悪役令嬢、二度目の人生は「愛」が痛い。〜冷酷王子の執着から逃れるために国外追放(スローライフ)を目指します〜

りい

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第一章 転生悪役令嬢は冷酷だったはずの王子に溺愛されています

第二話 愛が重すぎて紅茶の味がいたしません

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「……リナリア、どうした? 紅茶が冷めてしまうよ」

目の前に座る麗しき王子、アルフレッド様が、とろけるような甘い微笑みで私を見つめている。 ここは王宮のテラス。 色とりどりのバラが咲き乱れ、本来なら「優雅なひととき」のはずなんだけど……。

(……味がしない。この最高級のダージリンが、砂の味しかしないわ!)

私は震える手でティーカップを持ち、一口すする。 アルフレッド様は、私が少し動くたびに、獲物を狙う鷹のような鋭い、それでいて熱を帯びた視線を向けてくるのだ。

「あ、ありがとうございます、殿下。……その、今日はとても……お優しいのですね?」

探るように言ってみると、彼は私の手を、壊れ物を扱うようにそっと握り込んだ。

「優しい? 冗談はやめてくれ。君に対して、私はこれまでの人生であまりに不実だった。……今までの私は、どうかしていたんだ」

(いや、どうかしてるのは今の方だよ!)

と、心の中でツッコミを入れる。 ゲームのアルフレッド様は、私が話しかけても「……用がないなら去れ」と一言で切り捨てるような、まさに氷の塊だった。 なのに、今の彼はどうだ。

「君が望むなら、この国のバラを全て君の寝室に敷き詰めよう。君が寂しくないよう、今日からは私が君の公務を全て代行し、二十四時間体制で守る準備もできている」

「じ、二十四時間……!? いえ、殿下もお忙しいでしょうし、それは流石に——」

「リナリア」

急に、彼の声から温度が消えた。 握られた手の力が、少しだけ強くなる。

「君は、また私の前から消えようとしているのか? ……あの時(・・・)のように、冷たくなって、私の手が届かないところへ……?」

(あの時……? 冷たくなるって、何のこと!?)

彼の瞳の奥に、底知れない「絶望」の色が見えて、私は背筋が凍った。 まさか、この人も私と同じ「前世の記憶」があるの? でも、私を処刑したのは彼自身のはず。なのに、なんでこんなに被害者みたいな顔をしてるのよ。

「い、いえ! そんなことありません! 私はただ、殿下のお体が心配で……」

「そうか、私のことを心配してくれているんだね。ああ……リナリア、愛しているよ。君を失うくらいなら、私はこの国ごと焼き尽くしてもいい」

(愛の言葉が物騒すぎるーー!!)

これはいけない。 このままだと、溺愛という名の「軟禁生活」が始まってしまう。 私の目標は、婚約破棄を勝ち取って、平和な隣国で「のんびりスローライフ」を送ることなのだ。

「殿下、実はご提案が……。私、少し自分を見つめ直すために、しばらく領地(田舎)へ帰ろうかと思っておりまして」

距離を置こう。そうすれば、彼も少しは冷静になるはず。 ところが、私の言葉を聞いた瞬間、アルフレッド様の微笑みがピタリと止まった。

「……領地へ? 私と離れて、一人で?」

「は、はい。少し休養を……」

「……わかった。では、私も共に行こう。君の領地を丸ごと買い取って、王宮直轄の離宮に作り替えさせよう。そうすれば、誰にも邪魔されずに二人きりで過ごせる」

(ダメだ、話が通じない!)

彼の中では、「リナリア+自由=死」という謎の数式ができあがっているらしい。 逃げれば逃げるほど、王子の「逃がさない檻」が強固になっていく。

(国外追放(スローライフ)への道が、、、最初から崖っぷちなんだけど!!)

私は、差し出された王子の手を取りながら、引き攣った笑顔を浮かべるしかなかった。
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