「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

文字の大きさ
43 / 77

翌日

 それから一夜明けて翌朝になりました。
 シエラは部屋から出てきませんが、私は朝食のためにダイニングに向かいます。すると、そこには難しい顔をした父上が立っていました。

 手元には一通の書状が握られています。
 昨日の件について何か進展があったのでしょうか。

「おはようございます。また何かあったのでしょうか?」
「ああ、ランカスター子爵から早速昨日の件についての返事があったんだが……」

 そう言って父上は私に手紙を差し出します。
 私はそれを読み、その内容に驚愕しました。

『昨日の件について我が家でも独自に調査した。シエラがそちらで何と言っているのかは分からないが、実際はシエラが急に屋敷にやってきて、ウィルを誘惑したため婚約者のいるウィルはそれを拒絶した。そしてそれに驚いたシエラがその場を逃げ去ったという訳だ。
 それまでシエラはウィルに好意を振りまいておきながらひとたび拒絶されると急に自分が被害者のようなことを主張し始めて困っているが、当家としてはウィルとエレンの婚約は維持したいと考えている』

 というようなことが書かれており、その後にはウィルが捏造したと思われる当日の詳細な行動が書かれていました。

 当然そこに書かれている内容は昨日シエラが泣きながら白状した内容とは全く異なっています。
 どちらが本当かは言うまでもありませんが、ランカスター家の方がうちよりも爵位が上。明確な証拠があるならまだしも、当事者であるシエラの主張だけでは嘘であることは証明できません。シエラだって世間から見れば姉の婚約者に手を出した不届き者に見えるでしょう。証拠を探そうにも、きっと向こうは今頃証拠隠滅にやっきになっていると思われます。
 そうなってしまっては外から認められるような証拠が見つけるのは難しいでしょう。

「そんな……ウィルは元から私よりシエラにばかり好意を向けていたのに」
「そうだな……わしもシエラが言っていることは嘘ではないと思うが、しかし向こうが証拠を握ってしまっているとなると……」

 そう言って父上は口をつぐみます。
 思わぬ事態にどうしていいか分からず、私たちの間には沈黙が流れました。

「あなた、この後フランクがシエラのお見舞いに来てくれるって」

 そこへ今度は母上が手紙を持ってやってきます。
 それを聞いて私は自分のことでもないのに少しほっとしてしまいました。

「おお、フランクが。ウィルとは違って彼はいい人だな」
「そうですね」
「そうか、それなら準備をしないといけないが……しかしフランクは恐らくランカスター家が公表した話を聞いてやってくるに違いない。彼はシエラの言うことを信じてくれるかどうか」
「大丈夫です、きっとフランクなら私の……ではなくシエラの話を信じてくれると思います」

 危うく本音が出てしまうところでした。

 ただ、フランクがシエラの話を聞いてくれるとしてもシエラがフランクに話したがるでしょうか。
 そんなことを不安に思っていると、やがて来客を告げるベルが鳴ります。

 私も不安のあまりフランクのと言葉をかわしたくなりましたが、今は父上やシエラと話す方が先、と考えて我慢するのでした。

あなたにおすすめの小説

結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください

シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。 国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。 溺愛する女性がいるとの噂も! それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。 それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから! そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー 最後まで書きあがっていますので、随時更新します。 表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。

【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます

との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。 (さて、さっさと逃げ出すわよ) 公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。 リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。 どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。 結婚を申し込まれても・・ 「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」 「「はあ? そこ?」」 ーーーーーー 設定かなりゆるゆる? 第一章完結

政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました

あおくん
恋愛
父が決めた結婚。 顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。 これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。 だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。 政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。 どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。 ※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。 最後はハッピーエンドで終えます。

嘘つきな貴方を捨てさせていただきます

梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。 「さっさと死んでくれ」 フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。 愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。 嘘つきな貴方なんて、要らない。 ※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。) 11/27HOTランキング5位ありがとうございます。 ※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。 1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。 完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。

婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子
恋愛
 貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。  彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。  「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。  登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。   ※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。 卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。 二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。 私は何もしていないのに。 そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。 ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。 お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。 ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。

拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。

さこの
恋愛
 ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。  その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?  婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!  最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)

妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました

放浪人
恋愛
侯爵令嬢イリスは美しく社交的な妹セレーナに全てを奪われて育った。 両親の愛情、社交界の評判、そして幼馴染であり婚約者だった公爵令息フレデリックまで。 妹の画策により婚約を破棄され絶望するイリスだが傷ついた心を抱えながらも自分を慕ってくれる使用人たちのために強く生きることを決意する。 そんな彼女の元に隣国の若き国王が訪れる。 彼はイリスの飾らない人柄と虐げられても折れない心に惹かれていく。 一方イリスを捨て妹を選んだフレデリックと全てを手に入れたと思った妹は国王に選ばれたイリスを見て初めて自らの過ちを後悔するがもう遅い。 これは妹と元婚約者への「ざまぁ」と新たな場所で真実の愛を見つける物語。