67 / 77
Ⅴ
対決Ⅱ
「それではまずランカスター子爵家の証人を出してもらおうか」
「はい、まずは我が家の執事長のジェームズです」
子爵が言うと、白髪の老人が進み出ます。
年齢は五十は越えていそうで、いかにも主人に忠実な執事といった風貌です。
「はい、私はランカスター家に長くお仕えしているジェームズと申します。あの日、確かにシエラ様がウィル様を連れて屋敷の中に入っていくのを見ました。あれは絶対にシエラ様がウィル様を誘っていたに違いありません」
彼はまるで用意された台詞を読むかのように抑揚のない声で発言しました。
長く仕えている執事なので恐らく子爵への忠誠心も高いのでしょう。だからといって偽の証言をさせられているのは可哀想ですが。
「それから、ヘレンの件についてですが、彼女は元々勤務態度が悪く、しばしば私や他の使用人にも注意され、それでランカスター家を逆恨みするような言動が多くみられました。恐らくそれで我が家に対して不利な証言をしようとしているのでしょう」
「そんな」
それを聞いて私の後ろから小さく驚きを漏らす声が聞こえます。
彼女の話を聞く限りだと、彼女は真面目なだけが取り柄のメイドで、だからこそウィルが自分の行為を隠蔽しようとしているのに巻き込まれるのに堪えられなかったと話していました。
「では何か質問は」
「はい」
そこで私は手を挙げて前に進み出ます。
「ジェームズさんはヘレンの勤務態度に問題があったということですが、具体的にはどのようなことをしていたのでしょうか?」
「はい、無断欠勤が多く、勤務中に他の使用人の悪口を言っている様もしばしば見受けられたと」
「そんな彼女にどのような指導をしたのでしょうか?」
「な、何度か呼び出して叱責しましたが一向に改善されませんでした」
「減給や解雇などはしなかったのでしょうか?」
恐らくある程度は想定の問答を用意しているでしょうが、突っ込み続ければいずれはボロを出すかもしれません。そう思って私はひたすら質問をします。
「そ、それは……子爵閣下は寛大な方でしたが、彼女にその思いは伝わらなかったということです!」
彼はやや言葉を詰まらせながら答えます。
実際に怒られるようなことはしていない以上、処分なども存在する訳はありません。そこでさらに処分をでっちあげれば嘘に嘘が重なると思ってそこは嘘をつかなかったのでしょう。
それに、給料の話になれば帳簿などで分かってしまう以上、そこの嘘をつくのは後でばれるかもしれないと思ったのかもしれません。
もしくは元々真面目な人物だから即興で嘘の話をでっちあげるのが苦手だったのか。
「ですがそれなら彼女が逆恨みするという先ほどの話はおかしいのでは? その程度で嘘をついて主家を陥れるほどの恨みを抱くのでしょうか。また、本当に無断欠勤が多いのであれば何も処分が下されないのはおかしいのではないかと思います」
「そ、それはあくまでご主人様が寛大な方だったからです!」
ジェームズは懸命に反論しますが、隣にいるランカスター子爵は渋い表情をしています。ちらっと見学の貴族たちを見ると、彼らの中にも首をかしげている人がちらほら見えました。
やはり今のやりとりでどちらの方が嘘っぽいかは一目瞭然でしょう。
「こちらからの質問は以上です」
それを見て私は満足して後ろに下がります。
それからランカスター家からは数人の使用人が現れて証言を重ねましたが、皆ジェームズと同じようなことを言うだけで、しかも矛盾を恐れたのかあまり具体的な内容には踏み込まず、説得力のないものが続きました。
「……それでは次にリーン家側からの証人の話を聞こう」
そしていよいよ私たちの番がやってきます。
「はい、まずは我が家の執事長のジェームズです」
子爵が言うと、白髪の老人が進み出ます。
年齢は五十は越えていそうで、いかにも主人に忠実な執事といった風貌です。
「はい、私はランカスター家に長くお仕えしているジェームズと申します。あの日、確かにシエラ様がウィル様を連れて屋敷の中に入っていくのを見ました。あれは絶対にシエラ様がウィル様を誘っていたに違いありません」
