただの幼馴染に対するものからいつの間にか変わってしまっていた。
きっかけは何だっただろうか。
改めて考えてみると、あの一件がターニングポイントになっていたような気がする。
あれは学園に入る三年ほど前のことだったと思う。
その時、俺はファース家の家臣たちとともに武術の訓練をしていた。幼いころ腕っぷしが強くて体を動かすのが好きだった俺は武術の訓練が好きだった。
俺は家臣の男と木刀を構えて向かい合う。
「では行かせていただきます!」
家臣がこちらに向かってくる。彼はファース家の中でも腕は上の方のままだったが、俺はすでにこれまでの訓練で彼の動きはほぼ見切っていた。
彼は俺に近づいて来るそのまま勢いを利用して突きを入れると見せかけてフェイントをかけて横からの斬撃を入れてくる。
それが分かった俺は彼がフェイントの突きを入れてくるタイミングで防御を行わず、彼に木刀を突き出す。
フェイントを無視された彼はあっさり木刀を受けた。
「俺の勝ちだな」
「強くなられましたな、若様」
彼は感心したように言うが、俺はつまらなかった。
確かにこうして武術の訓練はさせられているが、貴族家の当主になれば自分が剣をとることはほぼなくなるだろう。そして俺の苦手なパーティーや書類仕事に忙殺されるのだ。
そんなのはご免だった。
「なあ、俺は剣の才能があるだろう?」
「はい、その通りでございます」
「だったらそれを生かして軍人になりたいんだが」
俺の言葉に家臣は顔を青くする。
「何を言ってらっしゃるのですか!? 若様はファース家の跡継ぎでございますぞ!」
「だが、見ての通り俺は剣を振るう方が向いているような気がするんだ」
「そんなことをおっしゃっても、それではファース家は誰が跡を継ぐのですか!?」
家臣の言っていることがまっとうなのは分かっていたが、俺はなぜかその時、それを受け入れたくない、と思ってしまった。
「知らない、そんなのやりたいやつが継げばいいだろう」
「ですが……」
「何があった?」
そんなやりとりをしているところへ父上がやってくる。
「それが若様が跡継ぎをやめて軍人になりたいと……」
「馬鹿者!」
それを聞くと父上は一喝した。
「お前は我が家の跡継ぎだからここまで大事に育ててきたのだ! ただの軍人にするならいくらでもその辺から腕っぷしが強い男を連れてくる!」
「それを言われたらそもそも大事に育ててなんて頼んでない!」
「何だと!? このバカ息子が!」
「そもそも俺は別に父上の子供であることを選んで生まれてきた訳じゃない!」
「そんなことを言うなら出ていけ!」
売り言葉に買い言葉、今思えば貴族の親子がするような言い合いではない。
口論になった俺はそのままの勢いで家を飛び出した。
そしてカーラの屋敷に駆け込む。
カーラは少し困惑していたが、俺を部屋に入れて親身になって話を聞いてくれた。
「……と言う訳なんだ!」
一息になって話し終えた俺はそこでカーラが出してくれた紅茶に口をつける。
「済まない、熱くなってしまった」
そこで俺はようやく自分がいい年して少し恥ずかしいことをしてしまったということに気づく。今思い返してみると我が儘もいいところだし、それを貴族令嬢であるカーラにぶちまけるのもどうかと思うが、その時の俺は必死だった。
すると、そんな俺にカーラは優しく言ってくれた。
「確かにブライアンが軍人になりたいって言うのは分かる。だけど私たちが出会えたのはブライアンがファース家に生まれたじゃないかな」
「それは確かに……」
「それに、軍隊は厳しいって言うし、もしブライアンが軍に入ったらもうこうして気軽に会うことも出来なくなるかもしれない。それは私もちょっと嫌かも」
「そ、そうだな」
単純だった俺はそれを聞いて嫌だな、と思ってしまった。
「ブライアンもこうやってあえなくなるのは嫌じゃない?」
「確かに……じゃあ俺も家の跡を継ぐために頑張るよ」
そして多分カーラには全くそんな意図はなかったのだろうが、その時の俺はカーラが「ブライアンと会えなくなるのは嫌だから軍人になりたいなんて言わないで」と言っているように聞こえてしまった。
俺はそれ以来カーラを意識するようになってしまったのだと思う。
その気持ちはこれからも変わらないし、二人も俺をそう思ってくれている。俺はそう信じていた。
