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アルフの相談

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「ミアさんも知っているかと思いますが、リリーの足の怪我です。こんなにずっと怪我したままなのはやはりリハビリをあまり行っていないからではないかと思うのです。そこでミアさんの方から彼女に何か言っていただけないかと思うのです。あまり他人がせかすのもよくないとは分かっているのですが、父上も僕らを婚約させたがっているということもあって、その……」

 はっきりとは言いづらいようでしたが、自分の婚約相手であれば怪我をしたのはしょうがないとしても治す努力ぐらいはして欲しい、というのは自然な感想でしょう。

「アルフはリリーにそれを言ってみたことはないの?」
「直接ではないけど、遠回しにであれば」
「それでその時の反応はどういう反応なの?」
「言った時は毎回前向きな反応をしてくれるんだけど、僕がリハビリを手伝おうとか一緒にやろうとか言うと、いつもはぐらかされてしまうんだ」
「なるほど……」

 どうやらリリーはアルフの前でもそういう人を演じているようです。
 要するに実際に治す気は本当にないということでしょう。それがリハビリが面倒なせいなのか、私からずっと精霊を借りたままにしておきたいからなのかはよく分かりませんが。

「そこで、ミアさんの方からも彼女に言ってもらって欲しいのです。ミアさんからするとせかさずに見守りたいという気持ちもあるかもしれませんが、長い目で見ればやはり足を治した方がいいと思うんです」

 アルフは真剣に答えます。婚約者になりそうな相手が怪我をしているのは嫌だというだけでなく、純粋にリリーを案じている様子もあるように見えました。

「でも私が言っても多分聞かないと思うけど」
「えぇ!?」

 私の言葉にアルフは驚きました。むしろなぜ聞くと思われたのでしょうか。

「だって、リリーはいつもミアさんのことを慕っている様子でしたし、尊敬していると言っていますよ?」
「……」

 私は驚きの声をあげそうになってしまうのを懸命に堪えます。
 もしここで驚いてしまえば、アルフはリリーがそういう人格を演じているということに気づいてしまうかもしれません。
 そんな私を彼は不審そうに見ます。

「ん、どうかしましたか?」
「いえ、そんな風に言われていたと知ってつい嬉しくなってしまって」

 私は慌てて取り繕います。

「そうですか、そうですよね」
「そういうことなら今度伝えてみるわ」
「は、はい、お願いします。ではあまり長く離れているのも不自然なのでそろそろ戻ります」

 そう言って彼はリリーの元へ戻っていきます。
 どうも彼女は家庭内以外でも“健気な妹”を演じているようです。しかもそれを演じるために恐らく様々な嘘をついているのでしょう。

 そうと分かればますます放っておくわけにはいきません。
 やはりどこかで彼女の嘘を暴かなくては。

 私は初めて彼女が自白に期待することを諦め、自分でそのことを明らかにしようと決めたのでした。
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