彼はまるで用意された台詞を読むかのように抑揚のない声で発言しました。
長く仕えている執事なので恐らく子爵への忠誠心も高いのでしょう。だからといって偽の証言をさせられているのは可哀想ですが。
「それから、ヘレンの件についてですが、彼女は元々勤務態度が悪く、しばしば私や他の使用人にも注意され、それでランカスター家を逆恨みするような言動が多くみられました。恐らくそれで我が家に対して不利な証言をしようとしているのでしょう」
「そんな」
それを聞いて私の後ろから小さく驚きを漏らす声が聞こえます。
彼女の話を聞く限りだと、彼女は真面目なだけが取り柄のメイドで、だからこそウィルが自分の行為を隠蔽しようとしているのに巻き込まれるのに堪えられなかったと話していました。
「では何か質問は」
「はい」
そこで私は手を挙げて前に進み出ます。
「ジェームズさんはヘレンの勤務態度に問題があったということですが、具体的にはどのようなことをしていたのでしょうか?」
「はい、無断欠勤が多く、勤務中に他の使用人の悪口を言っている様もしばしば見受けられたと」
「そんな彼女にどのような指導をしたのでしょうか?」
「な、何度か呼び出して叱責しましたが一向に改善されませんでした」
「減給や解雇などはしなかったのでしょうか?」
恐らくある程度は想定の問答を用意しているでしょうが、突っ込み続ければいずれはボロを出すかもしれません。そう思って私はひたすら質問をします。
「そ、それは……子爵閣下は寛大な方でしたが、彼女にその思いは伝わらなかったということです!」
彼はやや言葉を詰まらせながら答えます。
実際に怒られるようなことはしていない以上、処分なども存在する訳はありません。そこでさらに処分をでっちあげれば嘘に嘘が重なると思ってそこは嘘をつかなかったのでしょう。
それに、給料の話になれば帳簿などで分かってしまう以上、そこの嘘をつくのは後でばれるかもしれないと思ったのかもしれません。
もしくは元々真面目な人物だから即興で嘘の話をでっちあげるのが苦手だったのか。
「ですがそれなら彼女が逆恨みするという先ほどの話はおかしいのでは? その程度で嘘をついて主家を陥れるほどの恨みを抱くのでしょうか。また、本当に無断欠勤が多いのであれば何も処分が下されないのはおかしいのではないかと思います」
「そ、それはあくまでご主人様が寛大な方だったからです!」
ジェームズは懸命に反論しますが、隣にいるランカスター子爵は渋い表情をしています。ちらっと見学の貴族たちを見ると、彼らの中にも首をかしげている人がちらほら見えました。
やはり今のやりとりでどちらの方が嘘っぽいかは一目瞭然でしょう。
「こちらからの質問は以上です」
それを見て私は満足して後ろに下がります。
それからランカスター家からは数人の使用人が現れて証言を重ねましたが、皆ジェームズと同じようなことを言うだけで、しかも矛盾を恐れたのかあまり具体的な内容には踏み込まず、説得力のないものが続きました。
「……それでは次にリーン家側からの証人の話を聞こう」
そしていよいよ私たちの番がやってきます。
あなたにおすすめの小説
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
【第一章完結】相手を間違えたと言われても困りますわ。返品・交換不可とさせて頂きます
との
恋愛
「結婚おめでとう」 婚約者と義妹に、笑顔で手を振るリディア。
(さて、さっさと逃げ出すわよ)
公爵夫人になりたかったらしい義妹が、代わりに結婚してくれたのはリディアにとっては嬉しい誤算だった。
リディアは自分が立ち上げた商会ごと逃げ出し、新しい商売を立ち上げようと張り切ります。
どこへ行っても何かしらやらかしてしまうリディアのお陰で、秘書のセオ達と侍女のマーサはハラハラしまくり。
結婚を申し込まれても・・
「困った事になったわね。在地剰余の話、しにくくなっちゃった」
「「はあ? そこ?」」
ーーーーーー
設定かなりゆるゆる?
