56 / 77
Ⅳ
ロイド家にてⅡ
「おお、これはフランク殿ではないか。本日はお招きありがとう」
フランクが間に入ると、ハーミット子爵はいかにも余裕ですと言わんばかりに答えます。
私は彼の登場に驚きましたが、フランクは傍目からでも分かるほどの敵意をハーミット子爵に向けています。声をかけようとしましたが、思わずそれが憚られるほどでした。
彼の登場に、周囲の野次馬たちはさらに増えていきました。
子爵のはぐらかしにフランクは一瞬表情を緩めかけますが、すぐに再び引き締めます。
「それはどうも。しかし先ほどから訊いていれば、父上の祝いの席だというのに来客に対する事実無根の噂で盛り上がっているようではないですか」
「いかにも、噂話をしておりましたが、何か問題でもあるのでしょうか?」
ハーミット子爵はそう言って開き直ります。笑顔を浮かべてはいますが、目は笑っていません。言葉は丁寧ですが屈するつもりはない、そんな雰囲気を感じます。
確かに噂の内容を別にすれば、噂話それ自体は悪いことではありません。いくらフランクが主催だからといっていちいちやめさせることは出来ないでしょう。
ですが、フランクも表情を変えることなく冷静に続けます。
「それはそうですが……しかしその噂には何か根拠があるのですか? 根拠がなければただの悪口と変わりありませんが」
「別に悪口ではない。それに事実無根というが、本当か分からないからこそこのお嬢さんにただ質問をしていただけだ」
度重なる開き直りに対してフランクは一瞬眉をひそめましたが、すぐに口を開きます。
「なるほど、そうですか。ではあなたは様々なパーティーに参加し、爵位や年齢が下の相手に、興味の赴くままに下世話な質問を投げかけては相手を辱めているという噂を聞いていますが、それは本当ですか?」
「え、な、何だ急に」
フランクの切り返しに子爵はたじろぎました。
が、フランクは険しい口調で続けます。
「そういう噂が流れているので本当かどうか本人に確かめているのです。あなたが今やっていることは今僕が尋ねているのと同じようなことですよね?」
「そんなことはない、わしが尋ねているのはこの界隈に広く広まっている噂であり……」
子爵は必死に言い訳しようとしますが、うまく言い返せないと気づいてしまったのか、その表情は苦し気で言葉にも力がありません。
そこへフランクは容赦なく追撃を重ねます。
「それなら今僕が言ったことも広まっていますよ。あなたの耳に入れる方がいなかったというだけで」
「な、何だと!? 言わせておけば……」
そう言われて子爵は顔を真っ赤にします。
「いいのか!? 我がハーミット家に楯ついて! 確か貴家は我が領から買っているものがあるはずだったが」
彼はフランクをぎろりと睨みつけながら叫びました。
この程度の口論で交易の話を持ち出すのは大人気ない、と思いますがそれを持ち出されるとフランクも迂闊に口を開きにくくなります。
さすがのフランクも一瞬沈黙してしまいました。
が、その時です。
フランクが間に入ると、ハーミット子爵はいかにも余裕ですと言わんばかりに答えます。
私は彼の登場に驚きましたが、フランクは傍目からでも分かるほどの敵意をハーミット子爵に向けています。声をかけようとしましたが、思わずそれが憚られるほどでした。
彼の登場に、周囲の野次馬たちはさらに増えていきました。
子爵のはぐらかしにフランクは一瞬表情を緩めかけますが、すぐに再び引き締めます。
「それはどうも。しかし先ほどから訊いていれば、父上の祝いの席だというのに来客に対する事実無根の噂で盛り上がっているようではないですか」
「いかにも、噂話をしておりましたが、何か問題でもあるのでしょうか?」
ハーミット子爵はそう言って開き直ります。笑顔を浮かべてはいますが、目は笑っていません。言葉は丁寧ですが屈するつもりはない、そんな雰囲気を感じます。
確かに噂の内容を別にすれば、噂話それ自体は悪いことではありません。いくらフランクが主催だからといっていちいちやめさせることは出来ないでしょう。
ですが、フランクも表情を変えることなく冷静に続けます。
「それはそうですが……しかしその噂には何か根拠があるのですか? 根拠がなければただの悪口と変わりありませんが」
「別に悪口ではない。それに事実無根というが、本当か分からないからこそこのお嬢さんにただ質問をしていただけだ」
度重なる開き直りに対してフランクは一瞬眉をひそめましたが、すぐに口を開きます。
「なるほど、そうですか。ではあなたは様々なパーティーに参加し、爵位や年齢が下の相手に、興味の赴くままに下世話な質問を投げかけては相手を辱めているという噂を聞いていますが、それは本当ですか?」
「え、な、何だ急に」
フランクの切り返しに子爵はたじろぎました。
が、フランクは険しい口調で続けます。
「そういう噂が流れているので本当かどうか本人に確かめているのです。あなたが今やっていることは今僕が尋ねているのと同じようなことですよね?」
「そんなことはない、わしが尋ねているのはこの界隈に広く広まっている噂であり……」
子爵は必死に言い訳しようとしますが、うまく言い返せないと気づいてしまったのか、その表情は苦し気で言葉にも力がありません。
そこへフランクは容赦なく追撃を重ねます。
「それなら今僕が言ったことも広まっていますよ。あなたの耳に入れる方がいなかったというだけで」
「な、何だと!? 言わせておけば……」
そう言われて子爵は顔を真っ赤にします。
「いいのか!? 我がハーミット家に楯ついて! 確か貴家は我が領から買っているものがあるはずだったが」
彼はフランクをぎろりと睨みつけながら叫びました。
この程度の口論で交易の話を持ち出すのは大人気ない、と思いますがそれを持ち出されるとフランクも迂闊に口を開きにくくなります。
さすがのフランクも一瞬沈黙してしまいました。
が、その時です。
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す
MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。
卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。
二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。
私は何もしていないのに。
そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。
お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。
ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。
拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さこの
恋愛
ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。
その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?
婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!
最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)
妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました
放浪人
恋愛
侯爵令嬢イリスは美しく社交的な妹セレーナに全てを奪われて育った。
両親の愛情、社交界の評判、そして幼馴染であり婚約者だった公爵令息フレデリックまで。
妹の画策により婚約を破棄され絶望するイリスだが傷ついた心を抱えながらも自分を慕ってくれる使用人たちのために強く生きることを決意する。
そんな彼女の元に隣国の若き国王が訪れる。
彼はイリスの飾らない人柄と虐げられても折れない心に惹かれていく。
一方イリスを捨て妹を選んだフレデリックと全てを手に入れたと思った妹は国王に選ばれたイリスを見て初めて自らの過ちを後悔するがもう遅い。
これは妹と元婚約者への「ざまぁ」と新たな場所で真実の愛を見つける物語。