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Ⅰ
夕食
「準備出来ました」
先ほどまでの気まずい雰囲気をどうにか払拭しようとしていた私は前日から用意していた夕食の準備をします。
まずシチューと魚のマリネを温め直し、サラダを盛りつけます。
前回は残されてしまったので、サラダの量は減らし、パン屋さんから届いたパンも小さ目に切って出しました。
そして準備が終わると、応接室で待っていたウィルを呼びに行きます。
「夕食の準備が終わりました」
「分かった」
私の声に応じてウィルは立ち上がり、こちらへ歩いてきます。
そしてダイニングのテーブルの上に用意された夕食を見て目を丸くしました。
「すごいな、まさかこんなに本格的なものを用意するなんて」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいです」
ひとまず彼にそう言ってもらえたことに私は安堵します。
そして私たちは席に座り、夕食を食べ始めました。
自分で作っておいてこういうのもなんですが、準備に時間をかけただけあって、どのメニューも味は申し分ありませんでした。
とはいえ、前回も自分の中では満足していたメニューに対してあのような反応だったので、不安はぬぐえません。今回はどういう反応が返ってくるのだろうか。私は不安げにウィルの表情をうかがいます。
ウィルはサラダを食べ、シチューの具をいくつか口に入れましたが、そこで首をかしげました。前回と同じような仕草に私の胸を急に冷たいものが通り過ぎます。
もしも前回と同じように微妙な反応を返されてしまったら。
私は不安と緊張で体中の感覚が消えていくようでしたが、それでもどうにか勇気を振り絞って言葉を出します。
「ど、どうでしょうか?」
「うーん、何と言えばいいんだろう」
私の問いに彼は難しい顔で首を捻ります。
そして。
「おいしいんだけど、何というか、何か無理しているような感じがあるんだよな。何というか、別に僕のことが好きな訳ではないけど義務感でやってるみたいな」
「そんな……」
ウィルの言葉に私は目の前が真っ白になります。
が、ウィルはそんな私の動揺には気づく様子もなく説明を続けます。そう彼にとって今の言葉は説明に過ぎないのです。おそらくは特に悪気もないのでしょう。
「僕を歓迎しなければならないからとりあえず手の込んだ物を作っておかなければならない、みたいな義務感を感じて息苦しいというか……てあれ?」
そこまで言ってようやくウィルは私がただならぬ雰囲気をしていることに気が付いたようです。私を見て不思議そうに首をかしげます。
「どうかしたのかい?」
「い、いえ、別に……」
私はやっとの思いで言います。
もちろんウィルにも私が何かを隠しているのは伝わっていたでしょうが、彼はどうせ私には興味ないのでしょう、「それならいいか」と料理に戻ります。そして感情のない表情で食事を続けました。
その後、私にとってこれまでの人生で最も辛い夕食の時間になりました。
幼いころ、両親に怒られた直後に一緒にテーブルについた時が一番酷かったですが、それも今の状況と比べるとどんなにましだったのでしょう。
何せあれほど手間をかけ、ウィルに喜んでもらおうと思って作ったはずの料理を、ウィルはまるで味のないものでも食べるかのように淡々と口に入れるのです。
あんなに自信があったはずの料理も、今となっては味のしない物を噛んでいるようで、飲み込むのもやっとという有様だったのでした。
先ほどまでの気まずい雰囲気をどうにか払拭しようとしていた私は前日から用意していた夕食の準備をします。
まずシチューと魚のマリネを温め直し、サラダを盛りつけます。
前回は残されてしまったので、サラダの量は減らし、パン屋さんから届いたパンも小さ目に切って出しました。
そして準備が終わると、応接室で待っていたウィルを呼びに行きます。
「夕食の準備が終わりました」
「分かった」
私の声に応じてウィルは立ち上がり、こちらへ歩いてきます。
そしてダイニングのテーブルの上に用意された夕食を見て目を丸くしました。
「すごいな、まさかこんなに本格的なものを用意するなんて」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいです」
ひとまず彼にそう言ってもらえたことに私は安堵します。
そして私たちは席に座り、夕食を食べ始めました。
自分で作っておいてこういうのもなんですが、準備に時間をかけただけあって、どのメニューも味は申し分ありませんでした。
とはいえ、前回も自分の中では満足していたメニューに対してあのような反応だったので、不安はぬぐえません。今回はどういう反応が返ってくるのだろうか。私は不安げにウィルの表情をうかがいます。
ウィルはサラダを食べ、シチューの具をいくつか口に入れましたが、そこで首をかしげました。前回と同じような仕草に私の胸を急に冷たいものが通り過ぎます。
もしも前回と同じように微妙な反応を返されてしまったら。
私は不安と緊張で体中の感覚が消えていくようでしたが、それでもどうにか勇気を振り絞って言葉を出します。
「ど、どうでしょうか?」
「うーん、何と言えばいいんだろう」
私の問いに彼は難しい顔で首を捻ります。
そして。
「おいしいんだけど、何というか、何か無理しているような感じがあるんだよな。何というか、別に僕のことが好きな訳ではないけど義務感でやってるみたいな」
「そんな……」
ウィルの言葉に私は目の前が真っ白になります。
が、ウィルはそんな私の動揺には気づく様子もなく説明を続けます。そう彼にとって今の言葉は説明に過ぎないのです。おそらくは特に悪気もないのでしょう。
「僕を歓迎しなければならないからとりあえず手の込んだ物を作っておかなければならない、みたいな義務感を感じて息苦しいというか……てあれ?」
そこまで言ってようやくウィルは私がただならぬ雰囲気をしていることに気が付いたようです。私を見て不思議そうに首をかしげます。
「どうかしたのかい?」
「い、いえ、別に……」
私はやっとの思いで言います。
もちろんウィルにも私が何かを隠しているのは伝わっていたでしょうが、彼はどうせ私には興味ないのでしょう、「それならいいか」と料理に戻ります。そして感情のない表情で食事を続けました。
その後、私にとってこれまでの人生で最も辛い夕食の時間になりました。
幼いころ、両親に怒られた直後に一緒にテーブルについた時が一番酷かったですが、それも今の状況と比べるとどんなにましだったのでしょう。
何せあれほど手間をかけ、ウィルに喜んでもらおうと思って作ったはずの料理を、ウィルはまるで味のないものでも食べるかのように淡々と口に入れるのです。
あんなに自信があったはずの料理も、今となっては味のしない物を噛んでいるようで、飲み込むのもやっとという有様だったのでした。
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