第一章完結
政略結婚だからと諦めていましたが、離縁を決めさせていただきました
あおくん
恋愛
父が決めた結婚。
顔を会わせたこともない相手との結婚を言い渡された私は、反論することもせず政略結婚を受け入れた。
これから私の家となるディオダ侯爵で働く使用人たちとの関係も良好で、旦那様となる義両親ともいい関係を築けた私は今後上手くいくことを悟った。
だが婚姻後、初めての初夜で旦那様から言い渡されたのは「白い結婚」だった。
政略結婚だから最悪愛を求めることは考えてはいなかったけれど、旦那様がそのつもりなら私にも考えがあります。
どうか最後まで、その強気な態度を変えることがないことを、祈っておりますわ。
※いつものゆるふわ設定です。拙い文章がちりばめられています。
最後はハッピーエンドで終えます。
嘘つきな貴方を捨てさせていただきます
梨丸
恋愛
断頭台に上がった公爵令嬢フレイアが最期に聞いた言葉は最愛の婚約者の残忍な言葉だった。
「さっさと死んでくれ」
フレイアを断頭台へと導いたのは最愛の婚約者だった。
愛していると言ってくれたのは嘘だったのね。
嘘つきな貴方なんて、要らない。
※投稿してから、誤字脱字などの修正やわかりにくい部分の補足をすることがあります。(話の筋は変わらないのでご安心ください。)
11/27HOTランキング5位ありがとうございます。
※短編と長編の狭間のような長さになりそうなので、短編にするかもしれません。
1/2累計ポイント100万突破、ありがとうございます。
完結小説ランキング恋愛部門8位ありがとうございます。
婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました
神村 月子
恋愛
貴族令嬢アリスの婚約者は、毒舌家のラウル。
彼と会うたびに、冷たい言葉を投げつけられるし、自分よりも妹のソフィといるほうが楽しそうな様子を見て、アリスはとうとう心が折れてしまう。
「それならば、自分と妹が婚約者を変わればいいのよ」と思い付いたところから、えらいことになってしまうお話です。
登場人物たちの不可解な言動の裏に何があるのか、謎解き感覚でお付き合いください。
※当作品は、「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています
幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す
MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。
卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。
二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。
私は何もしていないのに。
そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。
ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。
お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。
ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。
拝啓、元婚約者様。婚約破棄をしてくれてありがとうございました。
さこの
恋愛
ある日婚約者の伯爵令息に王宮に呼び出されました。そのあと婚約破棄をされてその立会人はなんと第二王子殿下でした。婚約破棄の理由は性格の不一致と言うことです。
その後なぜが第二王子殿下によく話しかけられるようになりました。え?殿下と私に婚約の話が?
婚約破棄をされた時に立会いをされていた第二王子と婚約なんて無理です。婚約破棄の責任なんてとっていただかなくて結構ですから!
最後はハッピーエンドです。10万文字ちょっとの話になります(ご都合主義な所もあります)
妹が私の全てを奪いました。婚約者も家族も。でも、隣国の国王陛下が私を選んでくれました
放浪人
恋愛
侯爵令嬢イリスは美しく社交的な妹セレーナに全てを奪われて育った。
両親の愛情、社交界の評判、そして幼馴染であり婚約者だった公爵令息フレデリックまで。
妹の画策により婚約を破棄され絶望するイリスだが傷ついた心を抱えながらも自分を慕ってくれる使用人たちのために強く生きることを決意する。
そんな彼女の元に隣国の若き国王が訪れる。
彼はイリスの飾らない人柄と虐げられても折れない心に惹かれていく。
一方イリスを捨て妹を選んだフレデリックと全てを手に入れたと思った妹は国王に選ばれたイリスを見て初めて自らの過ちを後悔するがもう遅い。
これは妹と元婚約者への「ざまぁ」と新たな場所で真実の愛を見つける物語。