「君の作った料理は愛情がこもってない」と言われたのでもう何も作りません

今川幸乃

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決着Ⅱ

「どういうことだ!?」

 それを聞いたエルーノ公爵は衆目の前であることも忘れて家臣に尋ねます。

「それが、我が領内の商人がリーン男爵家の領地付近で賊に襲われ、依頼を受けた我が領の兵士が賊を捜索したところその中に男爵家の馬車を襲った賊が混ざっていたとのことです」
「何だと?」
「はい、賊にしてはいい武器を持っていることと、リーン男爵家襲撃の話からもしやと思って金をちらつかせて尋問したところ、あっさりと白状しました。それによると、ランカスター子爵の家臣から金と装備をもらってリーン男爵家の馬車を襲い、証人を殺すか連れ去るよう言われたものの失敗し、戻ることも出来ずに逃げ出したとのことです」

 家臣の報告に会場はざわめきに包まれました。
 賊を雇って他家を襲わせるなどやっていいことではありません。証拠がなければ責めることは出来ませんが、エルーノ公爵の家臣が言うのであれば、もはや責めない理由がないと言っても過言ではありません。

「何だと!?」
「何と卑劣な」
「怪しいとは思っていたがやはり本当だったのか!」

 裁判の結果もあり、反応はランカスター家への非難一色です。それを見てランカスター子爵の顔面はみるみる蒼白になっていきます。

 さすがに襲撃を命じた賊がよそで捕まって露見して捕まるなどということは想定していなかったのでしょう。
 賊としては、口封じに自家から逃げ出した使用人を襲わせるような家であれば任務に失敗して戻ってこれば自分が口封じされる側になると思ったのかもしれません。そしてせっかく武器をもらったからそれを自分たちの略奪のために使おうとでも思ったのでしょうか。

 もっとも任務に成功しても口封じされる可能性はあるので、どちらにせよそのまま逃げるつもりだったのかもしれませんが。

「ランカスター子爵、これは一体どういうことだ」

 エルーノ公爵は険しい表情で尋ねます。

「し、知らない! 賊が適当なことを言っているだけだ! 賊の言うことなどに耳を貸してはなりません!」
「そうか。ならばあなたの家を捜査させていただいても構いませんな? すでにご子息の不始末をもみ消そうとしたことについては確実という結果が出ている。この疑惑と合わせれば十分に強制捜査の対象となると思われるが」
「そ、それは……」

 子爵はなおも反論しようとしますが、さすがに言葉が出ないようです。捜査を受け入れれば更なる証拠が出ますし、拒否するのは自白しているようなものです。
 当然そんな子爵に対して周囲の貴族たちは厳しい視線、そして疑いと糾弾の言葉を投げかけます。

「往生際が悪い!」
「そのようなことをしておきながらまだシラを切るつもりか!?」
「エルーノ公爵閣下の家臣がそう言っているのだぞ!?」

 周囲の貴族たちに詰め寄られて子爵の周辺は騒然としました。
 それを見てエルーノ公爵はこほん、と咳払いして手を叩きます。

「静粛に。この件に関しては今後我らが捜査をしておくため、静粛に。ランカスター子爵はこちらへ」

 公爵がそう言うと、家臣たちが数名子爵の方へ歩いていきます。
 するとさすがに他の貴族たちも彼の元から離れました。その隙に家臣たちは子爵をどこかへ案内していきます。

 助け船を出したように見えますが、実際のところは証拠隠滅を阻止するため、安全を口実にこの屋敷に軟禁のような形にするつもりなのでしょう。
 ともあれ、こうしてランカスター子爵の悪事は暴かれ、噂も無事嘘だということが分かったのでした。

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