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針のむしろ
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翌日、アルバートとセラフィナはこそこそと周囲を伺うように教室に入ってきました。しかしそんな二人に対するクラスメイトたちの視線は一様に冷たいものでした。
王国史の調べ物が好きなんて生徒はごく一部しかいない中、皆授業で恥をかかないために一生懸命調べてきたのです。
それなのに二人は(おそらく)仮病で発表をぶっちぎる形になったため、クラスメイトたちからは卑怯というだけでなく、自分たちだけ楽をしてズルい、という恨みも買っているのでしょう。
思いもかけない冷たい教室内の空気に、アルバートもセラフィナもさすがにぎょっとしました。
が、やがて顔を見合わせると無理矢理気味に話し始めます。
「セラフィナ、おはよう」
「おはよう、アルバート。実はおととい、私池に落ちて風邪をひいてしまって」
「本当にセラフィナは天然だな」
ははは、とアルバートは笑いますが教室内はしんと静まり返っています。
今の会話はどう見ても自分たちの欠席を正当化するための言い訳を教室内に聞かせるためのものにしか見えません。教室内からも「また天然か」「いくら何でも無理があるわ」などの声が聞こえてきます。
セラフィナが本当に池に落ちて風邪をひいたのかは分かりませんが、彼女にやる気があるのならば少なくとも発表の原稿だけでも私たちに送るとか、何かしらの方法があるからです。
ちなみにアルバートまで休んだ理由は分かりませんが、どうせセラフィナが一人で休むと彼女に恨みが集中するから自分も一緒のことをしよう、というナイト気取りの理由ではないでしょうか。
教室の空気が変わらないと見てとったセラフィナはいつも彼女をちやほやしてくれる男子の元に向かいました。
「昨日休んじゃったけど、私が休んでいる間何かあった?」
この状況でもまだ普通に話しかけられる図太さはある意味羨ましいです。
しかし男子たちですらいつもと様子が違いました。
「ああ、俺たちは発表の準備をするのが大変だったよ」
彼らは顔を見合わせあった後、一人が刺のある声で言います。
それを聞いてセラフィナの表情は蒼くなりました。
普段自分をちやほやしてくれる男子までこのような反応になるとは思ってもいなかったのでしょう。
慌てて彼女は他の男子を見ましたが、皆気まずそうに目をそらします。
この空気で下手にセラフィナを擁護しようものなら袋叩きに遭いかねないと思ったのでしょう。見かねたアルバートがその場に割り込んでいきます。
「おい、そんな反応しなくたっていいだろ? セラフィナだって行きたかったけど、熱を出してどうしても行けなかったんだ」
アルバートはよほどセラフィナに入れ込んでいるのか、彼女にくってかかっている男子たちに詰め寄っています。
「じゃあお前はどうして休んだんだ」
「え」
男子の一人が急に矛先をアルバートに向けます。
これまでセラフィナを助けているつもりが、急に自分に矛先を向けられてアルバートは困っているようです。
それを聞いて他のクラスメイトたちも後に続きます。
「アルバートまで一緒に池に落ちたとでも言うのか?」
「そうだ、セラフィナのナイト気取りか?」
「そもそもお前は婚約者が別にいるだろ? いつもセラフィナにべたべたしやがって!」
元々男子からはアルバートは普段の態度まで不興を買っていたらしく、散々に言われています。
とはいえ傍から聞いていても正論と思われる内容ばかりだったので、アルバートは言われるがままでした。
こうしてアルバートもセラフィナを守るどころではなくなり、二人はクラス中から色々なことを言われながら席に向かい、授業が始まるのを待つといった。有様でした。
王国史の調べ物が好きなんて生徒はごく一部しかいない中、皆授業で恥をかかないために一生懸命調べてきたのです。
それなのに二人は(おそらく)仮病で発表をぶっちぎる形になったため、クラスメイトたちからは卑怯というだけでなく、自分たちだけ楽をしてズルい、という恨みも買っているのでしょう。
思いもかけない冷たい教室内の空気に、アルバートもセラフィナもさすがにぎょっとしました。
が、やがて顔を見合わせると無理矢理気味に話し始めます。
「セラフィナ、おはよう」
「おはよう、アルバート。実はおととい、私池に落ちて風邪をひいてしまって」
「本当にセラフィナは天然だな」
ははは、とアルバートは笑いますが教室内はしんと静まり返っています。
今の会話はどう見ても自分たちの欠席を正当化するための言い訳を教室内に聞かせるためのものにしか見えません。教室内からも「また天然か」「いくら何でも無理があるわ」などの声が聞こえてきます。
セラフィナが本当に池に落ちて風邪をひいたのかは分かりませんが、彼女にやる気があるのならば少なくとも発表の原稿だけでも私たちに送るとか、何かしらの方法があるからです。
ちなみにアルバートまで休んだ理由は分かりませんが、どうせセラフィナが一人で休むと彼女に恨みが集中するから自分も一緒のことをしよう、というナイト気取りの理由ではないでしょうか。
教室の空気が変わらないと見てとったセラフィナはいつも彼女をちやほやしてくれる男子の元に向かいました。
「昨日休んじゃったけど、私が休んでいる間何かあった?」
この状況でもまだ普通に話しかけられる図太さはある意味羨ましいです。
しかし男子たちですらいつもと様子が違いました。
「ああ、俺たちは発表の準備をするのが大変だったよ」
彼らは顔を見合わせあった後、一人が刺のある声で言います。
それを聞いてセラフィナの表情は蒼くなりました。
普段自分をちやほやしてくれる男子までこのような反応になるとは思ってもいなかったのでしょう。
慌てて彼女は他の男子を見ましたが、皆気まずそうに目をそらします。
この空気で下手にセラフィナを擁護しようものなら袋叩きに遭いかねないと思ったのでしょう。見かねたアルバートがその場に割り込んでいきます。
「おい、そんな反応しなくたっていいだろ? セラフィナだって行きたかったけど、熱を出してどうしても行けなかったんだ」
アルバートはよほどセラフィナに入れ込んでいるのか、彼女にくってかかっている男子たちに詰め寄っています。
「じゃあお前はどうして休んだんだ」
「え」
男子の一人が急に矛先をアルバートに向けます。
これまでセラフィナを助けているつもりが、急に自分に矛先を向けられてアルバートは困っているようです。
それを聞いて他のクラスメイトたちも後に続きます。
「アルバートまで一緒に池に落ちたとでも言うのか?」
「そうだ、セラフィナのナイト気取りか?」
「そもそもお前は婚約者が別にいるだろ? いつもセラフィナにべたべたしやがって!」
元々男子からはアルバートは普段の態度まで不興を買っていたらしく、散々に言われています。
とはいえ傍から聞いていても正論と思われる内容ばかりだったので、アルバートは言われるがままでした。
こうしてアルバートもセラフィナを守るどころではなくなり、二人はクラス中から色々なことを言われながら席に向かい、授業が始まるのを待つといった。有様でした。
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