「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

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準備

 ウィルがやってくる前日、私は今度こそ彼に喜んでもらおうと色々準備をすることにしました。
 とはいえあまり高価な食材が用意出来る訳でもないので、手間をかけて料理するしかありません。シチューは長く煮込むことで味が出るので前日から準備をしました。また、今回はメインディッシュを肉ではなく魚にすることにしました。というのも、シチューにおいしい牛肉を入れたからです。

 また、パンも焼きたてのものが食べられるように、うちでいつも利用しているパン屋さんにちょうど夕食の直前に焼きたてを届けてくれるよう頼んでおきました。
 最後にウィルが好きだと言っていたクッキーの準備もします。
 この前シエラに教えたばかりということもあって、生地の準備まではスムーズに出来ました。あとは焼くだけです。

 そして家の中も改めて掃除します。
 うちは屋敷が広くない上にあまり物が多い訳でもないので普段からきれいではあるのですが、そうは言っても見えないところにほこりは少しずつ溜まっていくものです。
 窓の縁とか、家具の下とかそういったところも改めてきれいにしておきます。

 それから、うちにはあまり広くない庭があるのですが、人が少ないため庭の手入れはおろそかになっていました。ウィルはあまり庭に関心があるとは思えないのですが、一応雑草を抜き、土がこぼれているところなどは掃除しておきます。

 そんなことをしているとどんどん時間が経ってしまい、気が付くと朝になっていました。
 先ほど暗くなったばかりなのに、と自分のことながら驚いてしまいます。

「何か今日は家が見違えたようだな」

 翌朝、起きてきた父上は屋敷を見回して少し驚きました。
 毎日うちで過ごしている父上が気が付くということはちゃんときれいになっているということでしょう。

「どうでしょう、これなら喜んでもらえるでしょうか?」
「そうだな、ここまできれいになっていればウィルもエレンが歓迎してくれていることが分かるのではないか? よくやった」
「ありがとうございます」

 父上の言葉に私はほっとしました。
 普段あまりそういうことに敏感なでない父上でも気づくのなら本当に変わったのでしょう。

「頑張ったな、ウィルがやってくるまではまだ時間があるだろう? 少しは寝るといい」
「でもまだ掃除をしたいところがいくつかあって」
「それならわしがやっておこう」
「え、父上が!?」

 基本的に普段は家事はほとんどしない父の言葉に私は驚きます。

「ああ、もちろん母さんにも頼みはする。エレンは忘れているかもしれないが、ウィルはエレンだけのお客さんじゃない。我が家全員にとっての客だからな」
「確かにそうですね」
「それに、いくら屋敷がきれいになっていても肝心のエレンが寝不足だったら意味がないだろう?」
「はい、ではそうします」

 確かにずっと準備をしていたので大分疲れているのは事実です。これでは思わぬ粗相をしてしまうかもしれません。
 そんな訳で私は父上の言葉に甘えて少し体を休めることにしたのでした。



 それから数時間寝て起きると、私が父上に頼んでおいたところはきちんと綺麗になっていました。
 それを見てほっとしながら私は料理の準備を出来るところまで行い、今度は自分の着替えを行います。

 前回の時は場所が自分の屋敷で、ウィルが身内のようなものだからといってカジュアルなドレスを選んだのが、よくなかったのかもしれません。
 そう思って今日は他家のパーティーに着ていくようなフォーマルなドレスを選びます。
 髪もきちんと編み上げ、お化粧やネイルも王宮に行っても恥ずかしくないぐらいまで整えます。

「ふう、これなら大丈夫でしょう」

 準備が出来た私は鏡を見てほっとします。
 準備することが多かったですが、どうにかウィルが来るまでに間に合いました。

「まあエレン、こんなにきれいになっていたのね。こんなに張り切っているとは思わなかったわ」

 そんな私の姿を見た母上も驚きます。

「こんなに気合が入っているなんて。これなら絶対うまくいくわ」
「はい、ありがとうございます」

 母上の言葉にも励まされ、私は少し自信が出てきました。
 これなら今回は絶対大丈夫でしょう。
 そう思った時です、

「ウィル様がいらっしゃいました!」

 執事が緊張した面持ちで部屋に飛び込んできました。

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