だが、いつしか俺からカーラに向いている気持ちはただの幼馴染に対するものからいつの間にか変わってしまっていた。
きっかけは何だっただろうか。
改めて考えてみると、あの一件がターニングポイントになっていたような気がする。
あれは学園に入る三年ほど前のことだったと思う。
その時、俺はファース家の家臣たちとともに武術の訓練をしていた。幼いころ腕っぷしが強くて体を動かすのが好きだった俺は武術の訓練が好きだった。
俺は家臣の男と木刀を構えて向かい合う。
「では行かせていただきます!」
家臣がこちらに向かってくる。彼はファース家の中でも腕は上の方のままだったが、俺はすでにこれまでの訓練で彼の動きはほぼ見切っていた。
彼は俺に近づいて来るそのまま勢いを利用して突きを入れると見せかけてフェイントをかけて横からの斬撃を入れてくる。
それが分かった俺は彼がフェイントの突きを入れてくるタイミングで防御を行わず、彼に木刀を突き出す。
フェイントを無視された彼はあっさり木刀を受けた。
「俺の勝ちだな」
「強くなられましたな、若様」
彼は感心したように言うが、俺はつまらなかった。
確かにこうして武術の訓練はさせられているが、貴族家の当主になれば自分が剣をとることはほぼなくなるだろう。そして俺の苦手なパーティーや書類仕事に忙殺されるのだ。
そんなのはご免だった。
「なあ、俺は剣の才能があるだろう?」
「はい、その通りでございます」
「だったらそれを生かして軍人になりたいんだが」
俺の言葉に家臣は顔を青くする。
「何を言ってらっしゃるのですか!? 若様はファース家の跡継ぎでございますぞ!」
「だが、見ての通り俺は剣を振るう方が向いているような気がするんだ」
「そんなことをおっしゃっても、それではファース家は誰が跡を継ぐのですか!?」
家臣の言っていることがまっとうなのは分かっていたが、俺はなぜかその時、それを受け入れたくない、と思ってしまった。
「知らない、そんなのやりたいやつが継げばいいだろう」
「ですが……」
「何があった?」
そんなやりとりをしているところへ父上がやってくる。
「それが若様が跡継ぎをやめて軍人になりたいと……」
「馬鹿者!」
それを聞くと父上は一喝した。
「お前は我が家の跡継ぎだからここまで大事に育ててきたのだ! ただの軍人にするならいくらでもその辺から腕っぷしが強い男を連れてくる!」
「それを言われたらそもそも大事に育ててなんて頼んでない!」
「何だと!? このバカ息子が!」
「そもそも俺は別に父上の子供であることを選んで生まれてきた訳じゃない!」
「そんなことを言うなら出ていけ!」
売り言葉に買い言葉、今思えば貴族の親子がするような言い合いではない。
口論になった俺はそのままの勢いで家を飛び出した。
そしてカーラの屋敷に駆け込む。
カーラは少し困惑していたが、俺を部屋に入れて親身になって話を聞いてくれた。
「……と言う訳なんだ!」
一息になって話し終えた俺はそこでカーラが出してくれた紅茶に口をつける。
「済まない、熱くなってしまった」
そこで俺はようやく自分がいい年して少し恥ずかしいことをしてしまったということに気づく。今思い返してみると我が儘もいいところだし、それを貴族令嬢であるカーラにぶちまけるのもどうかと思うが、その時の俺は必死だった。
すると、そんな俺にカーラは優しく言ってくれた。
「確かにブライアンが軍人になりたいって言うのは分かる。だけど私たちが出会えたのはブライアンがファース家に生まれたじゃないかな」
「それは確かに……」
「それに、軍隊は厳しいって言うし、もしブライアンが軍に入ったらもうこうして気軽に会うことも出来なくなるかもしれない。それは私もちょっと嫌かも」
「そ、そうだな」
単純だった俺はそれを聞いて嫌だな、と思ってしまった。
「ブライアンもこうやってあえなくなるのは嫌じゃない?」
「確かに……じゃあ俺も家の跡を継ぐために頑張るよ」
そして多分カーラには全くそんな意図はなかったのだろうが、その時の俺はカーラが「ブライアンと会えなくなるのは嫌だから軍人になりたいなんて言わないで」と言っているように聞こえてしまった。
俺はそれ以来カーラを意識するようになってしまったのだと思う。
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