王子の転落 ~僕が婚約破棄した公爵令嬢は優秀で人望もあった~

今川幸乃

文字の大きさ
31 / 34

アシュリー視点 カミラⅡ

しおりを挟む
「どうしたんだ、そんなに慌てて」

 私が無理を言ってチャーリーに会わせてもらうと、彼は少し驚いたように言った。

「もしかしたら今回の事件について、重要なことが分かったかもしれないんです」
「どういうことだ? そもそも君は屋敷で静養していたのではなかったのか?」
「せっかくお心遣いいただいたのにすみません」

 せっかく王宮のことを気にせず休んでいいと言われていたのに、結局ずっと王宮のことを気にしてしまっていた。

「いや、それは構わないが、何が分かったんだ」
「今カール殿下は王宮にて伯爵を大臣にすべく命令を出そうと躍起になっているのですよね?」
「ああ、確かにそうだ。今は色々と理由をつけて殿下の命令を送らせてその間に陛下に相談しているのだが……どうもヒューム伯は陛下に取引を持ちかけているようでな」

 大方、邪魔者を一掃したら伯爵と王族で王国の権力を全て分け合おう、みたいな話だろう。
 陛下がなぜそのような提案に耳を傾けているのかは分からないが、チャーリーの反応を見るに、旗色は悪そうだ。

「しかし兄上があれほど溺愛していたカミラの姿を見かけないし、以前は僕らに嬉々として命令していたのに、今はどことなく元気がないんだ」
「恐らくなのですが、カミラは現在ヒューム伯屋敷に監禁されています」
「何だと!?」

 私の言葉にチャーリーもさすがに驚きの声をあげる。
 普通はあそこまでカールと仲が良かったカミラがそんなことになっているとは思わないだろう。

「ですがそう考えると全て辻褄が合うのです。恐らくカミラとヒューム伯とカール殿下の三者のうちのどこかで仲違いが発生して、伯爵はそれまでのカール殿下を騙す路線から方針転換をしたのでしょう」
「なるほど……確かにそう考えれば辻褄が合うな」

 そう言ってチャーリーは唸る。

「と言う訳でカミラさえ伯爵の元から救出すれば、カール殿下と伯爵の関係はきれるでしょう」
「なるほど、だがそれは本当なのか?」
「はい、実は……」

 そう言って私はシルヴィアから聞いた話をチャーリーに話す。
 私の話を聞いた殿下は再び唸った。

「分かった、そういうことであればこちらでも調べて、本当に怪しいと思ったらその時はどうにかしよう」
「はい、お願いします」
「まさか婚約破棄された後も君に助けられてしまうとはな」

 不意に、チャーリーはぽつりとそう言った。

「多分君はそんな気分じゃないと思うが、出来ることならまた王宮に戻ってきて欲しいぐらいだ」

 もちろんカールの婚約者に戻るのは嫌ですが……
 この時のチャーリーの言葉はどこか私の中に引っ掛かったのでした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】「お前に聖女の資格はない!」→じゃあ隣国で王妃になりますね

ぽんぽこ@3/28新作発売!!
恋愛
【全7話完結保証!】 聖王国の誇り高き聖女リリエルは、突如として婚約者であるルヴェール王国のルシアン王子から「偽聖女」の烙印を押され追放されてしまう。傷つきながらも母国へ帰ろうとするが、運命のいたずらで隣国エストレア新王国の策士と名高いエリオット王子と出会う。 「僕が君を守る代わりに、その力で僕を助けてほしい」 甘く微笑む彼に導かれ、戸惑いながらも新しい人生を歩み始めたリリエル。けれど、彼女を追い詰めた隣国の陰謀が再び迫り――!? 追放された聖女と策略家の王子が織りなす、甘く切ない逆転ロマンス・ファンタジー。

お前との婚約は、ここで破棄する!

ねむたん
恋愛
「公爵令嬢レティシア・フォン・エーデルシュタイン! お前との婚約は、ここで破棄する!」  華やかな舞踏会の中心で、第三王子アレクシス・ローゼンベルクがそう高らかに宣言した。  一瞬の静寂の後、会場がどよめく。  私は心の中でため息をついた。

「本当の自分になりたい」って婚約破棄しましたよね?今さら婚約し直すと思っているんですか?

