「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

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フランク

 二日後、ウィルがやってくる予定日の前日、フランクがうちにやってきました。

 フランクはうちと同じ男爵家であるロイド家の長男で、年齢は私の一つ下、シエラとは同い年にあたります。私の婚約者が決まるまでは私やシエラとよく遊んだ間柄で、幼馴染のような関係です。最近は二人で会うことはめっきり減りましたが、それでも時々うちに遊びに来てくれます。

 というのも、実は父上はシエラとフランクを婚約させようとしているのではないかと密かに思っています。
 私には爵位が上の、政略の側面を重視した相手と婚約させ、シエラには同じ爵位の気ごころの知れた確実な相手をということでしょうか。

「フランク様がいらっしゃいました」
「はい」

 それを聞いて私も挨拶に出ます。

 久しぶりに見たフランクはすっかり成長して一人前の貴族に見えました。
 あまり会っていないといっても一か月に一度ぐらいは会っているはずなのに、この前会った時よりも彼は随分大人びて見えました。成長期だからでしょうか。

 ついこの前まで悪ガキだったはずのフランクは今では背も高くなり、剣術で鍛えた引き締まった体に鋭い眼光を持つ立派な青年へと成長していました。

「久しぶり、フランク」
「久しぶりというほどだったかな? 一か月前ぐらいに会ったと思うけど」

 驚きのあまり思わず久しぶり、と言ってしまいましたが確かにそうです。
 そんな私の言葉にフランクは軽く笑いました。

「そうだね。フランクが思っていたより大人びていたから何か久しぶりの気分になっちゃった」
「そうか? 自分だと全然分からないな」

 そう言って彼は少し照れながら頭をかきます。
 そうしていると確かに昔の彼の面影が垣間見えました。

「そう言えば最近ウィルとはどうだ?」

 フランクは世間話とばかりに尋ねてきます。
 幼馴染とはいえ、他人に婚約者の愚痴を言うのもはしたない、と思ってしまい私は心の中で少し言葉を考えます。

「いい人ではあるんだけど、時々何を考えているのか分からなくなってしまって」
「はは、まあ人間だしそういうこともある。僕やシエラは幼馴染だから気ごころも通じ合っているけど、世の中そうじゃない人の方が多いさ」
「それはそうだけど、彼が私をどう思っているのかよく分からなくなって」
「まあ相手はお金持ちの家の嫡子だし、いきなり好かれていることの方が珍しい。嫌われていないところからスタートするなら悪くないんじゃないか?」
「そうね」

 そう言われるとそんな気もしてきます。フランクからすると所詮私は格下の貴族令嬢。好かれていないのは当たり前です。
 婚約者というとつい色々望んでしまいますが、所詮政略結婚は政略結婚です。

「ところでシエラは元気かい?」

 歩きながらフランクは話題を変えます。
 あまり続けたい話題でもなかったので、それを察してくれたのはありがたいことです。フランクも自分がシエラの婚約者候補と思われているのを知ってか、最近は私よりもシエラと一緒にいることが多いです。

「ええ、昨日も一緒にクッキーを焼いたわ。シエラったらすぐ分量を無視しようとするからそれを止めるのが大変で」
「はは、相変わらずシエラらしいな」

 そう話しながら私は気づきます。
 そうか、シエラは私にそうとは言わなかっただけで、今日フランクが来るから彼のためにクッキーを焼いたのでしょう。
 父上がシエラとフランクをくっつけたがっていることはシエラも察しているでしょうし。

 妹と幼馴染がくっつくというのは私からすると多少複雑ではありますが、ある意味二人が全く知らない人とくっつくよりは安心できるかもしれません。

「そうか、でもエレンがしっかり教えてくれたんだろう?」
「それはもちろん」
「それなら出来が楽しみだ」

 そう言ってもらえると、私も嬉しいものです。
 そんなことを話していると応接間に着き、フランクの来訪に気づいたシエラが歩いてきます。

「あら、フランク、いらっしゃい」

 シエラがフランクに声を掛けるのを見て、私は邪魔しては悪いとその場を去るのでした。

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