「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

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フランクの調査

「まさかシエラが裏でウィルとたびたび会っていたとはな……」

 リーン家の屋敷を出た僕はため息をつく。
 屋敷にいる間はエレンもシエラもリーン男爵も皆ショックを受けているだろうから僕ぐらいは気丈に振る舞っていようと思っていたが、屋敷を出ると、張りつめていた気持ちが緩んで落ち込んでしまう。

 とはいえ、やはりこんなことをしでかして全てなかったことにしようとしているウィルのことを許すことは出来ない。
 そう思って僕は無理矢理悲しみから怒りに気持ちを切り替えようとする。
 そうだ、こうなった以上は何としてでも真相を暴かなくては。

「証拠があるとすればランカスター子爵家の使用人ぐらいか。きっと今頃口止めが行われているだろうが、もしかしたら中には口の軽い人や良心の呵責に堪えきれない使用人もいるかもしれない。よし、ランカスター家の使用人の中からこの件について話してくれそうなものを探してくれ」
「分かりました」

 僕は早速供の執事に命じたのだった。



 その後屋敷に戻った僕は父であるロイド男爵に事の顛末を報告する。当初はランカスター家の発表を聞いてシエラに怒りを燃やしていた父も、僕の話を聞くと顔をしかめた。シエラとフランクの婚約を取り持とうとしていたのは元々父上とリーン男爵である。

 そのため話を聞いた父はいたく憤慨した。

「フランク、もしそれが本当なら大変なことだ。絶対に真相を確かめ、もしランカスター子爵家の言っていることが嘘ならその証拠も掴まなければ」
「はい、それについてですが、僕に任せていただけないでしょうか」

 僕が申し出ると父上が少し驚く。
 が、少し考えた末に頷いた。

「お前がか? 確かにお前が当事者だからそれも当然かもしれぬな。だが出来るか? 相手はなりふり構わず証拠を隠すと思うが」

 父上は試すように僕を見る。
 僕は父上を安心させるためにしっかりと頷いた。

「はい、絶対に真実を明らかにしてみせます」
「分かった、ならば任せようではないか」
「ありがとうございます!」
「うむ、頼んだぞ」
「実はもう執事を調査に向かわせております」
「おお、手が早いな」

 父上は僕を感心の目で見る。こうして僕は父上の部屋を出たのだった。



 とはいえ、今朝派遣した執事が戻るまでは僕に出来ることはあまりない。強いていえば屋敷内の比較的手が空いている家臣たちに事情を説明しておくぐらいだろうか。彼らも話を聞くと、ランカスター家のやり方にいたく憤慨した。

 そして夕方になったころである。
 ようやくランカスター家に派遣した執事が帰って来た。

「フランク様、どうもランカスター家のメイドの一人が例の事件以来姿を見せていなかったようです。そこから事件について漏れるのではないかと恐れたランカスター子爵は血眼でその人物を探させているとか」
「それは本当か?」

 その話を聞いてつい僕は身を乗り出す。ならば向こうより早く彼女を見つけさえすれば希望はある。

「はい、そのようです」
「すぐにその人物を探すのだ。もし真実を話してくれるのであれば向こうで首になっても我が屋敷で雇っても構わない! 状況によっては褒賞金を出すこともいとわない」
「分かりました」
「他にも手が余っている者は片っ端から捜索を手伝うように」

 そう言って僕は先ほど事情を説明していた家臣たちを片っ端から捜索に回す。
 と言っても向こうは事件以来ずっと探しているから見つかるかどうかは不安だが。

「頼む、絶対にランカスター家の者たちよりも先に見つけてくれ!」
「はい、かしこまりました」

 屋敷を飛び出していく彼らを見て僕は必死に祈るのだった。



 そしてその日の夜は調査が気になってあまり眠れぬまま夜が明けた。
 翌日、焦燥する僕の元に一人の家臣が駆け込んでくる。

「フランク様、ランカスター家から逃げ出したメイドですが、どうもメルヴィン子爵という近所の貴族の領地に逃げ込んだようです」
「何だと?」

 思わぬ第三者の名前が出てきた僕は驚いた。

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