水垣するめ
恋愛
「本当の自分を見て欲しい」と言って、ジョン王子はシャロンとの婚約を解消した。 王族としての務めを果たさずにそんなことを言い放ったジョン王子にシャロンは失望し、婚約解消を受け入れる。 しかし、ジョン王子はすぐに後悔することになる。 王妃教育を受けてきたシャロンは非の打ち所がない完璧な人物だったのだ。 ジョン王子はすぐに後悔して「婚約し直してくれ!」と頼むが、当然シャロンは受け入れるはずがなく……。

偽りの聖女にすべてを奪われたので、真実を見抜く『鑑定眼』で本物の逸材たちと逆襲します

希羽
恋愛
辺境伯の養女アニエスは、物や人の本質的な価値を見抜く特殊能力『鑑定眼』を持っていた。彼女はその力を、義妹の聖女セレスティーナを影から支えるために使ってきたが、そのセレスティーナと、彼女に心酔した婚約者によって全てを奪われ、追放されてしまう。絶望の淵で、アニエスは自らの『鑑定眼』を武器に、セレスティーナによって「才能なし」と切り捨てられた本物の天才たち──治水技術者、薬師、そして騎士団長──を見つけ出し、「プロデューサー」として彼らを世に送り出すことを決意する。

婚約破棄が、実はドッキリだった? わかりました。それなら、今からそれを本当にしましょう。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるエルフィリナは、自己中心的なルグファドという侯爵令息と婚約していた。 ある日、彼女は彼から婚約破棄を告げられる。突然のことに驚くエルフィリナだったが、その日は急用ができたため帰らざるを得ず、結局まともにそのことについて議論することはできなかった。 婚約破棄されて家に戻ったエルフィリナは、幼馴染の公爵令息ソルガードと出会った。 彼女は、とある事情から婚約破棄されたことを彼に告げることになった。すると、ソルガードはエルフィリナに婚約して欲しいと言ってきた。なんでも、彼は幼少期から彼女に思いを寄せていたらしいのだ。 突然のことに驚くエルフィリナだったが、彼の誠実な人となりはよく知っていたため、快くその婚約を受け入れることにした。 しかし、そんなエルフィリナの元にルグファドがやって来た。 そこで、彼は自分が言った婚約破棄が実はドッキリであると言い出した。そのため、自分とエルフィリナの婚約はまだ続いていると主張したのだ。 当然、エルフィリナもソルガードもそんな彼の言葉を素直に受け止められなかった。 エルフィリナは、ドッキリだった婚約破棄を本当のことにするのだった。

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」 私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。 見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。 マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!! 思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。 ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。 内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)

平民を好きになった婚約者は、私を捨てて破滅するようです

天宮有
恋愛
「聖女ローナを婚約者にするから、セリスとの婚約を破棄する」  婚約者だった公爵令息のジェイクに、子爵令嬢の私セリスは婚約破棄を言い渡されてしまう。  ローナを平民だと見下し傷つけたと嘘の報告をされて、周囲からも避けられるようになっていた。  そんな中、家族と侯爵令息のアインだけは力になってくれて、私はローナより聖女の力が強かった。  聖女ローナの評判は悪く、徐々に私の方が聖女に相応しいと言われるようになって――ジェイクは破滅することとなっていた。

「犯人は追放!」無実の彼女は国に絶対に必要な能力者で“価値の高い女性”だった

佐藤 美奈
恋愛
セリーヌ・エレガント公爵令嬢とフレッド・ユーステルム王太子殿下は婚約成立を祝した。 その数週間後、ヴァレンティノ王立学園50周年の創立記念パーティー会場で、信じられない事態が起こった。 フレッド殿下がセリーヌ令嬢に婚約破棄を宣言した。様々な分野で活躍する著名な招待客たちは、激しい動揺と衝撃を受けてざわつき始めて、人々の目が一斉に注がれる。 フレッドの横にはステファニー男爵令嬢がいた。二人は恋人のような雰囲気を醸し出す。ステファニーは少し前に正式に聖女に選ばれた女性であった。 ステファニーの策略でセリーヌは罪を被せられてしまう。信じていた幼馴染のアランからも冷たい視線を向けられる。 セリーヌはいわれのない無実の罪で国を追放された。悔しくてたまりませんでした。だが彼女には秘められた能力があって、それは聖女の力をはるかに上回るものであった。 彼女はヴァレンティノ王国にとって絶対的に必要で貴重な女性でした。セリーヌがいなくなるとステファニーは聖女の力を失って、国は急速に衰退へと向かう事となる……。

処理中です...